横浜市水道局は、水道使用量などを記載し各家庭に投函(とうかん)する「水道・下水道使用水量等のお知らせ」について、表面にシールが貼られている現在のタイプを10月から廃止することを決めた。個人情報保護を目的に2007年12月に全国初の試みとして導入したが、財政難を受け、シールで覆わない以前の1枚紙の形に戻す。経費削減効果は1年間で約4千万円という。
 「お知らせ」は、2カ月に1回の検針時に投函される。シールを貼ることで、使用水量、請求予定金額、その内訳(水道料金、下水道使用料)などを隠していた。料金の請求書はその3、4日後に届く。しかし、シールを貼ると経費は年間約6千万円。貼らなければ約2千万円に抑えられる。シール式に追随した自治体はなく、水道局によると「おそらく横浜市だけ」。東京電力東京ガスの検針票も1枚紙だ。水道局が行ったアンケートでは、9割の市民が「(シールは)なくてもよい」などと回答。市会でも議論され、10月から1枚紙に戻ることになった。水道局によると、4千万円の財源が確保できれば、水道管(内径15センチ)が約3・9キロ分購入できるという。
 水道局では、財政難に加えて節水技術の向上から水道使用料金収入が減り続けており、歳入確保と歳出抑制が課題となっている。さらに、高度経済成長期に造られた水道管が一斉に更新の時期を迎えており、11年度予算案でも28億円の経費削減に取り組んだ。市内の水道管は、全部で約9千キロ。40年の耐用年数を超えているのは、うち約700キロという。

本記事では,横浜市における「水道検針票」に用いられていた「シール」の廃止の方針について紹介.同票へのシール利用の取組に関しては,同取組開始時に関する,2007年11月27日付の記者会見の同市HPを参照*1
「個人情報を保護するため」に,「水道メーター検針の結果」を利用者に「案内する」「水道・下水道使用水量等のお知らせ」の「使用水量,請求予定金額,内訳(水道料金,下水道使用料)」に関して,「シールでカバーする方式」(シーラー方式)の「用紙」を採用される同取組.同取組を通じて,「これまでは個人情報が「むき出し」になっていたこと」ことにより「ポストから風で飛散したり.落としたりしたとき」には「ただちに他人の目に触れる流失事故」になっていたとの認識から,「シーラー化した新用紙に変えること」で「はがして中身を見ようとしない限り,流失」*2することを回避する効果を企図されていた模様.
一方で,本記事を拝読させて頂くと,シーラ方式の場合「約6千万円」の年間費用を要するものの,シーラ方式を採用しない場合には「約2千万円」での年間費用となるという.なるほど.一重に経費面が問題とされる場合,「約6千万円」には至らぬとも,同市では,同お知らせ用紙の紙面への「広告事業」*3として「財源は自ら稼ぐ」ことも,同取組の持続には一つの案か,と思いつつ,同市HPを更に拝読させて頂くと,「募集要項」は掲載されていないものの,既に「広告主募集案内」*4についても募集されきた模様.
シールを貼るという「不可視化」*5を通じて,「個人情報」の「流失」という「過誤」の虞への対処法は,「過誤」の顕在化がない場合には,従来の方式への再帰が「可逆」なものとしても整理ができるのだろうか,考えてみたい.

*1:横浜市HP(水道局)「【記者発表】水道料金・下水道使用料の個人情報をシールでカバー

*2:前掲注1・横浜市(【記者発表】水道料金・下水道使用料の個人情報をシールでカバー)

*3:石井健一郎「財源は自ら稼ぐ! 横浜市広告事業のチャレンジ」『都市自治体の収入確保策 増収に向けた多様な取り組み』(財団法人日本都市センター,2009年)159頁

都市自治体の収入確保策―増収に向けた多様な取り組み―

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*4:横浜市HP(水道局)「水道局広告主募集案内

*5:手塚洋輔『戦後行政の構造とディレンマ』(藤原書店,2010年)288頁

戦後行政の構造とディレンマ―予防接種行政の変遷

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