富山県内の自治体で、庁舎の開庁時間を変更する動きが目立ってきた。昨年までは午前8時半から午後5時半までの横並びだったが、今年1月に県と富山市が閉庁時刻を午後5時15分に繰り上げた一方で、朝日町は今月から午後6時までに繰り下げた。6月には9 市町村も見直す予定で、職員の出勤時刻をずらす時差出勤制度の導入が本格化する。
 県などによると、県と富山市に続き、高岡、射水の2市も今月から閉庁時刻を午後5時15分にした。ただ、高岡市は6月末までを周知期間とし、市民課など一部の窓口は午後 5時半まで受け付けている。
 黒部など5市3町1村も、6月から15分の短縮を予定している。このうち、滑川、南砺、砺波、小矢部の4市は、一部の課で午後5時半までを継続するため、担当職員の時差出勤で対応する。一方、朝日町は今月1日から、全課で午後6時までの延長に踏み切った。各課の職員は 午前8時半から午後5時15分と、午前9時15分から午後6時までの交代勤務になって いる。黒部市の場合は6月から、市民環境課など7課を対象に15分延長するため、午前9時から午後5時45分までの勤務体制も新設する。魚津と氷見の2市は午後5時半までで変わらない。
 今年に入って開庁時間の変更が相次ぐ背景には、2008年の人事院勧告が影響している。民間の労働時間と均衡を図るため、国家公務員の勤務時間が1日当たり8時間から7時間45分になり、県内の2市を除く自治体も勧告に準じる判断をしたが、開庁時間については延長と短縮に分かれた。県内で最も長く開庁する朝日町では、延長した時間帯の利用が徐々に増えており、魚津龍一町長は「住民のために職員がいるという意識を忘れず、住民サービスの向上に努めたい」と話している。

本記事では,富山県内に位置する市町村の閉庁時刻について紹介.2008年12月7日付の本備忘録において項目立てを行った本備忘録の妄想的・断続的観察課題のひとつ「庁舎管理の行政学」における「第2章:入庁と退庁管理」の観点からも,興味深い記事.
「官庁,都道府県庁など,行政組織に所属する個々の職員の勤務に服する時間」とされる「勤務時間」と「それら行政組織体の執務態勢,つまり閉庁時間であり,行政を執行する立場からの対応を示す」時間ともされる「執務時間」*1.後者の「執務時間」に関しては,1988年以降は「各地方公共団体が規則で定めること」*2とされているため,既に,個別自治体間においては,個々の「首長が一人で定める」*3ことが制度的には可能であった執務時間の設定.
本記事を拝読すると,執務時間制度における自由度の下で,同一庁舎空間に流れる「勤務時間」と「執務時間」という二つの時間については,「別個のもの」*4でありながらも,執務時間に勤務する職員の存在を想定すれば,不即不離な関係にもあることも考えられ,運用面での「横並び競争」*5状態にあったことも分かり,興味深い.ただ,その競争が「人事院勧告」後は,必ずしも「垂直波及」*6には至らない状況が,現在では観察できる模様.これまた,興味深い.

*1:石橋孝雄編『地方公務員制度2 勤務条件・利益の保護』(ぎょうせい,1991年)3頁

勤務条件・利益の保護 (地方公務員制度)

勤務条件・利益の保護 (地方公務員制度)

*2:前掲注1・石橋孝雄編1991:5頁

*3:吉田利宏・いしかわまりこ『法令読解心得帖』(日本評論社,2009年)32頁(本年度からは,少し観察対象の拡大も考えており,ひとり法制課に異動した「気分」で,基本的な書籍から拝読を始めております.吉田利宏先生の著作は,何れも勉強になり,そして,何よりも面白いですね)

法令読解心得帖―法律・政省令の基礎知識とあるき方・しらべ方

法令読解心得帖―法律・政省令の基礎知識とあるき方・しらべ方

*4:前掲注1・石橋孝雄編1991:3頁

*5:村松岐夫地方自治』(東京大学出版会,1988年)73頁

地方自治 (現代政治学叢書 15)

地方自治 (現代政治学叢書 15)

*6:伊藤修一郎『自治体政策過程の動態』(慶応義塾大学出版会,2002年)37頁

自治体政策過程の動態―政策イノベーションと波及

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