自治基本条例やまちづくり条例など、住民自治の推進に向けた条例の制定は市区町村全体の20%にとどまっていることが22日、総務省消防庁の調査で分かった。阪神大震災では、被災者の救助や復興で町内会などが重要な役割を果たしたとされるが、こうした地域自治組織の役割や権限の明文化も条例制定自治体の約3分の1と低調だった。
 消防庁は「地域の災害対応力向上には、住民自治組織の権限や自治体とのかかわり方を明確にすることが重要」として、条例制定を加速させたい考えだ。
 調査結果によると、2009年1月時点で条例を定めていたのは全1804市区町村の20%に当たる362自治体。このうち、自治会や町内会の役割などについて条例に明文化したのは133自治体(条例制定自治体の37%)だった。また、自治組織や地域協議会などに対し、市区町村が配分した予算の執行権を与えていたのは43自治体(同12%)。市区町村への意見表明などの権限を与えている条例は96自治体(同27%)あったが、ほとんどは「政策形成への参加権」などの抽象表現で、具体的な手続きの規定はなかった。条例を定めている自治体の割合は、都道府県によってばらつきがある。岡山で48%、島根で38%、東京で37%と高い一方、奈良、和歌山両県では制定市町村がなく、茨城、神奈川、京都では1自治体だけだった。

同期時では,総務省消防庁による調査において,全市区町村における自治基本条例・まちづくり条例などの制定率が約20%であったことを紹介.寝起きに同記事の見出しを拝読し,「え,2割の自治体も自治基本条例を制定しているの」と驚くとともに,「何故,消防庁で「自治基本条例」の把握調査をされたのだろう」とも,素直に思い,同庁HPを拝見させていただくと,「災害対応能力の維持向上のための地域コミュニティのあり方に関する検討会」が,2009年3月付で,報告書が取りまとめられ,同年5月に公表されていた*1ことが分かる(不勉強が恥ずかしい限りです).同報告書を拝読すると,同記事で紹介されている同種調査(具体的には,「市区町村コミュニティ関連条例に関するアンケート調査」(同報告書53〜58頁))を実施されていることを把握.恐らく,同記事は,同調査結果かとも推測(ただ,何故,同調査の結果が,6月に報道されたのだろうか).
同記事で紹介されいるものの,同検討会による同調査結果では,「平成21年1月1日現在」での,「自治基本条例,市民協働条例,まちづくり条例,コミュニティ条例など」と例示のうえ,「住民自治の促進に関する条例」を「名称の如何に関わらず,広く対象」(55頁)として,幅広く同種の条例制定状況を把握.同記事の見出しのように「自治基本条例」に限定はされてないことが分かる.同調査の結果については,同記事にも紹介されているように,362の自治体で同種の条例を制定されており,「「自治会・町内会等」に関する位置づけがある条例を制定している自治体数」は「133」(36.7%),「「地域協議会等」に関する位置づけがある条例を制定している自治体数」は「114」(31.5%),「「予算執行権の付与」に関する記述のある条例を制定している自治体」は「43」(11.9%),「意見表明等機能の付与」に関する記述のある条例を制定している自治体数」は「91」(26.5%)91「上4項目に関する記述が無い条例を制定している自治体数」は「169」(46.7%)とある.同種の条例制定状況の把握には,たいへん貴重な調査結果.
同調査が掲載された報告書は,その検討会の名称からすれば,災害対応に関するコミュニティのあり方について取りまとめられているかと思いきや,同報告書内でも「地域の災害上の問題を明らかにし,防災上の観点からコミュニティを考えることも必要であるが,まず,その前提として,地域コミュニティのあるべき姿を探求する必要がある」(4頁)とも言及されているように,ほぼその大半は,地域コミュニティに関する基盤的分析と提案が言及されている内容.いわば,『コミュニティ読本』的な性格ともいえそう.同記事に紹介された調査結果からは,「コミュニティの「基盤」に係る制度的ツール」(12頁)として,調査を通じて把握された現状を踏まえ,「コミュニティ活動の主体となる地域住民の権利,行動の責務などを明確にした枠組み,制度」が「重要」(13頁)であるとの指摘もある.また,肝心の防災活動についても,「外部の組織をうまく取り込んでいくという発想が必要」として「NPOなどの地域内外での広いネットワークを有した組織を活動に取り入れ,コミュニティにおける福祉活動と連携した要援護対策などを積極的に進めていく」(23頁)として,まさに,「地域防災」*2の取組を提唱.同報告書では,教育と防災,福祉と防災,商店街やNPOとの連携事例をも紹介.コミュニティを考えるうえでは,幅広く勉強になる一冊.
なお,蛇足.下名個人的には,予てから上手く整理が付かない事項として,同報告書にも記載されている「コミュニティ活動の重層化」(21〜22頁)論がある.コミュニティの重層化とは,何れかかが仕掛けて構築できるものなのか,気が付けばそこにあるもの(そして,それを活用する/されるもの)なのか,よく分からない.もう少し考えてみてたい.

*1:消防庁HP(報道発表一覧「災害対応能力の維持向上のための地域コミュニティのあり方に関する検討会」報告書の公表(平成21年5月8日) 消防庁国民保護・防災部 防災課『災害対応能力の維持向上のための地域コミュニティのあり方に関する検討会報告書』(平成21年3月)

*2:永松伸吾『減災政策論入門』(弘文堂,2008年)202〜203頁(2008年11月20日付の本備忘録でも取り上げた同書.同書の出版社HPでは,2009年日本公共政策学会著作賞を受賞されたことを紹介.防災に限定されることなく,公共政策を考えうえでの良書です)

減災政策論入門―巨大災害リスクのガバナンスと市場経済 (シリーズ災害と社会4)

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