原口一博総務相は25日の記者会見で、自治体首長や有識者を交え、地方自治法の抜本改正などを議論する「地方行財政検討会議」を設置すると発表した。来年1月に初会合を開く。鳩山政権が最重要政策に掲げる「地域主権」の具体策を話し合う第3の組織となる。
 メンバーは総勢18人。政府からは議長を務める原口氏や地域主権推進を担当する逢坂誠二首相補佐官らが参加。自治体からは達増拓也岩手県知事や横尾俊彦佐賀県多久市長ら8人を、有識者西尾勝東大名誉教授ら6人をそれぞれ起用する。
 原口氏は、地域主権改革の工程表案で地方自治法を抜本改正し「地方政府基本法」を制定する方針を表明しており、行財政検討会議について「本当の意味で地方が独立するための議論をしていただきたい」と述べた

同記事では,総務相の記者会見において,地方自治法改正に関する検討会議を設置する方針が示されたことを紹介.
現在のところ,同会議の概要に関する情報は,2009年12月25日付の総務相記者会見の内容に止まる模様.同相記者会見*1を拝読させていただくと,同会議では「地域主権の確立を目指した地方自治法の抜本的な見直し」を図り,「地方政府基本法という形」として「本当の意味での地方の独立」に向けた「独立した権限,財源ということで御議論」することを目的とされている,という.会議の運営としては,「できるだけ年明けの早い時期」に開催し,「この会議において」「地域主権戦略の工程表,いわゆる原口プラン」に「沿って地方自治法を改正案として取りまとめて,順次国会へ提出していきたい」という.
同配信記事では,同会議を「第3の組織」として位置づけているものの,他の2つの会議体は,下名,正直なところ整理ができていない.恐らくは,2009年12月15日付の本備忘録でも紹介した「地域主権戦略会議」は,「第1の組織」とは位置づけられそう.では,「第2の組織はといえば,難しい.つまり,2009年12月19日付の本備忘録にて紹介した「国と地方の協議の場実務検討グループ」が該当しそうではあるものの,同グループ自体は,「地方側より「協議の場の法制化について,国・地方双方の代表からなる検討チームを設けたい」旨の提案」がなされたこともあり,2009年11月17日付の本備忘録でも紹介した「国と地方の協議」*2が設置根拠とすれば,「国と地方の協議」が正統な「第2の組織」ともいえそう.更には,その分掌からすれば,「国,地方公共団体及び民間の役割の在り方の見直しを行うため」*3に設置されている「行政刷新会議」もまた,審議内容からすれば,その有資格者とも位置づけられそうか.
2009年12月14日に開催された第1回地域主権戦略会議の配布資料である「地域主権戦略の工程表(案)」*4(いわゆる「原口プラン」)は,すなわち,「地域主権戦略会議」の「工程表」かと,下名は理解してはいたものの,同資料を拝読し直すと,確かに,「地域主権戦略会議」という「場」の工程と,大別された3つの「審議課題」とは分離されて記載されており,「地域主権」という審議課題に対して,あらゆる「審議の場」を包摂する「工程表」及び「プラン」の性格をもつ模様.そのため,これらの各審議課題の実際審議・具体化を巡り,これら4つの会議体間での「デマケーション」*5は,要確認(なお,上記のいわゆる「原口プラン」では,「「地方政府基本法」の制定」に関しては,「フェーズⅡ」として,「「地方主権戦略会議」と「国と地方の協議の場」を通じて」審議する工程が示されていたようにも理解できるが,「地方行財政検討会議」の設置も同プランが述べる,「一部は前倒し」*6に含む,と理解することが適切なのだろうか).
特に,2009年11月8日付及び同年12月15日付の両本備忘録でも記したように,「日本国憲法の基本理念を十分に具現するように現行地方制度に全般的な検討を加えることを目的」*7として,法定上の設置が保障されている地方制度調査会への対応及び開催の判断次第では,「「多極分散型」分権論議*8となるか,または同調査会は,ジョン・アーヴィング先生が描いた,いわゆる「第四の手」*9となるのか,やはり判然としない.「地方行財政検討会議」と他の会議体との審議事項及び審議結果への相互関係,例えば,「地方行財政検討会議」が取りまとめるであろう「地方自治法を改正案」に対して,他の会議体での付議・審議・承認関係が存在しないのかは,要経過観察.
なお,蛇足.上記の,いわゆる「原口プラン」.将来のこの時代での分権論議の整理のための事実確認となりますが,2009年9月30日付の朝日新聞において報道されていた,「地域主権改革の原則」を定めるために作成させるという「原口ドクトリン」*10と同一の文書と整理すべきなのか,又は,異なる文書であるか,下名,現段階では整理がついておらず,こちらについても,要確認(と書きつつも,これはどなたに伺うことが適切なのかも,判然とはしませんが(同相が開始されたTwitter*11を通じて伺うことも一つの方法なのでしょうか).

*1:総務省広報・報道大臣会見・発言等:2009年12月)「原口総務大臣閣議後記者会見の概要」(平成21年12月25日)

*2:首相官邸HP(各種本部・会議等の活動情報)「国と地方の協議

*3:内閣府HP(行政刷新会議設置規定)「行政刷新会議の設置について(閣議決定,平成21年9月18日)

*4:内閣府HP(地域主権地域主権戦略会議会議開催状況地域主権戦略会議(第1回)(開催日平成21年12月14日(月)議事次第・配布資料)「資料4‐2地域主権戦略の工程表(案)【原口プラン】

*5:山谷清志「外務大臣官房の政策管理機能」『年報行政研究40 官邸と官房』(ぎょうせい,2005年)24頁

官邸と官房 (年報行政研究 (40))

官邸と官房 (年報行政研究 (40))

*6:前掲注4・内閣府地域主権戦略の工程表(案))2頁

*7:総務省HP(組織案内審議会・委員会・会議等地方制度調査会概要)「地方制度調査会設置法」第1条及び第2条

*8:西尾勝地方分権改革』(東京大学出版会,2007年)206頁

地方分権改革 (行政学叢書)

地方分権改革 (行政学叢書)

*9:ジョン・アーヴィング『第四の手(下)』(新潮社,2009年)195頁

第四の手〈下〉 (新潮文庫)

第四の手〈下〉 (新潮文庫)

*10:朝日新聞(2009年9月30日付)「原口総務相、橋下知事ら「首長連合」と連携へ

*11:J-CASTニュース(2009年12月15日付)「現役閣僚初!原口総務相「ツイッターを始めました!」」