山形県は新年度、職員が作成した公文書の概要や所在を容易に把握できる電子システムを稼働させる。行政文書を「民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源」と位置付ける公文書管理法が4月に施行され、自治体にも公文書の適切な管理を求める努力規定が発効するのに対応する。
 システムは、職員がさまざまな政策を進める際に作る「起案書」の作成も支援する。従来は職員のパソコンに文書のデータを保存していたが、県庁のサーバーに一括管理し、一覧表の作成などを容易にする。県の意思決定が済み、決裁を経た公文書には番号が付けられる。従来は各部署が番号を紙の台帳やパソコンソフトなどでばらばらに管理し、そもそも県全体で公文書作成件数がどのくらいあるのかも定かでなかった。
 現行の情報公開制度でも、開示請求があれば対応する公文書の存在は明らかにしてきたが、どのような公文書が存在するかを概観する「目次」は十分に整っていないのが実情。県は職員の半数近くが在籍する総合支庁の公文書もデータベース化し、保存年限の管理や廃棄作業の記録なども確実に行えるようにする。システムの構築費用は約1000万円。公文書の利用環境を地域全体で向上させるため、市町村と共同で運用する。このほか、マイクロフィルムで保存してきた1888年以降の県公報のデジタルデータ化も進める。県学事文書課は「市町村とも連携し、公文書の管理体制を整えていきたい」(五十嵐清人文書法制主幹)と話している。

本記事では,山形県における公文書管理の取組を紹介.「公文書の概要や所在を容易に把握できる電子システム」を導入される模様.下名個人的には,「1888年以降の県公報のデジタルデータ化」も大変有益.興味深い取組.ただ,同取組に関しては,現在のところ,同県HPでは把握できず,残念.公表後,要確認.
同県の「山形県文書管理規程」第39条第2項に基づき,「処理の完結した文書」は「文書分類記号表」「に定める分類の区分その他の事務内容の別による区分に従い」「該当の簿冊に編てつし」「又は簿冊に編てつすることが適当でないものにあつては」「他の適当な方法により整理」し「保管をしておかなければならない」*1と規定.また,同規程第40条の2第1項及び第2項では,「主務課長」は,同「分類に付す標準的な名称」を定めたうえで,「標準簿冊名等を系統的に整理した表」を「作成する」ことが求められている.ただ,本記事を拝読させていただくと,「どのような公文書が存在するかを概観する「目次」は十分に整っていないのが実情」とも報道されており,文書管理が困難な状況にあることが分かる.
同規程からは,「処理の完結した文書」の整理・保管の義務付けが規定されているとも解することができそうではあるものの,公文書管理が原則的・最終的には「応答」*2に資するものであるとすれば,「官僚制が非起案文書そのものを単体で管理対象と認識することは殆どない」*3とも観察されてはなかでは,まずは,「意思決定に至る過程を含めた文書作成を義務付ける」*4ことも肝要か.

*1:山形県HP(組織別一覧総務部学事文書課山形県例規集(平成22年11月30日現在))「山形県文書管理規程」(昭和43年4月1日,山形県訓令第7号

*2:原田久『広範囲応答型の官僚制』(新山社,2011年)102頁

広範囲応答型の官僚制 ―パブリックコメント手続の研究 (学術選書64)

広範囲応答型の官僚制 ―パブリックコメント手続の研究 (学術選書64)

*3:魚住弘久「行政文書と文書管理のあいだ―官僚制の論理と行動に関する一考察」『都市問題』第99巻第10号,2008年10月,57頁

*4:宇賀克也『情報公開と公文書管理』(有斐閣,2010年)429頁

情報公開と公文書管理

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