大和市議会は23日、6月定例会本会議を開き、「ポイ捨てなどの防止に関する条例」の条例案を一部修正して可決。そのほか23議案を可決して閉会した。
 生活環境保全課などによると、ポイ捨て防止に関する条例案は、今回の定例会に市が提出。きれいな町づくりを目的に、ごみのポイ捨てや犬のふんの放置などを禁止している。原案では、市による勧告や命令などに従わない場合には2万円以下の罰金を明記していたが、「重すぎるのではないか」などと市議から指摘を受けた。
 3日の環境建設常任委員会で、罰則などを取り除く代わりに、事案の公表などを盛り込んだ市議による修正案が可決され、23日の本会議でも修正案が賛成多数で可決された。

本記事では,大和市における「ポイ捨てなどの防止に関する条例案」の可決について紹介.
本記事でも紹介されているように,案段階では,「禁止行為の違反者」に対して「罰則として2万円以下の罰金を適用」*1と記載.ただし,「罰則規定」の整備の目的は,「違反者を罰すること自体が目的ではな」いとして,「ポイ捨て等による迷惑な行為の未然防止及び抑止効果を活かす」ことがその主たる目的とも整理されている.そのため,「ポイ捨て等を行った者に対して,市による指導,勧告,命令に従わない場合に刑事罰である罰金を適用」を想定されている.
一方で,「賦課できる金額が一般的に低いこと,前科にならないこと,滞納処分の例による強制徴収が可能であるものの実効性が欠けている」ことから「違反行為の抑止力に欠ける傾向がある」*2との見解も示される過料.上記の目的からは,「抑止効果」のための「誘因政策」*3としての整備ではあるものの,本記事によると「重すぎる」との認識から,「公表」へと変更のうえ,可決.2010年6月23日付の毎日新聞を拝読すると,生駒市における「まちをきれいにする条例案」に関しては,「「慎重に議論したい」などの意見が出て継続審査」*4とも報道されている.「行動変容(behavior modification)や慣習変化(habitual change)」*5を促すための「構造的方策」をまずは「受け入れる」ことへの「二次的ジレンマ」*6も回避できない,とも整理ができそう.
一方で,2009年6月〜7月に同市が実施した「ポイ捨てに対する意識調査」では「ポイ捨てがされる」理由として,「ハガキ調査」(対象:全世帯(約70,300 世帯)及び市内32施設窓口(約2,200枚)に配布,回答者:8,581件(回答率11.8%))では「環境美化意識が低いから」が49%,「持ち帰るのがめんどうだから」が31%,「街頭調査」(対象:大和、中央林間、つきみ野、南林間、鶴間、相模大塚、桜ヶ丘、高座渋谷の各駅周辺の歩行者,回答者1056名)では「環境美化意識が低いから」が35%,「持ち帰るのがめんどうだから」が34%,「eモニター」(対象:eモニター登録者839 人,回答者:430名(回答率51%))では「環境美化意識が低いから」が42%,「持ち帰るのがめんどうだから」が28%,*7との心理的側面がその要因との認識も示されている.
「内発的動機付け」*8の「心理的方策」*9は従前より実施されていることが想定されなくはないものの,如何にこれらを内包した整備するかが「構造的方策」を導入,そして,実際に「行動変容」へと至ることになるかは,考えてみたい.

*1:大和市HP(市政情報市民参加「(仮称)大和市ポイ捨て等の防止に関する条例」骨子案について)「「(仮称)大和市ポイ捨て等の防止に関する条例」骨子(案)について」3頁

*2:鈴木潔『強制する法務・争う法務』(第一法規,2009年)95頁

行政上の義務履行確保と訴訟法務「強制する法務・争う法務」

行政上の義務履行確保と訴訟法務「強制する法務・争う法務」

*3:H.A.サイモン,V.A.トンプソン, D.W.スミスバーグ『組織と管理の基礎理論』(ダイヤモンド社,1977年)429頁

組織と管理の基礎理論 (1977年)

組織と管理の基礎理論 (1977年)

*4:毎日新聞(2010年6月23日付)「行政ファイル:生駒市がごみポイ捨て禁止条例案を取り下げへ/奈良

*5:藤井聡社会的ジレンマの処方箋』(ナカニシヤ出版,2003年)36頁

社会的ジレンマの処方箋―都市・交通・環境問題のための心理学

社会的ジレンマの処方箋―都市・交通・環境問題のための心理学

*6:前掲注5・藤井聡2003年:36頁

*7:大和市HP(市政情報市民参加「(仮称)大和市ポイ捨て等の防止に関する条例」骨子案について)「「ポイ捨てに対する意識調査のまとめ〜eモニター調査、街頭調査、ハガキ調査〜」3頁

*8:池田謙一「行政に対する制度信頼の構造」『年報政治学2010‐Ⅰ政治行政への信頼と不信』(木鐸社,2010年)17頁(amazonには,現在のところ,未掲載の模様のため,出版社に直接リンク)

*9:前掲注5・藤井聡2003年:23頁