神戸市がバブル景気の後半に構想した「第4次基本計画」(1995〜2010年度)で、盛り込まれた大規模開発の半数以上が現在策定中の「第5次基本計画」(11〜25年度)の素案に盛り込まれず、姿を消すことが分かった。六甲アイランド南の埋め立てや新たな地下鉄整備など少なくとも15事業、総額数兆円に上り、市は「高齢化と人口減少社会が到来し、成長型の開発の時代は終わった」と説明する。〈海、山へ行く〉のフレーズで大規模開発を進めて来た神戸市の都市経営は大きな曲がり角を迎えた。(木村信行)
 神戸市企画調整局の山本朋廣局長は「4次基本計画はダイナミックな成長期の計画を踏襲したが、現実とのずれが大きかった。5次の素案に大規模開発はなく、ハードからソフト重視へ神戸市の明確な転換点となるだろう」と話している。4次基本計画は、バブル景気後半の91年に市が策定を表明。市民や有識者の意見を聞いて93年に「基本構想」を固め、阪神・淡路大震災後の95年10月、正式決定した。「安全で快適な都市空間の形成」「次代を支える経済躍動のまち」など8部構成で、財政とは切り離して検討したため、インフラ整備に大規模事業が集中した。実際に完成したのは神戸空港(総事業費約2903億円)、地下鉄海岸線(同2350億円)、東部新都心(HAT神戸、同541億円)など約10事業だった。
 一方、4次基本計画で構想に上がりながら5次の素案で消えたのは、埋め立て事業の「六甲アイランド南」▽新神戸駅と市東部を結ぶ「東山麓トンネル」▽「地下鉄西明石西神線」のほか、人口増加を見越した北区の分区や、六甲山地下の音楽ホール、健康休暇村の建設など15事業で、総額数兆円に達する。過大な計画と実質経済成長率の見通しの甘さが響いた。計画では国の指標に基づき年平均2・8%と設定したが、実際はマイナス0・4%で、10年には170万人に増加すると見込んだ人口も154万人にとどまった。
 4次基本計画の策定メンバーだった大学教授は「バブルの余韻が残ったまま壮大な絵を描いた。震災後に見直しの機運もあったが、『復興後には再び成長する』という市の意見に押し切られた」と振り返っている。
基本計画(マスタープラン)
 都市計画法で定められた自治体の長期計画。前提となる基本構想には議会の議決が必要。神戸市は1965年の第1次計画策定後、都市づくりをマスタープランに基づいて進めてきた。第5次基本計画は、学識経験者や民間団体の代表者ら約90人で構成する審議会が今年11月に原案を公表、市民の意見を聞いた上で答申し、本年度中に市が決定する。

本記事では,神戸市における「第5次基本計画」の策定状況を紹介.「第5次基本計画」の審議状況については,同市に設置された神戸市総合基本計画審議会のHPを参照*1
同審議会に提出された「神戸づくりの指針策定にあたっての基本的考え方」を拝読すると,同市の「神戸市基本計画」は,「市の最高理念である「新・神戸市基本構想」の目標年次である平成37年(2025年)に向け」,「都市づくりの基本となる考え方や長期的・継続的に取り組むべき基本的な方向性」である「神戸づくりの指針」,「神戸づくりを戦略的に進めていくため」「平成27年度(2015年度を目標年次とする5年間の実行計画」である「重点施策計画」,「各区の個性や特性を活かし,生活に密着した分野を中心に,区民との協働により目標を共有し取り組んでいくための計画」である「各区計画」*2の3つの部分から構成されている.
これら3つの構成要素のうち,「重点施策計画」に関しては,「別途策定する行財政経営計画との整合性に留意した内容」*3とも特記.まさに,「「正の総合計画」=総合計画と,「負の総合計画」=行政改革プランとの,一体化・融合化」傾向性も観察され,「「正負一体の総合計画」に移行」*4しつつある計画とも整理ができそうでもあり,その「整合性」については,興味深そう.
「整合性」が図られる場合,本記事を拝読させて頂くと,前計画からの継続・不継続を通じても計画内容の整序が図られている模様.ただその場合,結果的には,同計画が「新規事業の登録簿」*5となる蓋然性も想定されなくもない.前計画からの継続掲載事業のみならず,不継続事業の掲載により「ダウンサイジング政策を効果的に策定し実施する上」での「行政計画」*6として策定される路線もまた想定されなくもない.同市の同計画の策定結果は,要確認.
なお蛇足.本記事,最後段に記載されております,「基本計画(マスタープラン)」の用語説明.「都市計画法で定められた自治体の長期計画」と記載されておりますが,本記事内容の基本計画と同法のマスタープランとは,計画違いであることは,ややご愛敬でしょうか.

*1:神戸市HP(市政情報計画・事業総合基本計画(マスタープラン))「神戸市総合基本計画審議会

*2:神戸市HP(市政情報計画・事業総合基本計画(マスタープラン):「神戸市総合基本計画審議会第1回総会(2009年7月27日開催))「資料番号3神戸づくりの指針策定にあたっての基本的考え方」4〜5頁

*3:前掲注2・神戸市(神戸づくりの指針策定にあたっての基本的考え方)4頁

*4:金井利之『実践自治行政学』(第一法規,2010年)49頁

*5:前掲注4・金井利之2010年:90頁

*6:森田朗自治体における課題解決と政策法務の役割」『ジュリスト』No.1382,2009.7.15,85頁

Jurist(ジュリスト)1382

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