昨年秋に静岡県内で開催された国民文化祭の関連行事など、市民ボランティアが運営スタッフとして参加するイベントで、焼津市が2009年度、休日出勤してイベント関連業務に当たる職員たちへの時間外手当の経費として計900万円をかけていたことが分かった。市民ボランティアの多くは無償なだけに、不公平との指摘も出そうだ。
 16日の市議会9月定例会一般質問で、尾石昭夫氏(公明党議員団)の質問に対し、清水泰市長が答弁で明らかにした。清水市長によると、時間外手当の支給対象になったのは、国文祭の関連行事や花火大会、敬老会、成人式など市民が参画する「市民協働イベント」計29件で、延べ640人が休日勤務していた。同市人事課によると、30歳の職員が休日に8時間勤務すると、平均1万2000円の手当が出る。清水市長は答弁で「職員は担当業務として職務命令を受けているので、ボランティアとするのは難しい」と述べた。ある市幹部は中日新聞の取材に対し、「市民協働のイベントと言っても、多くの場合、役所がおぜん立てをして、運営の中心を担う。焼津市だけの問題ではなく、大きな自治体では、莫大(ばくだい)な費用が出ているのではないか」と話していた。

本記事では,秋津市における休日出勤に伴う手当の支給状況を紹介.
まずは,何よりも多くの実動を要する協働過程においては,「もともと資質と蓄積をもっている職員と,協動事業を展開できない職員」*1が想定される場合,「協動事業を展開できない職員」の人手もまた必要となり,これらの方々に「動機づける」ためには,「手当」による経済的な効用も想定されることも確かであり,そのため,手当支給には一定の有効性も考えられなくもない.
一方で,協働には,「公務住民」*2の側面を持つ住民との「協働」を通じて,行政単体で実施することによる財政を中心とした負担軽減という間接的効果を想定されることもある.しかし,協働の規模を大きるにつれて,当然に実動するもう一つの側である職員の皆さんの割合もまた増加し,あわせて,手当の増加を招くこととなる.2009年7月1日付の本備忘録にて言及したように,結果的には,設計段階の協働において企図された(財政的)負担軽減が,実施段階では,決して負担軽減には至らない,いわば「逆機能」*3も観察されることになる.協働が内包するディレンマの一つとして,悩ましい課題.

*1:金井利之「協動型自治体の組織・人事管理方策」山口道昭編著『協働と市民活動の実務』(ぎょうせい,2006年)126頁

協働と市民活動の実務 (新しい自治がつくる地域社会)

協働と市民活動の実務 (新しい自治がつくる地域社会)

*2:礒崎初仁・金井利之・伊藤正次『ホーンブック地方自治』(北樹出版,2007年)223〜224頁

ホーンブック 地方自治

ホーンブック 地方自治

*3:ロバート・K. マートン『社会理論と社旗構造』(みすず書房,1961年)181〜183頁

社会理論と社会構造

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