千葉市は2010年度の機構改革で、「自治推進部」(仮称)を新設する方針を固めた。熊谷俊人市長が公約に掲げた「市民が主役の街づくり」を実現するため、市の情報発信体制を強化し、市政への積極的な市民参加を促していくのが狙いだ。
 現状の組織では、市役所と市民をつなぐ窓口が分散している課題があった。市民からの受付窓口となっていたのは市民局の「地域振興課」で、市長への陳情・要望、市政への提案などを担当。一方、市政だよりなど市政情報を発信するのは総務局の「広報課」が担当していた。「市側の耳と口が局をまたがってばらばら。集まった情報を市民の市政参加につなげる戦略性がない」(市幹部)状況にあるという。
 このため、両課とシティーセールスなどを担う企画調整局の「政策調整課」の一部などを統合し、新たに「自治推進部」を同局内に設ける。重要施策の立案、調整機能を強化するため、「政策調整課」と「企画課」などの統合も検討している。また、電子自治体の実現や行政コスト削減、業務改善のIT戦略を担う「情報政策課」と行政情報通信ネットワークの運営などを担当する「情報システム課」を統合して、「情報統括部」(仮称)もつくる予定だ。
 熊谷市長は機構改革について、「役所内の内向きの組織でなく、現場を重視した組織に替えていく必要がある」としている。

本記事では,千葉市における機構改革の方針を紹介.同市に配置されている企画調整局内に,広聴・広報,そして,地域振興に関連する業務を集約した「自治推進部」を設置される模様.
同市の千葉市事務分掌規則第1条を拝読すると,同局は,他局においては部制を採用.一方で,同局では,同局長直近下位には,「企画課」「政策調整課」「情報政策課」「情報システム課」「統計課」*1の5課が配置されている.
伊藤正次先生による,都道府県知事の「直近下位の内部組織」の形態分析結果*2を参照しつつ,首長直近下位の内部組織長の直近下位の内部組織形態を,抽出してみると,同市の場合にはいわば「一部局内部制」とも整理ができそう.同局では「局内課制」を採用しており,他局との対比で見ると,「縦方向の階層を減らす」*3低層な機構として配置されている.重層的な機構運営に対して,同局のような低層な機構運営では,「縦報告の意思決定が簡素化・迅速化される」*4との指摘もなされてきた.
一方で,首長直近下位の内部組織長の直近下位の内部組織形態に関しては,2009年11月21日付の本備忘録でも取りあげた神奈川県の機構改革の取組があるように,重層化の傾向性も見られつつある.同市において,「局内部制」への収斂という機構の重層化に伴い,恐らくは重層な機構という剛体が有するであろう慣性モーメントに対して,関連業務の総合化・集約化と意思決定の簡素化・迅速化という二つの外力が,同市の機構運営へともたらす力学の状況は,興味深いところ.要経過観察.

*1:千葉市HP(千葉市例規集)「千葉市事務分掌規則」(平成4年2月1日,規則第2号)

*2:伊藤正次「自治体行政組織の構造変化と改革課題」『都市問題研究』第61巻第4号,2009年4月号,63頁

*3:礒崎初仁・金井利之・伊藤正次『ホーンブック地方自治』(北樹出版,2007年)177頁

ホーンブック 地方自治

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*4:前掲注3・礒崎初仁・金井利之・伊藤正次2007年:177頁