杉並区は来年四月から三年間かけて、区立の全六幼稚園を廃止し、幼稚園と保育園の機能を一体化させた独自施設「子供園」に移行する方針を決めた。幼稚園の定員充足率が七割を下回る一方で、三歳児以上の保育ニーズが高まっていることを受けた改革で、区は「待機児童解消につなげたい」としている。 (小川慎一)
 杉並区によると、幼稚園は主に専業主婦世帯の四、五歳児に午前九時〜午後二時まで幼児教育を実施。新設する子供園は保護者が働いているかどうかにかかわらず、三〜五歳児を午前七時半〜午後六時半まで受け入れる。また幼稚園教諭以外に、新たに保育士を配置し、区独自の就学前のプログラムを実施する。保育料は区立幼稚園(月額八千円)や区保育室(同二万五千円〜三万六千五百円)を参考に定める予定だ。区教委の加藤貴幸学務課長は「保育園を利用する保護者が子どもに幼児教育を受けさせたいというニーズや、幼稚園を長時間利用したいという声も高まっており、そうしたことに対応する改革をしていきたい」と話した。
 区は二〇一〇年度に下高井戸と堀ノ内の二園を子供園にし、一二年度までに残りの四園も順次移行する。八月中に区民から意見を募り、十一月の区議会に条例案を提出する方針。都内では品川区が〇二年度に独自の幼保一体化施設を開設している。〇六年には国の指針に基づき、都道府県が条例で幼保一体化施設を認定する「認定子ども園」制度が始まり、現在都内には公私立含めて三十三カ所ある。 

同記事では,杉並区において,2010年度より段階的に,区立幼稚園を廃止し,保育園の機能を一本化した独自施設(子供園)へと移行する方針であることを紹介.
文部科学省厚生労働省幼保連携推進室の調査結果では,平成21年4月1日現在の「認定こども園」の認定件数は全国で358件,幼保連携型は158件,幼稚園型は125件,保育所型が55件,地方裁量型が20件とあり,何れも2008年度よりも増加傾向にある.特に,幼保連携型は,2008年度が104件であり54件の増,幼稚園型が76件から49件増にある.同区が位置する東京都全体では,同記事にもあるように2009年度では33の認定があり,これは2008年度迄の認定が19件であったことからすれば,24件の増加となる.そして,その類型毎の増加件数を見ると,幼保連携型は2008年度迄と同様の4件,幼稚園型が増加し,9件から20件へと11件増,保育所型は3件から2件の増加で5件,地方裁量型が3件からの1件増で4件という状況*1にあり,幼稚園型による伸びが大きい.
同記事において紹介されている同区の取組方針については,現在のところ同記事のみでの情報のため,制度内容を十分に把握できないものの,2009年3月に,内閣府に設置された,「認定こども園制度の在り方に関する検討会」が取りまとめた報告書において提案されている,「認定こども園の理念・意義及び教育・保育の質の維持・向上を図る観点からは,将来的には幼保連携型に集約していく方向で進めていくことが望ましいと考えられる」*2との考えが示されている「認定こども園」の類型でいう「幼保連携型」に近い施設となるのだろうか.認定こども園の多くが私立によって行われているなか(358件中271件),例えば,「「保育供給」が「保育需要」を決めるのではなく,「保育需要」が「保育供給」を引き出す」「仕組み」*3が保育制度のみならず,幼保一元化の取組において同様に適用されるように考えられる.同区の取組を始めとして,小学校就学前の「教育」における柔軟化の試みが,如何に進められるかは,要経過観察.