宮崎市は18日、市の事業の必要性を市民や学識者に再点検してもらう外部評価(事業仕分け)を、3日間の日程で始めた。初日は21事業について協議。大雨・洪水警報などの気象情報を登録者に配信する「防災情報メール配信事業」を「不要(廃止)」、16事業を「見直しが必要」と判定し、「現行通り」でよいとしたのは4事業のみだった。
 外部評価は、今年1月に就任した戸敷正市長が公約に基づき初めて実施。2009年度から継続して行っている計66事業を3段階評価で仕分け、11年度以降の行政運営に生かす。公募で選ばれた市民ら21人の判定人は3グループに分かれて協議。1事業あたり5分間の説明を受けた後、質疑応答などを行い25分間で結論を出した。
 米の生産調整を後押しする「宮崎中央地域水田農業活性化センター支援事業」(事業費約893万円)については、判定人が「農協が主体となってできないのか」などと市側に質問。「事業規模や経費の縮減が可能」として、「見直しが必要」との結論を下した。

本記事では,宮崎市に置いて,事務事業の外部評価の取組が開始されたことを紹介.同取組に関しては,同市HPを参照*1
同取組では,「平成21年度の実施した事業で,平成23年度も引き続き実施する事業」のうち,「施設の管理事業は除く」,「市単独事業」,「22年度予算ベース」が「100万円以上」の「直接事業費」,「各部局において,直接事業費が高いものから15事業」の「基準を満たす事業のうち」から「判定人チームが事前に選定」した「66事業」を対象とされている.具体的な作業は,「7名で構成」されるチーム毎に,「事業の説明」を「5分程度」で行い.その後「質疑応答・議論」を「20分程度」を実施した後,「判定シートの作成」を「3分程度」,「判定」を「2分程度」の「1事業当り30分程度」の評価作業を行われている模様.「判定」においては,「各判定人」が「不要(廃止)」,「見直しが必要」,「現行どおり」の「区分のいずれかに判定し.最多数を占めた区分をチームとしての判定」として示され,「最多数を占めた区分が2つ以上あるとき」には「コーディネーターがチームとしての判定区分を決定」される手順とされている.これらの判定結果に関しては,「その判定結果だけではなく,議論の内容も踏まえた上で,各事業について担当部局において再度検討を行い,来年度以降の予算編成の参考」とされる方針にあるともいう.
大津市奈良市大阪市にて実施された「事業仕分け」後の状況について報道された,2010年9月18日付の読売新聞を拝読すると,「不要判定された事業のうち,大津市で約8割,大阪市奈良市では約6割が,その後復活」*2されたことが紹介.各市では「事業仕分け」の判定結果を踏まえて,2割から4割も実現されたのか,又は,2割から4割しか実現されていないと捉えるかは,同取組における当初における判定結果の取扱方針次第とも考えられなくもないものの,余り反映されていない場合には,同記事のように「骨抜き」と評する見方にも一定の説得力もありそうか.
一方で,本記事のように,判定結果を「参考」とすることを当初から明示された「外部評価」及び「事業仕分け」等の同種の取組では,その判定結果の反映度を如何に捉えるかは,難しいところ.恐らくは,同種の取組の主眼は,従来の内部評価に留まらず,「そもそも何が問題なのか,どこに解決すべき社会的対立的があるのか,何を意思決定すべきなのか」を表出する「問題の可視化」*3にこそ同種の取組の効用を見出すとすれば,同種の取組を「対話の場」*4と捉え,「チームとしての判定」においても,その見解の単一性・画一性に重きを置くことばかりではなく,その見解の「多数性」*5があることを示すことにその効果がありそうか.同種の取組がもつ効果について,もう少し考えてみたい.
なお蛇足.細かな点ではあるもの,本記事でも「外部評価」の文言の後に括弧書きで「事業仕分け」と紹介されており,同市の同取組を報道されている,2010年9月19日付の読売新聞*6及び同日付の朝日新聞*7の両記事においても,同様に記述されている.一方で,上記の同市HPの紹介では,「事務事業の必要性、有効性等について,外部の視点を活用して点検・議論し,より一層の改革改善を推進するため」に実施する同取組に関しては,「事務事業の外部評価」としての名称を用いられており,「事業仕分け」とは言及されてはない.外部評価の取組を敷衍される用語としては「事業仕分け」が各紙で用いられている状況を拝読すると,両取組には差異はなく,同取組に関しては,むしろ「事業仕分け」の用語が人口に膾炙されている,と解されているのだろうか,興味深い.

*1:宮崎市HP(市の案内市の概要行財政改革)「「事務事業の外部評価」について

*2:読売新聞(2010年9月18日付)自治体「仕分け」骨抜き、大津・奈良・大阪市6〜8割復活

*3:平川秀幸『科学は誰のものか』(NHK出版,2010年)230頁

科学は誰のものか―社会の側から問い直す (生活人新書 328)

科学は誰のものか―社会の側から問い直す (生活人新書 328)

*4:前掲注4・平川秀幸2010年:230頁

*5: ハンナ・アレント『人間の条件』(筑摩書房,1994年)20頁

人間の条件 (ちくま学芸文庫)

人間の条件 (ちくま学芸文庫)

*6:読売新聞(2010年9月19日付)「宮崎市、事業仕分け開始初日は不要1、見直し16

*7:朝日新聞(2010年9月19日付)「宮崎市で事業仕分けスタート