懸案問題の解決や、様々な施策を提案できる意欲的な人材を管理職に登用するため、県は16日、今春の人事異動に向けて、知事部局の課長級ポストを職員から公募していることを明らかにした。これまで、上司の評定や勤務実績などを基に昇任や配置をしていたが、財政難で職員削減を進めている県は「少数精鋭体制で県を運営するため、管理職に能力と意欲の両面を求めていきたい」としている。
 県議会行財政改革推進特別委員会で同日、県人事・行革課が説明した。同課によると、公募の対象は県教委、県警、県病院局を除く知事部局213の課長級ポスト。課長補佐を2年以上(4月現在)務めたのが条件で、過去の職歴にかかわらず、希望するポストに応募できる。登用を望む課の現状と課題、それに対する解決策、取り組みたい事業などを1000字以内にまとめてもらい、選考の際の参考とする。同課は「予算が年々減らされる中、自ら知恵を出して施策を展開する中堅職員を育てたい」と導入。職員用の庁内イントラネット掲示板で募集したところ、数十人から応募があったという。公募による登用者は、4月の人事異動に合わせて発表する。
 県によると、知事部局の職員はピーク時の1996年度は3689人いたが、人員削減で2008年度は3004人に減少。県が08年3月に策定した行革基本指針では、10年度には2800人に減らすとしている。税収が大幅に落ち込み、今後もさらなる人員削減が予想されており、同課は「地方分権で国から県に権限が移譲されれば、職員の力が一層問われる」とし、人材育成に力を入れる。

同記事では,香川県において,現在,管理職に対する庁内公募制度を導入していることを紹介.
同県における同制度に関しては,2008年3月に同県で取りまとめた『行財政改革推進のための基本指針』*1内で,「管理職の選考や育成の見直し」として,「特に優秀な若手職員を積極的に管理職に登用し,将来の幹部候補生として育成することや,課長級への昇任に当たり,本人の意欲を尊重するため自ら意思表示をする仕組みの構築をはじめ,その後の配置,研修など,総合的な管理職選考・育成制度を構築」することを掲げており,あわせて,同記事にもあるように,「管理職等への立候補制度の導入」として,「これまでの庁内公募制を改善し,管理職ポストへの若手職員の抜擢を含め,意欲と能力のある職員が意欲と能力のある職員が政策提案とセットで,特定のポストに立候補できる新たな任用制度を導入」との内容を受けて整備された模様.
同記事にいう「登用を望む課の現状と課題,それに対する解決策,取り組みたい事業などを1000字以内にまとめ」ることが,同方針でいう「政策提案」に該当するのだろうか.「1000字以内」とはいえ,現在又はこれまでに所属していない事業部門での管理職を希望する場合,「政策提案」も難しい部分もあるかと思われるが,どのような提案が提出されているのだろうか.既に「挙手」と「政策提案」を行われた「数十名」の職員の皆さんの職務経歴と,希望先の部署との関係性が明らかになると,人事管理運用上も興味深い.
「昇任忌避傾向が増加」*2しているとの観察結果もあるなかでの同制度の導入.「課長補佐を2年以上(4月現在)務めたのが条件」という制約はあるものの,いわゆる「早い選抜」をも期待されている様子.ただ,「早い選抜方式をとるには,しっかりとした人事評価制度を構築・運用し,また,その透明性を高め,職員の納得性を獲得するなど,相当の準備が必要」*3ともされ,上記の方針で同県が掲げられている「能力実績主義の徹底」の具体化も必要とも考えられる.ただ,一般的に,日本における能力観としては,「必要とされる能力は状況ごとに異なっているという柔らかい能力観」とされる「状況的能力観」*4が該当するとの考え方にならえば,一律にその実績とされる「能力」を捉えることも難しい部分とは思われるが,その他の人事管理制度はどのようになっているのだろうか.これまた,興味深い.

*1:香川県HP(人事・行革課進めています行財政改革)『行財政改革推進のための基本指針』11頁

*2:稲継裕昭「昇任制度5 昇任したくない症候群」『ガバナンス』No.92,2008.12,100頁

ガバナンス 2008年 12月号 [雑誌]

ガバナンス 2008年 12月号 [雑誌]

*3:稲継裕昭「昇任制度3 早い選抜方式」『ガバナンス』No.90,2008.10,103頁

ガバナンス2008年10月号

ガバナンス2008年10月号

*4:竹内洋『日本のメリトクラシー』(東京大学出版会,1995年)175頁

日本のメリトクラシー―構造と心性

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