名古屋市は19日から、2011年度当初予算の編成に向け、市の各局が財政局に示した新規事業の要求額や縮小・廃止事業の一覧を公開する。予算編成のスタート時から全面的に情報を公開し、市民の意見を反映させるのが狙い。政令市では初の試みという。
 342の事業について事業名、概要、要求額、前年度予算額を公開する。このうち河村たかし市長の政策判断に委ねられる70億円の予算枠には、4倍の282億円(273事業)の要求が積み上がった。来年1月の財政局と市長の査定で絞り込み、2月上旬に予算案を公表する。
 市のホームページに掲載するほか、区役所で閲覧できる。12月17日まで市民の意見を募り、主に市長査定の参考とする。市民意見への市の考え方も同様に公表する。各局の要求段階での公開は、市民税減税の可否をめぐり、市民サービスの低下を事前にチェックしようと、6月議会で議員提案によって成立した条例に基づいている。市の11年度の収支見通しは、市民税10%減税継続の前提で、歳入が1兆224億円、歳出が1兆373億円。149億円の収支ギャップは主に行財政改革で埋め合わせる。

本記事では,名古屋市における予算編成の公表の取組を紹介.同取組に関しては,同市HPを参照*1
2010年6月に制定された,同市「予算編成の透明性の確保と市民意見の予算への反映に関する条例」*2の第3条第1項に基づき「各局からの予算要求の内容並びに財政局及び市長による査定の内容に関する情報を公開」されることとされており,同条第3項により,「情報の公開に当たって」は「市民にできるだけわかりやすい内容とする」ことに加えて,「重点的な取組事項」に関しては,「事業や施策の内容等に関して詳細な説明を加えるもの」とされている.「予算を広く一般に公開しなければならない」という「たてまえ」*3が,条例化を通じて,実質的にも公開,そして,「可視化」*4の取組のひとつ.興味深い.
同条例第5条第1項では,「予算に関する各局からの予算要求内容に対して」は「広く市民意見の募集に努める」ことが規定されており,更に,同条第2項により「市民から提出された意見」は「予算の編成に当たって活用するもの」とも規定されている.「査定の目安」において,「筋」,「横ならび」,「枠」*5という「勘」*6に依拠された部分もあるなかで,これらの「意見」が加味されるのことになるか,興味深い.

*1:名古屋市HP(市政情報財政・市債・宝くじ・ふるさと寄附金予算予算の概要平成23年度予算当初予算)「予算編成過程の公開について

*2:名古屋市HP(市政情報条例・規則・公報名古屋市例規類集)「予算編成の透明性の確保と市民意見の予算への反映に関する条例」(平成22年7月28日,条例第49号)

*3:松本英昭『地方公共団体の予算』(ぎょうせい,1979年)10頁

*4:大崎映二『歳入減少時代の市町村経営の実践的手法』(学陽書房,2010年)94頁

歳入減少時代の市町村経営の実践的手法

歳入減少時代の市町村経営の実践的手法

*5:前掲注3・松本英昭1979年:360〜361頁

*6:前掲注3・松本英昭1979年:362頁