自治体の決算状況を全国共通の様式で1枚にまとめた決算カードについて、多摩地区30市町村のうち9市町村が自らのホームページに掲載していない。非掲載自治体も、決算を説明した文章や決算書は載せており、決算カードは総務省のホームページにある。しかし、専門家は「まず市民にとって身近な自治体のホームページに掲載すべきだ」と苦言を呈している。
 ホームページ上で決算カードを公表していないのは、府中、調布、東大和清瀬、東久留米、武蔵村山市と、日の出、奥多摩町檜原村の9市町村。他の21市町では、過去3〜17年分を公表している。決算カードには、自治体の面積や人口、職員数など基本情報も盛り込まれており、自治体間のデータを容易に比較できる。決算カードをホームページ上で公表していない自治体の多くも決算情報自体は載せており、「決算カードも役所の情報コーナーなどに来れば見ることができる」などと説明する。
 調布市の場合、決算カードの情報を独自に「決算状況」としてまとめ、市のホームページで公表している。市財政課は「決算カードの内容をわかりやすくする必要があると考え、独自に公表している」と説明しているが、他市とは比較しづらい。ネット上で公表している自治体からは「多様な財政情報を色々な場所で公表していくべきだ」といった声が聞かれる。
 自治体財政に詳しいNPO法人「多摩住民自治研究所」(日野市)の大和田一紘理事長は、「決算カードを見るには知識が必要だが、行政任せにせず、自分たちの街に関心を持ってほしい」と指摘したうえで「掲載していない自治体は市民に財政の状況を伝えようという意識が低いのではないか。内容を理解するための解説などアフターケアもあった方がいい」と話している。

両記事では,東京都に位置する30市町村のうち9市町村において,各自治体のHP上に「決算カード」が掲載されていないことを紹介.
「3分間程度でその地方自治体の単年度の財政状況を把握できる」*1とも解される同カード.本記事を拝読させて頂くと,9市町村に関しては,同カードのもととなる各「市町村の決算統計である「地方財政調査表」」の調査・集約をされる「総務省自治財政局財政調査課」*2を,「主人(princial)」,そして,それらを提出する市町村を「従者(agent)」として見立てると,垂直レベルでの透明性では,上方(upwards)のみ,水平的なレベルでの透明性では内側(inwards)のみ*3への両透明性のパタンに属されているとも整理ができそうか.
ただ,総務省*4は勿論,東京都*5の何れのHPからも,9市町村の同カードの内容確認は可能であり,本記事にもある「他の市との比較」という観点に加えて,経年比較という観点からは,個別自治体における同カードの掲載に限らず,これらのHPからの確認を経ることも利便性が高いようにも考えられなくはない.
来年度は,学部の演習等で,自治体情報の透明度について考えみようとも思っており,利用度という観点からは,考えさせられる記事.

*1:高木健二『やってみよう,わがまちの財政分析』(公人社,2010年)14頁

やってみよう、わがまちの財政分析 (自治総研ブックス)

やってみよう、わがまちの財政分析 (自治総研ブックス)

*2:前掲注1・高木健二2010年・14頁

*3:Heald,Daivd.2006.‘Varieties of Transparency’Christopher Hood,David Heald(eds.)Transparency The Key to Better Governance: Oxford UP:28.

Transparency: The Key to Better Governance (Proceedings of the British Academy)

Transparency: The Key to Better Governance (Proceedings of the British Academy)

*4:総務省HP(政策統計情報:地方財政状況調査関係資料)「決算カード

*5:東京都HP(総務局行政部区市町村行財政資料集)「財政情報