複数の市町村をまたいで民間の事業者が運行する「広域バス路線」について、事業者や県、市町村が連携して再編に乗り出す。利用者がピーク時の5分の1まで減少し、補助金頼りの路線が増えてきたためだ。利用実態などをもとに、自治体バスやコミュニティーバスなど短距離路線との重複区間を見直し、利用者の便を確保しつつ効率化を図る。(沼尻知子)
 県内のバス路線は2009年3月末現在で940路線。高齢者らにとって生活に欠かせない足となっている一方、人口の減少や自家用車の普及で、利用者数はピークだった1969年度の1億3398万人と比べて、2008年度は2916万人と5分の1まで減った。これに伴い赤字路線も増加し、約7割の路線にあたる694路線が国などの補助金を受けている。
 県はこうした現状を踏まえて、今後も同様に路線を維持するのは難しいと判断。五所川原―小泊(中泊町)や八戸―五戸など、複数の市町村を走る民間の広域バス路線の運行を見直す方針を立て、昨年度、利用者の数や乗車距離、赤字額などの調査を実施した。県によると、09年度補助金を受けた広域バス路線は47路線。利用者数と乗車距離に関する調査では、うち6路線が乗車の低迷と短距離であることを理由に、「効率化・再編が必要」とされた。また、経費削減と収入の仕組みの見直しが必要かの調査では26路線が対象にあがり、「ニーズに合わせたダイヤ編成や運行回数の調整」が求められた路線も27にのぼった。
 県は今年度、これら調査結果をもとに、市町村や事業者などでつくる「バス交通等対策協議会」を活用して路線再編に向けて協議を進める。具体的には、ひとつの市町村の中で運行している自治体バスなどと重複して運行している区間についてダイヤ調整や運行区間、本数の見直しを図る方針だ。県新幹線・交通政策課は、「本当に必要な路線を今後維持していくためにも効率化や再編が必要。調査結果に基づいて協議をしていきたい」と話している。

本記事では,青森県における広域バス路線再編の取組を紹介.同県における「路線バス対策検討事業」に関しては,同県HPを参照*1
同県が2010年3月に取りまとめた『広域路線バスの見直しの視点』を拝読すると,「中核的な医療機関への受診」「通学や高校への通学」「一定の規模を要する商業集積地(商業施設・金融機関等)へのアクセス」等「広域バス路線が果たす役割」が想定されるものの,「「広域交通」を支えるバス路線(広域バス路線)については,県内の多くの市町村で設置されている「地域公共交通会議」の場では,議論がほとんど交わされることなく,市町村にとって,「広域バス路線」は「国・県任せ」になっていることが多いのが現状」*2との現状認識のもと,「「国・県の補助路線」だから維持するのではなく,「生活支援のための路線」」として「守る」*3と,「補助」であることを要因としない「政策選好」*4を提唱されている.なるほど.
「自由車のない市民の移動が制約」*5されることにより,2010年5月13日付の本備忘録でも紹介した「買物難民」が生じることも想定されなくもない.そのためにも,県の機能の一つでもある「広域調整機能」*6が想定される分野ともいえそうか.本年度の学部演習における共通研究課題の一つでもある,自治体における公共交通に関する観察対象としても,都道府県の役割は,考えてみたい課題.

*1:青森県HP(交通・建設交通)「路線バス対策検討事業

*2:青森県HP(交通・建設交通路線バス対策検討事業)『広域路線バスの見直しの視点』(青森県,平成22年3月)4頁

*3:前掲注2・青森県(広域路線バスの見直しの視点)12頁

*4:金井利之「国・自治体間関係における法制と財政」『ジュリスト』No.1387,2009.10.15,164頁

Jurist(ジュリスト)2009年 10/15号 [雑誌]

Jurist(ジュリスト)2009年 10/15号 [雑誌]

*5:吉田樹「地域の暮らしと公共交通」荻原清子編著『生活者が学ぶ経済と社会』(昭和堂,2009年)211頁

生活者が学ぶ経済と社会

生活者が学ぶ経済と社会

*6:岩崎忠「タクシー新法と協議会(1)」(『自治実務セミナー』第48巻第12号,2009年12月号,38頁