100歳以上の高齢者の所在不明が全国で問題となっている中、半数以上の市区町村で、高齢者の孤独死などを防ぐための見回り活動などを定めた「地域福祉計画」を策定していないことが、厚生労働省の調べで分かった。
 計画を策定済みの自治体でも高齢者の所在不明の問題は起きているものの、地域や家族関係の希薄化への対応に不備がある現状が浮き彫りになった。社会福祉法では、高齢者や障害者らが地域で充実した生活を送れるよう、各市区町村が地域福祉計画を策定するよう求めている。計画には地域福祉への住民参加や福祉サービスの利用推進などを盛り込むよう定められている。
 厚労省の統計によると、2009年度末現在、全国1750市区町村の48・6%にあたる850市区町村が、民生委員や町内会による高齢者世帯の孤立化防止や、見回り活動などの支援策を盛り込んだ計画を策定済みだ。しかし、51・4%にあたる900市区町村は計画を策定しておらず、このうち626市区町村は策定の予定もないという。
 100歳以上の高齢者の所在不明問題を巡っては、根底に社会のつながりの減少などが指摘されており、長妻厚労相は「高齢者の独り暮らしをどう地域が見守っていくかは、以前からの課題だ。自治体と協議し、さらに取り得る手段があれば取りたい」としている。

本記事では,市区町村における「地域福祉計画」の策定状況を紹介.同紙の厚生労働省の「調べ」に基づく報道.同「調べ」に関しては,同省HPを参照*1
2010年3月31日現在では,「1750」市区町村の内,「平成21年度末までに策定終了」された自治体の策定状況(策定率・策定数)は48.5%(850市区町村)(市区と町村毎での内訳は,市区が69.0%(558市区),町村が31.0%(292町村)),「平成22年度以降に策定予定」にある自治体は,15.7%(274市区町村)(市区が15.4%(125市区),町村が15.9%(149町村)),一方で,「策定未定」とされた自治体は,35.8%(626市区町村)(市区が15.6%(126市区),町村が53.1%(500町村))*2の状況にあり,町村レベルでは69.0%が未策定であることが分かる.なお,同「調べ」の個別市区町村毎の「策定,改定状況」を拝読すると,「策定済み」の市区町村は,848市区町村(内,「改定済み」は194市区町村,「未改定」は655市区町村),「策定予定」は274市区町村,一方で,「策定未定」は625市区町村*3と,「策定済み」では2市区町村,「策定未定」では1市区町村が,上記総数からは減の状況にあるが,市町村合併によるものなのだろうか,要確認.
本記事では,「高齢者見回り計画」とも称されている地域福祉計画.同省による「市町村地域福祉計画の策定」に関する「技術的助言」*4を拝読すると,同計画に「盛り込む」ことが「求められている」「要援護者支援方策」としては,「要援護者の把握に関する事項」,「要援護者情報の共有に関する事項」,「要援護者の支援に関する事項」の3項目に大別されている.第一の「要援護者の把握に関する事項」のなかでは,「ひとり暮らし高齢者世帯などの高齢者の情報」に関しても記されており,具体的には,「住民基本台帳担当部局と連携し住民基本台帳を活用する等により把握する」こと,そして,「日中のひとり暮らし高齢者,病弱者を抱えている高齢者世帯等の情報等」の「行政のみでは把握することが困難な情報」に関しては,「民生委員児童委員等に協力を依頼することにより把握」することが記されている.そして,同機能を通じて「把握された要援護者情報」の「共有」に関しては,第2の「要援護者情報の共有に関する事項」にとして,「要援護者登録制度の創設について広報・周知した後」に「自ら要援護者名簿等への登録を希望した者の情報を収集する方式」としての「手上げ方式」,「福祉関係部局等」が「要援護者に直接働きかけ,必要な情報を収集する方式」としての「同意方式」,そして,「要援護者本人から同意を得ない場合」でも「地方公共団体の個人情報保護条例」において「保有個人情報の目的外利用・第三者提供を可能とする規定を整備」し「個人情報を他の関係機関との間で共有する方式」としての「関係機関共有方式」を参照しつつ,「共有方式」を同計画上に「明記」することを「求められている」,という.
「主体の拡大,多様化,主体間の相互作用,相互作用の様態,プロセスの多様化・変化という要素」をも内包した「ガバナンスの計画」*5たることを企図された同計画制度ではあるものの,策定された「「個別」の地域福祉計画」では「どこかの機能に特化せざるをえない状況になっている」*6との分析結果もあり,策定された場合であっても,当該計画において,規定される機能も限定的となる様相を窺うことができる.また,いわゆる「高齢者所在不明問題」に関しては,上記の個別市区町村の集計結果*7を拝読すると,足立区,杉並区のように,同計画を策定されている市区町村においても発生する状況を踏まえると,同計画の策定の有無という争点というよりもむしろ,「能動的情報資源調達」*8という機能が計画上に規定された場合であっても,実際に,計画上に規定された機能が,実際に機能するかが,更なる課題とも考えられなくもない.(計画上)規定された機能と(実際に)機能する機能との乖離は,悩ましい.

*1:厚生労働省HP(トピックス社会・援護局「地域福祉計画」ホームページ)「全国の市町村地域福祉計画及び都道府県地域福祉支援計画等の策定状況について(平成22年3月31日時点の状況調査結果)

*2:前掲注1・厚生労働省(全国の市町村地域福祉計画及び都道府県地域福祉支援計画等の策定状況について(平成22年3月31日時点の状況調査結果))

*3:厚生労働省HP(トピックス社会・援護局「地域福祉計画」ホームページ)「市町村別地域福祉計画の策定、改定状況について

*4:厚生労働省HP(トピックス社会・援護局「地域福祉計画」ホームページ)「市町村地域福祉計画の策定について」(厚生労働省社会・援護局長 社援発第0808 10001号 平成19年8月10日)

*5:荒見玲子「ガバナンスにおける計画 −市町村地域福祉計画を事例に」『年報行政研究44 変貌する行政』(ぎょうせい,2009年)142頁

変貌する行政―公共サービス・公務員・行政文書 (年報行政研究)

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*6:荒見玲子「自治体計画におけるガバナンスと情報−市町村地域福祉計画を事例に−」『公共政策研究』第9号,2009年,96頁

公共政策研究 第9号 小特集:政策と議論

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*7:前掲注3・厚生労働省(市町村別地域福祉計画の策定、改定状況について)

*8:城山英明「情報活動」森田朗編『行政学の基礎』(岩波書店,1998年)271頁

行政学の基礎

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