飲酒運転や文書紛失など県職員の不祥事が相次いでいることを受け、県は10日、新設した「職務改善調査監」による職場訪問や職員からの聞き取り調査を始めた。服務・倫理規程順守の取り組みや事務処理の現状を部署ごとにチェックし、再発防止を目指す。
 新設ポストの職務改善調査監は、1日付で長谷川英祐総務部次長が兼務。長谷川氏は不祥事を起こした本庁各課や出先機関を優先的に訪問し、所属長から事務処理の実態や飲酒運転禁止の取り組みを聞き取りする。8月中に計10部署を訪問する予定だ。
 この日は、所管する保健福祉環境事務所で文書紛失が相次いだ健康増進課を訪問。白石博昭課長から文書管理方法を聞き、課内に張り出された「飲酒運転撲滅」の張り紙などをチェックした。調査後、長谷川氏は「各部署を回る中で課題が見つかれば、一度集約し(解決方法を)フィードバックしたい」と話した。仕事量が特定の部署に偏り、文書紛失などの遠因になっていれば人員配置の見直しも検討するという。ただ、飲酒運転撲滅はモラル頼みの側面が強く、この日も課内で飲酒運転の禁止を呼び掛ける声かけ状況を確認する程度にとどまった。県人事課は「厳しく締め上げるだけでなく、職場のコミュニケーションの中で意識づけができれば」と話した。

本記事では,福岡県において「職務改善調査監」を設置され,職務調査を実施されたことを紹介.同調査に関しては,同県HPを参照*1
同資料を拝読すると,「不祥事の再発防止」に向けて「これまで様々な対策に取り組んできた」一方で,2010年度にも「飲酒運転や文書紛失など」の「職員の不祥事が発生」したことをこと踏まえて,2010年8月1日付で「職務改善調査監」を設置.同職が「本庁や出先機関の各所属を訪問」し「職員の服務・倫理規定遵守の取組」や「事務処理の状況について事情聴取や職場巡視を行い」あわせて「必要な指導・助言を行うこと」を通じて「適正な事務の確保」*2を図ることが目的.「公式型」の「能動的情報資源調達」*3の取組とも整理ができそうではあるものの,情報の質・量を想定すると,「非公式型」の調達方式による補完もなされているのだろうか,要確認.
「すべての腐敗や失敗が深刻な政治的危機となるわけではなく,軽微なものは水面下で相当数発生しているとみてよい」とされる「不祥事と呼ばれる事案」*4.「水面下で相当数発生」するとの分析を踏まえると,いわば,「不祥事」の日常性のなかで,「隠蔽は過去の方策」*5とされ,加えて,「不祥事を予防しきることは困難であるし,あるいは,予防水準を上げようと思えば,さまざまな費用が発生」*6することも観察されている.
内部における外部統制を通じた予防の効用には制約が観察される場合,「純粋な意味での内部統制システム」*7とも換言できそうな,「成員の行為の根底にある経験,思考,感情を統制することによって,成員に求められる努力を引き出し,方向づけようとする」「規範的統制」*8を整備し,「自らの活動の「文法」」*9として内面化する方策が結果的には,有効なのだろうか.考えてみたい.

*1:福岡県HP(記者発表資料職務調査の実施について)「職務調査の実施について」(発表日平成22年8月6日,総務部人事課)

*2:前掲注1・福岡県(職務調査の実施について)

*3:城山英明「情報活動」森田朗編『行政学の基礎』(岩波書店,1998年)271頁

行政学の基礎

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*4:手塚洋輔「だれが「更迭」されるのか」御厨貴編『変貌する日本政治―90年代以後「変革の時代」を読みとく』(勁草書房,2009年)163頁

*5:金井利之「不祥事の行政学」『自治体における公正で透明な事務執行をめざして』(財団法人日本都市センター,2009年)51頁

自治体における公正で透明な事務執行をめざして

自治体における公正で透明な事務執行をめざして

*6:前掲注4・金井利之2009年:55頁

*7:鈴木潔「「外部統制的内部統制システム―大阪市公正職務審査委員会」」前掲注4・所収・79頁

*8:ギデオン・クンダ『洗脳するマネジメント』(日経BP社,2005年)30頁

洗脳するマネジメント~企業文化を操作せよ

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*9:真渕勝『官僚』(東京大学出版会,2010年)16頁

官僚 (社会科学の理論とモデル)

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