政府の地域主権戦略会議は19日、国の「ひも付き補助金」に代わって地方自治体が使途を決める「一括交付金」の2011年度導入に向けて地方側の意見を聴取、全国知事会など3団体が「滞りなく事業が執行できる予算総額の確保が必要だ」と要望した。
 知事会の一括交付金プロジェクトチームリーダーである古田肇岐阜県知事は、10年度の国の補助金や負担金計21兆円のうち公共事業関係を中心に約4兆円が一括交付金に衣替え可能との試算を紹介。その上で「地方財源が大幅に削減された三位一体改革の二の舞いになる懸念がある」と指摘し、地方への配分額を減らさないよう求めた。
 全国市長会長の森民夫新潟県長岡市長は「一括交付金で(地方から)いろいろな新しい政策が出てくる」と期待感を表明。一方で「一括交付金は過渡的な措置だ」として、最終的には国から地方に税財源を大幅に移譲する必要があるとした。全国町村会交付金の配分方法について「格差が生じないよう財政力の弱い町村に手厚く配分してほしい」と訴えた。
 戦略会議は6月に原案をまとめる「地域主権戦略大綱」(仮称)に、一括交付金の基本的な考え方を盛り込む予定。

 逢坂誠二首相補佐官は19日、使途を限定した地方自治体向けの「ひも付き補助金」を2011年度から使途が自由な「一括交付金」に変える改革に関し、継続事業に対する国からの「ひも付き補助金」は一定期間例外的に残す考えを明らかにした。
 逢坂氏は同日の全国知事会など地方側からの一括交付金に関する意見聴取で、「継続事業への補助金が一括交付金化された時に自治体の財政規模が小さければ小さいほど、影響の度合いが大きくなる。継続的な取り扱いをしていくことが重要だ」と述べた。

両記事では,2010年4月19日に開催された地域主権戦略会議によるヒアリング及び,同会議にて検討が進められている「一括交付金」に関する整備方針について,紹介.同会議同ヒアリングにおける提出資料等の詳細は,現在のところ,公開されておらず,把握できず,残念*1.公開後,要確認.
20010年3月31日に開催された第3回同会議に提出された資料「一括交付金に係る関係府省ヒアリング(3月16・18日)の概要」及び「一括交付金に係るヒアリングにおける関係府省の意見の整理」*2では,関係府省からの「ヒアリング」結果を踏まえた,「一括交付金」に関する意見を帰納的に整理され,一般制度に接近されつつある.両資料のうち「一括交付金に係るヒアリングにおける関係府省の意見の整理」を拝読すると,まず,「一般交付金化になじまない補助金等の類型を整理」する必要性の認識が示されており,その類型としては,「国が責任をもって取り組むべき重要な施策」「国が地方団体に対し「目に見える形で」交付することが必要なもの」「地方の自由度の向上につながりにくい義務的な正確を有する経費」「時間,金額,場所に偏りがある補助金」「災害関係予算等」*3が例示.このように,同資料では,「一括交付金」の「対象」としては,控除論的な整理の方針が示されている.
更に,同資料では,「一般交付金の制度設計」が示されている.まず「括り方」は,「投資的経費と経常経費」を「別々」とすること,「政策分やを越えた大括り」に関しては「一括化による流用の自由などのメリットに比較して,関係部署との調整の複雑化などの事務負担が増大しないかという観点からも慎重な検討が必要」*4との留保も示されている.「総額・配分」については,「政策目標を達成するため」の「総額の確保」とともに,「条件不利地域や財政の弱い地方団体に配慮した制度設計」*5ともあり,「財源保障機能」*6的な側面もまた,想定されているよう.「地方に自由度の拡大と国の関わり」に関しては,「事前の関与を抜本的に見直し,自己の関与とする方向」が原則ではあるものの,「国が政策対応の必要性を認め交付することから」「必要最小限の関わりを事前・事後に持つことは不可欠」として,「国」による「地方の適正な事務の執行を確保する方策を検討」するとの制度設計の必要性が指摘されるともに,自治体側に関しては,「地方は,地方自らの監査,評価体制の充実を図る必要」*7と自己規律的運用へ促しが,示されている.
第1記事では,地方六団体中執行三団体への意見聴取において,各団体からは,総額確保を図ること,過渡的な措置とすること,格差が生じないようにすること等が述べられたこと,また,第2記事では,「一括交付金化」になじむ「補助金等」であった場合でも,上記の制度設計における観点からか,「一定期間」「ひも付き」であることは継続方針を検討されていることを報道.今回の「一括交付金」への変更は,「いつくかの特定補助金を同じ分野別にグループ化して支給され,地方政府は,その指定された使途の範囲内では裁量的に使用しうる補助金」である,いわゆる「包括補助金(block grant)」*8化とも想起しつつも,同資料及び両報道を拝読すると,補助金と自由度との関係性が,今一つ整理できていない状況.よく考えてみたい.
ただ,関与や自由度は「アプリオリには決ま」るものではなく,「自治体がどのような政策意思を持つかによって,多義的・主観的に変わるもの」*9との分析を踏まえると,補助金の形態がいずれにせよ,その自由度の認識は,自治体側によるとも想定されなくもない.今後の審議状況は,要経過観察.

*1:内閣府HP(地域主権地域主権戦略会議)「会議開催状況

*2:内閣府HP(地域主権地域主権戦略会議会議開催状況地域主権戦略会議(第3回)(開催日平成22年3月31日(水)議事次第・配布資料)「資料3-1一括交付金に係る関係府省ヒアリング(3月16・18日)の概要」及び「資料3-2一括交付金に係るヒアリングにおける関係府省の意見の整理

*3:前掲注2・内閣府地域主権戦略会議(第3回)・資料3-2一括交付金に係るヒアリングにおける関係府省の意見の整理)1頁

*4:前掲注2・内閣府地域主権戦略会議(第3回)・資料3-2一括交付金に係るヒアリングにおける関係府省の意見の整理)2頁

*5:前掲注2・内閣府地域主権戦略会議(第3回)・資料3-2一括交付金に係るヒアリングにおける関係府省の意見の整理)2頁

*6:持田信樹『地方分権の財政学』(東京大学出版会,2004年)209頁

地方分権の財政学―原点からの再構築

地方分権の財政学―原点からの再構築

*7:前掲注2・内閣府地域主権戦略会議(第3回)・資料3-2一括交付金に係るヒアリングにおける関係府省の意見の整理)2頁

*8:佐藤進・林健久『地方財政読本第4版』(東洋経済新報社,1994年)153頁

地方財政読本 (読本シリーズ)

地方財政読本 (読本シリーズ)

*9:金井利之「国・自治体間関係における法制と財政」『ジュリスト』No.1387,2009.10.15,164頁

Jurist(ジュリスト)2009年 10/15号 [雑誌]

Jurist(ジュリスト)2009年 10/15号 [雑誌]