県庁旧本庁舎の昭和館で十二日、都道府県施設としては珍しい結婚式が行われた。
 昭和館の雰囲気に魅せられたという新郎の会社員斉藤祐也さん(21)=千葉市=と新婦の同小室真理さん(21)=同=の要望で初めて実現した。会場には福田富一知事も駆け付け、「二人で力を合わせ、同じ夢に向かって歩んでください。人生の節目には県庁を再訪してほしい」と祝福した。式終了後、二人は「緊張したが、ここを選んで良かった。友人にも薦めたい」とほっとした表情を浮かべていた。
 昭和館は一九三八年に建てられた県庁本庁舎の一部を保存した建物。結婚式会場となった正庁は特別な行事に使用された部屋で優美な造りが特徴。県によると、挙式を知った県民から早くも問い合わせが寄せられているという。

同記事では,栃木県庁の旧本庁舎(昭和館)内で,結婚式が行われたことを紹介.
「地元も信者を持たず,礼拝や葬式などの宗教儀式がなく,結婚式のためだけにつくられた教会の姿をもつ独立した構築物」をもって「結婚式教会」*1と呼ぶことに倣うならば,同記事「結婚式庁舎」の誕生か.本備忘録で「お馴染み」の「妄想」観察課題のひとつ,2008年12月7日付の本備忘録で章立てを行った「庁舎管理の行政学」からすれば,「第5章:財源としての庁舎」か,又は,「終章:行政財産の転換期とその可能性」か,同種の庁舎利用は,予想外の動向であったため,下名個人的にやや悩む.
文化財的な価値が高いとされる県庁舎保存問題では,足して二で割る的なポジションが双方に不満を残した」*2とも観察される前知事期における庁舎問題.現知事は,「規模を縮小して工事続行.旧庁舎は技術的検討ののちに扱いを決める」(98頁)とされ,移築された同庁舎.同庁舎については,同県HPを参照*3.庁舎移転・保存・新築等をめぐっては,首長選挙の争点とするか否か*4は別にしても,「事務所の位置は住民の利害に関する点が特に大きいので,その決定,変更に当たつて慎重ならしめようとの趣旨」*5から,議会における特別多数決を要することからも,大なり小なり「政事」とならざるを得ない(まさに,「第1章:建築と維持のポリティクス」ですね).ただ,その「政事」が過ぎ去れば,結婚式という「祭事」への転用されるという,興味深い一例.

*1:五十嵐太郎『「結婚式教会」の誕生』(春秋社,2007年)4頁

「結婚式教会」の誕生

「結婚式教会」の誕生

*2:八幡和郎『歴代知事三〇〇人』(光文社,2007年)98頁

歴代知事三〇〇人 日本全国「現代の殿さま」列伝 (光文社新書)

歴代知事三〇〇人 日本全国「現代の殿さま」列伝 (光文社新書)

*3:栃木県HP( 組織と仕事県庁ガイド県庁舎案内県庁舎 昭和館(4代目県庁舎)の利用案内)「第4代栃木県庁舎 昭和館/栃木県

*4:西日本新聞(2009年4月14日付)「県庁舎移転問題で知事 「選挙の争点にせず」」

*5:松本英昭『新版 逐条地方自治法第5次改訂版』(学陽書房,2009年)65頁

新版 逐条地方自治法

新版 逐条地方自治法