熊本県五木村議会は18日、議員報酬の一部について、活動実績の評価に応じた額を支給することを盛り込んだ改正条例を可決した。4月から実施する。村によると、議員報酬に成果主義を導入するのは極めて珍しく「全国でも聞いたことがない」としている。
 議員定数は10人。月額報酬は議長28万4千円、副議長23万4千円、一般村議21万3千円で、成果主義の対象となるのは報酬の2割。5人以内の有識者による評価委員会を設け、一般質問の内容や政策提案、議会改革に取り組む姿勢のほか、自己申告に基づく地域貢献活動などを査定する。評価は、(1)優秀(全額支給)(2)良好(半額支給)(3)普通(支給なし)の3段階で、年度末に一括して支払う。余った報酬額は次年度予算に繰り越す。
 条例改正は議員提案で、提案理由を「川辺川ダム計画で村は水没予定地となり、人口が著しく減少し危機的な状況。議員の競争意識を生み、よりよい活動につなげることで村の再建を果たしたい」としている。

本記事では,五木村議会における議員報酬制度について紹介.
2009年12月14日付及び2010年2月24日付の各本備忘録にて取りあげた,同村議会における議員報酬の一部への成果主義導入の制度化審議の結論.「五木村議会の議員の報酬及び費用弁償等に関する条例」*1の改正案に対して,2010年3月19日付の西日本新聞による報道によると「賛否それぞれの立場で2人ずつ討論」の後,「起立投票の結果,議長を除く9人のうち賛成5,反対4」で「可決」*2された,とのこと.
本配信記事内にて報道されている,「余った報酬額は次年度予算に繰り越す」ことに関しては,上記の各備忘録にて掲載した各記事では報道されていなかった事項.評価結果次第では,報酬額の残余に至ることも想定され,興味深い.「繰り越」す仕組み等をはじめとしとした,可決された条例は,要確認.
今後の同制度の運用に関しては,上記の西日本新聞による記事では,「評価委員会は個々の議員の活動実績を「優秀」「良好」「普通」の3段階で評価する」ものの「その結果を公表するかどうか決まっていない」として,同村「議長は「議員のプライドもあるから」」との認識から「議員一人一人の評価結果は表に出さず,3段階の評価別人数だけを公表したい考え」」*3と紹介.また,2010年3月19日付の読売新聞による報道では,評価を行う「委員の氏名」*4に関しても,「外部から圧力や働きかけがある恐れがある」(田山淳士議長)などの理由で公表されない」とも紹介.
評価という,いわば「眼差し」*5による規律づけは,その「監視する視線,それが自分の上にのしかかっていると感じて,各人がとりこんで内面化してしまい自分自身を観察するようにまでなってしまう」*6ことを企図するのであれば,被評価者にも気付かれることなく,匿名の評価者が一望監視としての装置の如く,ひっそりと行われることが適当とのことなのだろうか,考えてみたい.「〈個々の自治実践〉」の制度化が図られた「〈個々の仕組み〉」*7が,制度形成期に想定された趣旨としての「実践」されるかは,今後もまた,要経過観察.

*1:五木村HP(五木村例規集)「五木村議会の議員の報酬及び費用弁償等に関する条例」(昭和31年12月28日,条例第7号)

*2:西日本新聞(2010年3月19日付)「五木村議会・能力給導入可決 全国初の試み注目 なお課題残る

*3:前掲注2・西日本新聞(2010年3月19日付)

*4:読売新聞(2010年3月19日付)「五木村議会が成果報酬を導入へ 全国初、条例改正案を可決

*5:ミシェル・フーコー『監獄の誕生』(新潮社,1977年)118頁

監獄の誕生 ― 監視と処罰

監獄の誕生 ― 監視と処罰

*6:ミシェルフーコーミシェル・フーコー思考集成Ⅵ』(筑摩書房,2000年)266頁

*7:金井利之「地方自治のミ・ラ・イ第24回(最終回)地方自治のミ・ラ・イ」『ガバナンス』No.107,2010年3月号,83頁

ガバナンス2010年3月号

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