政府の地方分権改革推進委員会は19日、4次にわたる勧告の実現を求める声明を発表し、3年間の活動を終えた。勧告がほとんど実行されていない現状に、丹羽宇一郎委員長は「実行監視委員会を設けて実行を迫る努力をすべきだ」と訴えた。
 委員会は安倍政権だった2007年4月から、99回の審議を重ねて、4人の首相に勧告を出した。08年の第1次勧告で、64の法律の359条項の権限を都道府県から市町村に移すよう提言。同年末の第2次勧告では国の出先機関の職員3万5千人の削減案を示した。政権交代後の09年秋には、法律で自治体の仕事を縛る「義務づけ」の892項目の見直しを迫る第3次勧告と、国と地方の税源配分を現行の6対4から5対5にするよう求める第4次勧告を出した。

本記事では,地方分権改革推進委員会の最終の会合が開催されたことを紹介.
2009年11月10日付の本備忘録にて取り上げた,2009年11月9日に開催された,第98回同委員会における『第4次勧告』の取りまとめ以降,同委員会HPにおける「当面の委員会開催予定」では「調整中」*1との掲載されたままであった同委員会.地方分権推進法附則第4条において「三年を経過した日にその効力を失う」*2こともあり,本記事にて紹介されている,期限前の2010年3月19日に,第99回の会合が開催.同回の同委員会では,「地方分権改革推進委員会がいささかでも成果をあげるには」,「勧告に盛り込まれた種々の改革案を精査し,閣議にまで持ちあげる改革案を適宜取捨選択する任務を持つ」ための「場」*3の必要性が提唱されたものの,同委員会自身での勧告内容に対する政府側の対応への認識が示された模様.
同委員会における審議内容及び本記事でも紹介されている「声明」の内容及び性格については,(2007年4月17日に委員長決定がなされた「地方分権改革推進委員会の会議の公開の方法等について」の「5」により,「委員会の会議の議事要旨については原則翌日」「できるだけ速やかに公開できるよう努める」*4との努力規定が設けられていますが)現在のところ公開されておらず,詳細が把握できず,残念(上記「委員長決定」の「6」では,「インターネット」による「配信」もまた努力規定とされておりますが,同回についても,よもや配信されない,という判断にならないと良いのですが).
同回にて取りまとめられた「声明」という文書.同法第10条第2項にいう「委員会は,必要があると認めるときは、地方分権改革の推進に関する重要事項について,内閣総理大臣に意見を述べることができる」とされており,同委員会が,2008年9月16日に提出された『道路・河川の移管に伴う財源等の取扱いに関する意見』*5及び2009年4月24日に提出された『国直轄事業負担金に関する意見』*6と同様に『意見』に該当する文書として,内閣総理大臣に対して提出される(た*7)のだろうか.公開後,要確認.
「永遠に未完」*8とも解される同種課題群に対しての,「未完の「分権改革推進体制」」*9との認識が示されつつも,新たに設置された「改革推進体制」としての「地域主権戦略会議」.同会議において設けられた「課題別担当主査」*10の課題及びその実際の協議過程*11においては,「回帰的」*12な様相もまた窺えそうななかで,同委員会の各種勧告内容を「摂取」する「裏付け」*13が見出されるか,要経過観察.

*1:地方分権改革推進委員会HP「委員会開催状況

*2:地方分権改革推進委員会HP(委員会関係法令等)「地方分権改革推進法

*3:西尾勝地方分権改革』(東京大学出版会,2007年)210頁

地方分権改革 (行政学叢書)

地方分権改革 (行政学叢書)

*4:地方分権改革推進委員会HP(委員会関係法令等)「地方分権改革推進委員会の会議の公開の方法等について」(平成19年4月17日,地方分権改革推進委員会委員長決定)

*5:地方分権改革推進委員会HP(委員会の勧告・意見等)『道路・河川の移管に伴う財源等の取扱いに関する意見』(平成20年9月16日)

*6:地方分権改革推進委員会HP(委員会の勧告・意見等)『国直轄事業負担金に関する意見』(平成21年4月24日)

*7:2010年3月19日付の朝日新聞による「首相動静―3月19日」及び同日付の毎日新聞による「首相日々:19日」の両記録を拝読すると,提出・手交等の記録が示されてはいませんので,同日の手交は行われてはいないようですが

*8:金井利之『自治制度』(東京大学出版会,2007年)54頁

自治制度 (行政学叢書)

自治制度 (行政学叢書)

*9:大杉覚「分権一括法以降の分権改革の見取り図と今後の展望」『都市問題』第100巻第8号,2009年8月号,63頁.

*10:内閣府HP(地域主権地域主権戦略会議会議開催状況地域主権戦略会議(第2回)(開催日平成22年3月3日(水)議事次第・配布資料)「資料2 課題別担当主査の指名について(案)」(平成22年3月3日,地域主権戦略会議)

*11:例えば,次の記事も参照.朝日新聞(2010年3月18日付)「一括交付金に各省異論 11年度導入へ始動

*12:前掲注9・大杉覚2009年:61頁

*13:渡辺浩『日本政治思想史 十七世紀〜十九世紀』(東京大学出版会,2010年)361頁

日本政治思想史―十七~十九世紀

日本政治思想史―十七~十九世紀