【松阪】フィジー諸島共和国国家消防庁の消防長や消防士を専門的に教育するアドバイザーとして、松阪地区広域消防組合から現地に三カ月間派遣される二人の職員が十日、松阪市役所を訪れ、管理者の山中光茂市長に出発を報告した。
 派遣されるのは、同組合消防本部総務課の西川実雄さん(57)と、中西健二さん(29)。フィジー国家消防庁では七月に、これまで出向ポストだった消防長職に、初めて庁内の職員が就任したため、JICA(国際協力機構)を通して、平成十五年度から毎年数人のフィジー消防職員の研修を受け入れている松阪消防に、消防制度などについて的確にアドバイスしてくれる職員の派遣を依頼。
 四月にはフィジー消防庁の最高責任者が来松して、山中市長に直接要請し、JICAの政府開発援助事業の一環として、二人の派遣が決まった。市長に出発の報告をした西川さんらは「現地のニーズを見極めて指導する」と意気込みを語り、市長は「熱意を持って、松阪に負けない制度とともに、消防人の魂も伝えてほしい」と、激励した。二人は十八日に出発。西川さんは業務規定や職員育成など消防制度全般、中西さんは応急手当ての実技指導を中心にアドバイスする。

同記事では,松阪市において,フィジー諸島共和国国家消防庁へ,松阪地区広域消防組合から2名の職員を派遣することを紹介.「国際アクターとしての地方自治体の役割の真価は,地方自治体が持っているが中央は持っていない能力やノウハウにある.中央レベルでは,多くの地方自治体が持ち合わせている専門的知識,経験,地方での人のつながり,草の根の行政能力が欠落している」*1とも解される,いわゆる「自治体外交」の取組の一つ.
同組合では,同記事でも紹介されているように,JICAの「草の根技術協力事業」を通じて,2003年度からは,同国より一定期間職員を受け入れて,「総合的な消火・救助技術研修」を実施し,更に,2006年度からは同組合から同国へ職員派遣を行い「消火・救助技術指導」を取り組んできた実績をもつ.同取組に関しては,同組合HPを参照*2
同記事でも紹介されている,本年4月の同国「消防庁の最高責任者の来松」時の様子を確認しようと,2009年4月20日付の「松阪市山中光茂の『幸せ発見』日記」を拝読すると*3,同記事にある「これまで出向ポストだった」との記載の内容としては,従来「フィジーの消防長はオーストラリアの方がその役職を担っていた」ものの「今回フィジー出身の方がフィジー消防の最高責任者という重責を担うこと」になったことがその内容の様子.そのため,同記事にもあるように,今回の派遣では,同組合のミドルクラスの職員が派遣され「業務規定や職員育成など消防制度全般」を「アドバイス」することで,派遣従来の「消火・救助技術指導」に止まらない組織運営等の技術支援が行われる模様.技術面に止まらず「ガバナンス改革」を行う際には「慎重な議論が必要」*4ともされるなか,同組合の経営に関する制度と経験が同国に移転されるは興味深い.

*1:プルネンドラ・ジェイン(今村都南雄監訳)『日本の自治体外交』(敬文堂,2009年)303頁(amazonでは掲載されていない模様)[rakuten:book:13166676:detail]

*2:松阪地区広域消防組合HP「国際貢献 -Jica Programs-」,同事業については,次のHPを参照.独立行政法人 国際協力機構HP(JICA中部事業の紹介)「草の根の力を活かそう!草の根技術協力事業

*3:松阪市HP(市長のページ松阪市長 山中光茂の『幸せ発見』日記)「4月20日(月)「マニフェストを破って、皆さんが幸せになるならそれを選びます」」

*4:城山英明『国際援助行政』(東京大学出版会,2007年)164頁

国際援助行政 (行政学叢書)

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