府庁旧本館(京都市上京区)で初めて結婚式が行われた。同館は都道府県の現役庁舎で最古の1904(明治37)年に完成し、国重要文化財になっている。府有資産の有効活用の一環で、さらに夏まで3組の予約があるという。
 使用料は80人収容の正庁(128平方メートル)と旧応接室(40平方メートル)がセットで4万円。控室1室を追加すると1万円の増額となり、個人設営なら半額になる。日時は土日祝日の午前9時と午後1時から選択でき、使用時間は4時間。今回の式を設営した大阪市のウエディングプロデュース会社「マリッジプランナー」によると、式・衣装・メーク・写真のセットで30万〜40万円という。
 伏見区出身で福岡市在住の新婦、保木裕子さんは「京都の景色でたくさんの写真を撮れ、思い出になる。第1号とは光栄」、新郎の大学研究員、坂口武久さんも「重文なので、ずっと残るのがうれしい」と話していた。
 同社によると、府内に縁のある府外の人を中心に月40〜50件の問い合わせがあるという。【太田裕之】

本記事では,京都府の旧本本館内で,結婚式が行われたことを紹介.2010年5月5日付の京都新聞においても報道*1されており,5月4日に挙式されたとのこと(見落としておりました).本記事は,同取組を,2008年12月7日付の本備忘録において項目立てを試みた本備忘録における妄想的・断続的観察課題である「庁舎管理の行政学」の構成のうち「第5章:財源としての庁舎」から紹介.
2009年4月14日付の本備忘録にて取り上げた栃木県旧本庁舎(昭和館)及び同年11月3日付の本備忘録にて取り上げた玉野市役所庁舎における,いわゆる(と,下名が勝手に名付けておりますが)「結婚式庁舎」としての取組.同府の同取組の詳細については,同府HPを参照*2
「結婚式に利用できる施設等」は,「正庁(128平方メートル)」,「旧応接室(40平方メートル)」「控室2部屋(40平方メートル〜90平方メートル)」.「貸付対象日」は,「原則として年末年始を除く土,日,祝日」と休日のみ.「施設貸付料金」に関しては,「ブライダル事業者等が設営等を行う場合」,「正庁(旧応接室含む)」と「2部屋」を含めて「60,000円」,一方で,「個人で設営等全て行う場合」には「30,000円」とされている(なお,上記の玉野市の場合には「無料」).ただし,流事項としては,「旧本館では飲食はできません」とあり,「披露宴等は別会場」とされている.
その「意匠」に関しては「築建は羅馬ルネサンス式を主とし其他を折衷したもの」と「府当局の説明」*3がなされて,「明治三〇年代までに建てられた府県庁舎のなかで,当庁舎が最も範とするに足る存在と目されていた」*4同府旧本館.
新・旧何れの庁舎においても該当するかとも想定されるものの,同府の取組が,「結婚式庁舎」としての「範」となり,今後の他の自治体における庁舎利活用として「政策波及(policy diffusion)」*5されることになるか,要観察.
なお,蛇足.一方で,2010年5月3日付の産経新聞では,同種の取組を「役所婚」と称され(社内結婚のようですね),「無料で募集しても人気は今ひとつ」*6とも報道.「波及」ならずとも,自治体行政観察者は,上記の機会を利用し,結婚式において庁舎を利用する他はないかと,下名個人的には思ったりもするものの,利用者側にもその「波及」を観察することは難しいのだろうか(利用できる機会の予定がある方は羨ましい限りです).

*1:京都新聞(2010年5月5日付)「京都府庁旧本館で初の結婚式 ルネサンス様式の建物が祝福

*2:京都府HP(文化・スポーツ重要文化財京都府庁旧本館)「府庁旧本館正庁における結婚式について

*3:石田潤一郎『都道府県庁舎』(思文閲出版,1993年)289頁

都道府県庁舎―その建築史的考察

都道府県庁舎―その建築史的考察

*4:前掲注3・石田潤一郎1993年:290頁

*5:伊藤修一郎『自治体政策過程の動態』(慶応義塾大学出版会,2002年)37頁

自治体政策過程の動態―政策イノベーションと波及

自治体政策過程の動態―政策イノベーションと波及

*6:産経新聞(2010年5月3日付)「京都で“役所婚”はいかが? 歴史的建築に人気