産業廃棄物処理の監視強化に向け、県は7日、福井県内14市町の新たな担当職員26人に産廃施設への立ち入り検査権を与える辞令を交付した。
 産廃に関する事務は県職員しか執り行えない半面、不法投棄など住民からの情報提供は市町に集まるケースが多い。このため、迅速な初動態勢をつくろうと、2003年度から市町の担当職員を県職員併任にして権限を与えている。埋め立て処分場や焼却施設などへの立ち入り検査が可能になり▽過剰保管▽許可品目以外の保管▽不適正処理―などに目を光らせる。辞令は4月1日付で、本年度の併任職員数は17市町で計61人になった。
 県庁で行われた辞令交付式には16人が出席。品谷義雄県安全環境部長が辞令を手渡し「県だけでは市町の隅々まで目が届かない。不適正処理防止に断固とした姿勢で臨んでいただきたい」と激励した。この後、産廃に関する基礎研修会が開かれた。

同記事では,福井県において,産業廃棄物の立入検査員(環境衛生指導員)に関して,併任人事を行ったことを紹介.
廃棄物の処理及び清掃に関する法律第20条に基づき配置される環境衛生指導員は,「立入検査並びに廃棄物の処理に関する指導の職務を行わせる」ことを目的に,都道府県知事が「環境省令で定める資格を有する職員のうちから,環境衛生指導員を命ずるもの」とされている.そのため,同記事ののように,併任人事が採用される.同記事から考えてみると,環境衛生指導員制度は,「情報構造の分権性/集権性」と「人事管理の集権性/分権性」の「双対性原理」*1から考えてみると,「J企業」ならぬ,J自治体(又は,J自治体間関係か)の特性においては,まず,情報構造は「非ヒエラルキー的」として「局所的水平調整」(45頁)が見られ,非ヒエラルキー的による「多面的な技能を有効に利用していくため」(61頁)にも「人事管理は集中的」として配置されているとも整理できる.
ただし,立入検査は,環境庁からは「【 産業廃棄物に関する立入検査及び指導の強化について」(平成2年04月24日衛産30号」*2が示されていたように,モニタリングコストの観点からは「自ら全て」の「領域に目を光らせて監視する」とされる「ポリス・パトロール型監視(police patrol oversight)」的な制度特性を企図されているようではあるものの,同記事にもある体制整備の限界もあり,また,今日では「即時強制ではなく,行政調査」として「情報の収集手法の1つ」*3として扱われることなどからも,「必要なときだけ」「介入すればいい」とされる「火災報知器型監視(fire alarm oversight)」*4な機能特性にあり,そのため,いわば「オフェンス」というよりも,「ディフェンス」*5的ともいえそうか.立入検査は,観察してみたい課題の一つ.

*1:青木昌彦『日本経済の制度分析』(筑摩書房,1992年)61頁

*2:環境省HP(法令・告示・通達)「産業廃棄物に関する立入検査及び指導の強化について

*3:阿部泰隆『行政法解釈学Ⅰ』(有斐閣,2008年)553頁

行政法解釈学〈1〉実質的法治国家を創造する変革の法理論

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*4:北村亘『地方財政行政学的分析』(有斐閣,2009年)179頁

地方財政の行政学的分析 (大阪市立大学法学叢書)

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*5:石渡正佳『産廃コネクション』(WAVE出版,2002年)222頁

産廃コネクション―産廃Gメンが告発!不法投棄ビジネスの真相

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