福島県矢祭町で24日、教育長の教育委員再任案が町議会によって否決され、教育長不在の事態になった。町は教育長の任期を誤認し、任期切れが迫っていたことから9月定例会最終日の18日に急きょ提出したが反発を受け、結局臨時会で否決という結果となった。
 高信由美子前教育長は2007年6月に就任した。前町長とともに退任した教育長の在任期間を引き継いだため、任期は今月19日までだった。
 しかし、古張允町長らが任期4年と勘違い、15日からの定例会に議案を提出せず、18日に議員から指摘されて判明。再任案を追加提出したが、「急ぎすぎ」と反発されたため取り下げ、24日の臨時会に再提出した。
 臨時会では「今後の教育行政が心配」「評価すべき実績がある」と賛否両論が出て、賛成4、反対5で否決された。高信前教育長は「もったいない図書館」を創設するなどユニークな事業展開で知られる一方、先走りする行動を指摘する声が出ていた。町教委は20日から教育課長を教育長職務代理にしてしのいでいる。古張町長は「前教育長を評価しており、(否決の)結果は不満。当面、時間をかけて考える」と話した。

同記事では,矢祭町における教育委員会教育長の委員としての議会同意人事の結果について紹介.不同意との結論.同職に対する任期に関して誤認があったことが,一つの背景とのこと.
同記事では,同職の任期に関して「教育長の在任期間を引き継いだため」と紹介.これは,同日付の朝日新聞の報道においても「前教育長の残任期間を引き継ぎ」*1とあり,同職としての任期が別途あり,その継続があるとの認識が示されているようにも紹介されている.
ただ,地方教育行政の組織及び運営に関する法律を拝読すると,教育長の任期に関しては,第16条第2項において「教育長は,委員としての任期中在任するものとする」とあり,同委員会委員の任期に基づくものとある.そして,その委員任期に関しては,同法第5条において「4年とする」とあり,加えて,次のような但し書きが続いており,「補欠の委員の任期は,前任者の残任期間とする」.そのため,教育長としての任期が終了することは,委員としての任期が終了することでもあり,「前教育長からの任期」を継続するという整理よりは,「前教育長であった前委員としての任期」を継続するとの理解が適当であるようにも思われる.同日付の毎日新聞*2では,同制度面の観点からは,明瞭に紹介(また,同職の任命に関しては,同法第16条第2項基づき「当該教育委員会の委員である者のうちから,教育委員会が任命」されるため,同職への議会同意は必要はなく,同法第4条第1項にあるように委員の任命に際して議会同意が要することとなる.同記事では「教育長の教育委員再任案」と丁寧に紹介されている.一方で,前紙による記事内では,教育長職もまた議会同意人事であるかのように「教育長の再任議案」とやや不明瞭な表現が用いられているようにも思わなくもない).
個別の制度自体は明解ではあるものの,個別の制度が集積し,連続した仕組みになると,その相補性が判然とはしなくなるのだろうか.一般行政からは独立性やその系統性に重きが置かれて整備された教育委員会制度*3ではあるものの,同職の任期への認識に関しては,同職と同委員会委員とに離間があるとの動機の錯誤によるものなのか,または,単なる表示錯誤であるのか,同職の認識状況についても考えてみたい.

*1:朝日新聞(2009年9月25日付)「矢祭町の教育長 再任案不同意に

*2:毎日新聞(2009年9月25日付)「矢祭町:教育長任期切れ問題 議会、委員再任に不同意 町長「結果に不満」/福島

*3:紱久恭子『日本型教育システムの誕生』(木鐸社,2008年)194頁

日本型教育システムの誕生

日本型教育システムの誕生