総務省は14日、複数の市町村が「部」や「課」を共同設置するなど、合併しない場合も組織のスリム化を可能とする新たな制度案を第29次地方制度調査会(首相の諮問機関)専門小委員会に示した。調査会は6月の答申に向け検討する。
 現在、要介護認定を行う介護認定審査会や職員の不利益処分の審査を行う公平委員会などの機関を複数の市町村が共同で設置することは可能。同省によると、自治体の共同設置機関は昨年7月時点で福祉分野を中心に計413に上る。今回の案は、例えば複数の市町村が1つの会計課を設けたり、県と市が保健所を共同で設置したりすることで、効率的な行政運営と経費節減を目指す内容。実現には、地方自治法の改正が必要になる。

政府の地方制度調査会専門小委員会(委員長・林宜嗣関西学院大教授)は14日、政府が推進してきた「平成の大合併」は一区切りついたとして、2010年3月末が期限の市町村合併特例法は延長しない方向で大筋一致した。
 林委員長は「もう(国主導の)合併は進めていくべきではないという共通認識がある」と言及。一方で、来年度以降も自主的に合併を進める市町村を支援するため、住民の意見を反映させる新たな法整備の必要性も確認した。5月中に小委案をまとめ、6月にも地制調総会に報告する。
 会合では、基礎的自治体の在り方についても議論。小規模市町村が都道府県に福祉や保健など専門性の高い事務を補ってもらったり、複数自治体で保健所などの行政機関を共同設置できるような連携の仕組みをつくるよう求める意見も出た。
 平成の大合併が本格化する直前の1999年3月末に3232あった市町村数は、2010年3月には46%減の1760となるが、471自治体は人口1万人未満のまま残る見通し。

同記事では,第29次地方制度調査会専門小委員会において,本年5月中に答申の検討を終え,6月には総会において,答申を取りまとめる方針であることを紹介.残り1ヶ月程の間で,基礎的自治体のあり方について,どのように答申が取りまとめられるのかは興味深いところ.
同記事によれば,同小委員会では,複数自治体で保健所や「会計課」等を共同設置する案も提出されたことも報道.ただ,時事通信の報道では,保健所の県と市での共同設置,共同通信の報道では「複数自治体」による共同設置とあり,その審議内容の詳細はよく分からない.同調査会の審議状況に関して,総務省HPに掲載されてはいるもの,現在のところ,1月開催の第20回までの資料掲載に止まっており,同小委員会の審議内容は,現在のところ,未掲載*1,残念.
保健所の設置については,共同通信の報道をもとに考えてみると,例えば,複数の「基礎的」自治体で設置が可能となるということになると,手続き上は地域保健法施行令*2第1条の3号により,複数の自治体を同一の保健所設置市として指定することになるのだろうか,又は,別の方式が議論されているのだろうか.地域保健法に基づく政令指定の方式を改めることを地制調で答申するのだろうか,という素朴な疑問もあるものの,具体的な審議内容を把握してみたい.また,時事通信の報道をもとに考えてみれば,専門職,専門機器等の配置に要するコストを分有することが可能となる利点は想定されるものの,政令指定都市中核市以外で,敢えて保健所設置市へと移行した都市(小樽市,八王子市,藤沢市四日市市呉市大牟田市佐世保市)にとってみると,同所業務を都道府県側へと再度返還することを選択されるのだろうか,これも自治体側の選好としてはよく分からない.ただ,共同設置が可能となると,例えば,中核市(もちろん,政令指定都市でもよいのですが)への移行を予定とする市にとってみれは,将来への移行を含みつつ,保健所を共同設置し,将来的には,市と県で分離するという段階的な移行手続を整備することにもなりえ(現行法制下では,移行を企図する市としては,「一般市→中核市」という移行路線よりも,「一般市→保健所設置市→中核市」という移行路線が選択されつつありますが,これに媒介項として,「一般市→保健所設置市(共同)→保健所設置市(単独)→中核市」となることが想定されます),都市制度の多様性の観点からも,着実な移行対応としても,現実的な提案とも考えられる.
また,時事通信の報道にある「会計課」の共同設置については,会計課もまた「一定の専門性の確保」をして「職員集団として有力になるためには,一定の規模が必要であり,規模を確保することによって,分業による専門性の確保が可能になる」ともいえ,そのために,各自治体毎に「分散させるのではなく」「集約化による専門化」*3をはかることであれば,提案趣旨としては分かりやすいか.監査制度を対象として,専門性の集約化方式を分析した金井利之先生の分類によると,「大規模化」「集権化」「一元化」と「集約化には大別して三つの方式」(120頁)があるという.会計かもまた,同集約化の路線の選択の幅を広げることになるのだろうか.そして,会計課とともに,2008年11月26日付同年12月4日付2009年2月7日付の本備忘録でも取り上げた徳島県の監察局のように,他の首長部局から,一定の「離隔距離」*4を保つことが,その活動を正統ならしめる部署については,共同設置も一つの選択肢ともなりえる.また,いわゆる「総務事務センター」*5のような総務系業務の「集約化・外部化」の動向も,共同設置による共同処理の可能性も考えられそう.ただ,これらの部門共同設置については,現行の制度運用レベルでは対応が不可能なのだろうかとも,これまた素朴な疑問がなくはない.
いずれにしても,種々「妄想」するためにも,同調査会の審議状況を知りたい.

*1:総務省HP(審議会・委員会地方制度調査会)「会議資料

*2:法庫HP「地域保健法施行令

*3:金井利之「住民による行政の監視」人見剛・辻山幸宣編『協働型の制度づくりと政策形成』(ぎょうせい,2000年)119頁

協働型の制度づくりと政策形成 (市民・住民と自治体のパートナーシップ)

協働型の制度づくりと政策形成 (市民・住民と自治体のパートナーシップ)

*4:金井利之「会計検査院政策評価」『行政の評価と改革』(ぎょうせい,2002年)60頁

行政の評価と改革 (年報行政研究 (37))

行政の評価と改革 (年報行政研究 (37))

*5:例えば,以下の通り.静岡県HP(ようこそ部局長室へ出納局長室:統計・資料コーナー)「総務事務センターの設置