政府の地方分権改革推進委員会(委員長・丹羽宇一郎伊藤忠商事会長)は24日、地方自治体の仕事を法令で縛る国の「義務付け」の見直しを新政権が早期に実現するよう、首相への第3次勧告で要請する方針を決めた。
 第3次勧告は、義務付けの具体的な見直し案を盛り込み、9月中の取りまとめを目指している。地方分権改革推進法は政府に対し、勧告に基づき分権改革推進計画を本年度中に作成することを求めている。しかし義務付けの見直しに当たっては膨大な法令改正作業が必要で、計画策定に手間取ることも予想されるため、政府に早期の取り組みを求めることにした。
 この日の会合では、第3次勧告で具体的な見直し案を提示する義務付けの項目数を892とすることも決定。これまで896項目としていたが、精査の結果、現状でも自治体の裁量が認められていることなどが判明した項目を削除した。

同記事では,2009年9月24日に開催された第96回地方分権改革推進委員会の審議内容を紹介.「第3次勧告」のうち,いわゆる「義務・枠」部分の本文(案)の内容について審議.勧告(案)の内容については,同回HPを参照*1.同回の審議にて,同部分の本文は了承.
下名個人の関心は,同部分の核心ではないものの,地方自治法第263条の3第5項にいう「事前情報提供制度」に関する部分.同制度は,政府側に「新たに事務又は負担を義務付けると認められる施策の立案」の「内容となるべき事項を知らせるための適切な措置」をもとめる「デフォルト・ルール」*2ではあるものの,「これまでの情報提供の状況をみると,情報提供が行われていない,あるいは情報提供が行われてもその時期が政府案確定直前であるなど、制度の趣旨が十分に理解されているとは言い難い」(33頁)現況にあったとして,政府側の同制度の選択には十分には結びついていなかったとの同会での認識が示されている.そこで,同勧告(案)では「義務付け・枠付けに関する立法の原則に沿ったものとなるよう,各府省における法案の立案段階でこの原則をチェックする政府部内の手続を確立」(33頁)とし,同制度に関する政府側の運用改善を求めている.
記述内容については,第95回に配付された資料である,いわゆる『小早川委員ワーキンググループ報告』とほぼ同一ではあるものの,情報提供時期の部分については,新規に記述されている模様.つまり,『小早川委員ワーキンググループ報告』では,「例えば,法律案については,審議会等の答申を受けた場合,当該答申を踏まえて法案化する旨を当該答申とともに通知するなど,長,議長の全国的連合組織が法令等の案の内容を知り,それに意見を提出した場合,必要な反映が可能な時期とすべきである」*3と記載されている一方で,第96回に配付された勧告(案)では情報提供の時期としては,「例えば,法律案については,審議会等の答申を受けた場合,当該答申を踏まえて法案化する旨を当該答申とともに通知するなど,長,議長の全国的連合組織が法律案の内容を知り,それに意見を提出した場合,必要な反映が可能な時期とすべきである」(太字は,下名)とし,新たに,「法律に基づいて義務付けを具体化する政令等の案についても,同様に適時の情報提供が必要である」との一文を追加し,「政令等の案」についても同制度の対象であることを明記されている.同文の追加により,恐らくは,同法同項にいう「地方公共団体に対して新たに事務又は負担を義務付けると認められる施策」の対象としては,「法律案又は政令案に限るとする見解」*4を採用せず,「政令等」の「等」の中には,「各大臣が法律又は政令若しくはこれに基づいて定める規則等の府省令,告示,基準等も含まれるもの」(1372頁)との見解を確認・強調された様子.なるほど.
ただ,同制度の情報提供に関する主導性は政府側にあり,そのため,同制度の運用に関する制度改善においては,政府側が同デフォルトを自ずと選択するための経路の整備(負担軽減)もまた必要ではないかとも考えられる.更には,同制度を通じて得られた情報に対する「意見集約のための体制,手続等を整える」(1373頁)という,地方六団体である全国的地方連合組織の側の課題も考えられそうか.具体的な制度改正となる場合には,要観察.