八女市は26日、市民からの苦情を中立な立場で処理して行政に勧告する「総合オンブズパーソン」制度を来年1月から廃止する方針を発表した。制度は2003年に九州で初めて導入されたが、苦情件数が09年度はゼロ、本年度も2件と少ないため、費用対効果を考慮して決めた。廃止条例案を30日開会の市議会12月定例会に提案する。
 市総務課によると、オンブズパーソンとして選任された弁護士2人が隔週水曜午後に交代で苦情処理を担当。09年度までの苦情は計47件で05年度の10件が最多。運営費は計約4100万円、1件当たり87万円だった。市は「苦情には『市長への手紙』や各種行政相談などで対応できる」と説明している。

本記事では,八女市における「総合オンブズパーソン」制度の廃止の方針を紹介.同制度に関しては,同市HPを参照*1
同制度は市民に「代わって,市政の事務事業に関する苦情を調査し,簡易迅速に処理」されることを企図とした制度.「苦情の申出の方法」としては,「苦情の申出を行う本人またはその家族などの代理人」が「苦情申出書」に「住所,氏名,電話番号」,「苦情の申出の趣旨および理由」,「他の制度への手続きの有無」という「必要事項を記入」し,「オンブズパーソン事務局(総務課)」へ「持参」又は「郵送やFAX」で「申出」*2ることとされている.また,「オンブズパーソンの勤務日と勤務時間」に関しては,「勤務日」は「毎月第1・第3水曜日」,「勤務時間」は「13時〜17時」*3とある.以上の目的と手続が整備されている同制度同制度の「運用状況」を拝読させて頂くと,「平成21年4月1日から平成22年3月31日までの間」では「苦情申出」は「0件」であり,「前年度調査継続中のもの2件」については「31〜60日」で処理されたものが「1件」,「61〜90日」で処理されたものが「1件」*4と,本記事でも紹介されているように,制度利用が限定的である状況が窺える.
方や,同制度は,制度が利用されないこと,又は,制度利用件数が限られていることこそが,自治体全般にとっての「成果」としては価値を有するとも考えられなく,制度利用が限定的であることは必ずしも同制度の要否への判断へと結びつけることが難しいようにも考えられなくもない.そのため,申出件数が限られていることの要因としては,同自治体の事業への満足度が高まったという理解もできなくもない.ただ,一方で制度運用に基づく要因も考えられそう.例えば,制度に対する認知が低くなっているという制度周知の点,又は,同種の制度は「「運用の妙」に負う部分が大きい」*5とも観察されており,申出が予期される際に,当該案件に関して「実際にはより柔軟な形で運用がなされ」*6,いわば,「水際作戦」的に申出以前での対応,解決がなされているとの見立てもできなくもなさそうか.制度利用件数が限られている要因に関しては,要確認.

*1:八女市HP(暮らし相談)「オンブズパーソン制度

*2:前掲注1・八女市(オンブズパーソン制度)

*3:前掲注1・八女市(オンブズパーソン制度)

*4:八女市HP(暮らし相談)「オンブズパーソン制度の運用状況

*5:大橋洋一行政法学の構造的変革』(有斐閣,1996年)134頁

行政法学の構造的変革

行政法学の構造的変革

*6:伊藤智基「法執行の評価・見直し」『ジュリスト』No.1391,2009.12.15,142頁

Jurist(ジュリスト)2009年 12/15号 [雑誌]

Jurist(ジュリスト)2009年 12/15号 [雑誌]