神奈川県は9月から、県庁版のフレックスタイムを導入する。30分単位で基準時間の前後最大90分まで、1カ月単位で勤務時間の繰り上げや繰り下げを行う。県によると、90分という時差出勤の幅は、全国の都道府県では最大という。
 目的は、仕事と生活の調和や、そこから生み出される柔軟な思考の県政運営への反映など。職員の申し出に基づき、所属長が業務上の支障などを勘案しながら、勤務時間を指定する。1日の勤務時間7時間45分は変えない。早出、遅出が各3パターンで、最も早いケースの勤務時間は午前7時〜午後3時45分、最も遅いケースが午前10時〜午後6時45分。
 一方、県は基準の勤務時間(午前8時半〜午後5時15分)以外は冷暖房をつけていないが、フレックスタイムを導入しても変更はしない。松沢成文知事は「(エネルギー費がかさむため)真冬でも午前8時半まで暖房をつけないので、コートを着たまま仕事をするかもしれない。それも覚悟で望むかどうかだ」などと話した。県は2005年度から、育児や介護を理由とした前後30分ずつの時差出勤を実施していた。

本記事では,神奈川県において「フレックスタイム」制度を導入されることを紹介.2009年10月14日付及び2010年7月25日付の両本備忘録にて取り上げた,同県における「勤務時間」管理の取組.同制度の詳細に関しては,同県HPを参照*1
同制度は,「職員の申し出」に基づき「所属長が業務上の支障等を勘案」されつつ,「当該職員の勤務時間」を「30分単位で最大90分まで」「1ヶ月単位で繰り上げ,または繰り下げる」制度.「早出」の場合には,「7時〜15時45分」,「7時30分〜16時15分」,「8時〜16時45分」の「3パターン」,「遅出」では「9時〜17時45分」,「9時30分〜18時15分」,「10時〜18時45分」と同じく「3パターン」として,「平成22年9月1日から」*2実施.2010年7月25日付の本備忘録にて言及した,勤務時間管理に関する職員自身の「行動様式」としての「勤務時間形成(office hours-shaping)」仮説からすれば,勤務時間及び執務時間の個々の職員レベルにより自律的的規制を通じて管理される模様.「職場組織の形成原理」としての「大部屋主義」*3と個々人の勤務時間との間をどのように「整え」*4られるのだろうか,
同制度では,「遅出」のみならず「早出」の選択肢を提供されていることも興味深い.同選択を通じて,定時退庁に伴う他の職員の方への,いわゆる「しわ寄せ」*5が生じる蓋然性に対して,「早出」により個々人の時間管理で対応が図られることも想定されなくはない.また,昨今,いわゆる「朝活」と称されるような,従来の「勤務時間」を前倒しで執務をされている(されてきた)職員の方に対しても,超過勤務は職務,早期勤務はサービスという二分的認識を超えて,同制度により「賃金不払い」*6の問題も解決されることにもなりそう.同制度の運用状況は,要経過観察(下名が仮に同県職員であったとした場合,個人的には,「6時〜14時45分」又は「6時30分〜15時15分」という,より朝型の「早出」の選択肢があると,よいなあと思わなくもありませんが).

*1:神奈川県HP(神奈川県記者発表資料2010年8月 神奈川県記者発表資料)「時差出勤の拡大(神奈川県庁版フレックスタイム)を実施します(平成22年8月3日 記者発表資料)

*2:前掲注1・神奈川県(時差出勤の拡大(神奈川県庁版フレックスタイム)を実施します(平成22年8月3日 記者発表資料))

*3:大森彌『官のシステム』(東京大学出版会,2006年)60頁

官のシステム (行政学叢書)

官のシステム (行政学叢書)

*4:真渕勝『官僚』(東京大学出版会,2010年)91頁

官僚 (社会科学の理論とモデル)

官僚 (社会科学の理論とモデル)

*5:安藤史江『コア・テキスト 人的資源管理』(新世社,2008年)163頁

コア・テキスト 人的資源管理 (ライブラリ経営学コア・テキスト)

コア・テキスト 人的資源管理 (ライブラリ経営学コア・テキスト)

*6:前掲注5・安藤史江2008年:166頁