京都や滋賀など近畿7府県が年内に設立を目指している「関西広域連合」(仮称)を広く知ってもらおうと、京都府は広域連合の必要性や概要を紹介するパンフレット(A3判、二つ折り)を作成した。府県独自のパンフ作成は初めて。広域連合に対する府民意見も募る方針で、府計画課は「少しでも府民が関心を持ち、広域連合の必要性を理解してもらえれば」としている。
 関西広域連合は救急医療や防災、環境など府県域を超えた行政課題に共同で対応するため、府県だけでつくる特別地方公共団体。国の出先機関廃止に伴う事務や権限の受け皿としても議論が進んでいる。パンフでは、関西全域で運航予定のドクターヘリ導入による救急医療の時間短縮効果を前面に打ち出し、広域連合で担う具体的事務や、道州制との違いについて一問一答形式で説明している。
 府は「事業内容が具体的に固まり、府議会との議論も本格化してきた。府民にも生活とのかかわりを説明し、意見を聞く必要がある」として、パンフを2万部印刷し、府庁や各広域振興局、府が主催する集会などで配布する。府ホームページでも意見を募り、今後の事業内容の検討にも反映させていく。7府県は今年1月に広域連合の設立案をまとめ、「年内の適切な時期」の設立に合意した。参加には規約案に対する各府県議会の議決が必要だが、各府県とも規約案を提出する見通しは立っていない。パンフに対しても、府議から「府民を巻き込んだ議論のきっかけになれば」との声が出る一方、「設立の利点を強調しているだけ」との指摘もある。

本記事では,京都府において「関西広域連合(仮称)」のパンフレットを作成されたことを紹介.同パンプレットに関しては,同府HPを参照*1
以前より,広域連合制度に関して,むしろ「広域連合制度って何?」という問いとして,下名個人の中で上手く整理が出来ていない事項が,その構成員による離脱と構成員間による追放の関係性.2008年9月8日付の本備忘録にて言及した「事務処理における制度的連携」論のように,広域連合制度においてもまた,制度的には,その構成員間での「離脱と発言の組み合わせ」*2という,発言と離脱可能性の選択肢は個々の構成員に,確かに付与はされている.そのため同制度は,「個別的であって普遍的ではなく,合意から生じる」一つの「自発的責務」*3が具現化された制度としても整理ができなくもない(本当か?).
ただ,同制度の運用においては,仮に,その「連帯」への発言や離脱選択肢の行使による制度の「不安定化」を所与とした制度運営(不安定であることで安定した制度運営)を指向するよりも,いずれも行使がなされないことによる「安定化」が指向される場合(不安定でないことで安定した制度運営),構成員間での「集団を閉ざ」されている「中で評判をまわすことによって不正直な人たちを仲間から追い出してしまう」*4ことに関しては,やや制度的困難性であることも想定されなくない.事務の共同処理に関する「エージェント問題」が生じた場合での「集団からの追放」*5の選択肢を容易に行使できることも制度的に確保しておくこともまた,肝要か.考えみたい.

*1:京都府HP(府政情報府政運営・行財政改革関西広域連合(仮称)関西広域連合(仮称)の検討)「パンフレット 関西の個性とパワーを結集「関西広域連合(仮称)」について検討しています 皆さんのご意見をお聞かせください」(京都府政策企画部)

*2:A.O. ハーシュマン『離脱・発言・忠誠』(ミネルヴァ書房,2005年)50〜59頁

離脱・発言・忠誠―企業・組織・国家における衰退への反応 (MINERVA人文・社会科学叢書)

離脱・発言・忠誠―企業・組織・国家における衰退への反応 (MINERVA人文・社会科学叢書)

*3:マイケル・サンデル『これからの「正義」の話をしよう』(早川書房,2010年)290頁

これからの「正義」の話をしよう――いまを生き延びるための哲学

これからの「正義」の話をしよう――いまを生き延びるための哲学

*4:山岸俊男・吉開範章『ネット評判社会』(NTT出版,2009年)43頁

ネット評判社会 (NTT出版ライブラリーレゾナント057)

ネット評判社会 (NTT出版ライブラリーレゾナント057)

*5:前掲注4・山岸俊男・吉開範章2009年:52頁