大阪市市営住宅の入居希望者が抽選で11回落選すれば、特別枠でほぼ希望通りの住宅に入居できる優先制度を見直し、早ければ2012年秋から特別枠でも抽選を実施する。
 同制度による入居が募集枠の3分の1を占め、母子世帯や新婚向けなど別の優先入居枠を圧迫。バランスを欠いていると判断したためだ。同制度は1973年に創設。市営住宅の定期募集は年2回で、落選回数が11回に達するまで最短でも5年半かかることを考慮、多数回落選者の救済措置と位置付けてきた。築年数が浅いなど好条件の住宅を狙って、あえて落選回数を増やすケースも多いとみられる。

本記事では,大阪市における公営住宅への落選者特別措置制度の見直し方針に関して紹介.同方針の検討は,同市に設置されている「大阪市営住宅入居監理委員会」における審議を参照*1. 
同制度は,「昭和48年度から実施」されている,「抽選に外れて入居できない多数回の落選実績を有する住宅困窮者を救済するため優先選考」*2する仕組み.具体的には,「11回以上の落選者」に対して「順位抽選のうえ登録し,空家住宅を斡旋」し,現状では「登録者」は「1000〜1200件程度/年」となり,同「制度に基づく入居者」は「1000件程度/年」*3にあり,「他の優先選考の募集件数に比べて登録件数が圧倒的に多い」*4状況にあり,「定期募集等による公募戸数」の「募集枠の約1/3を占める」*5にあるという.
また,他の自治体における「落選回数に着目した優先選考制度」*6も整理されており,同資料を拝読させて頂くと,「倍率優遇を実施」されている政令指定都市が7市(札幌市,千葉市横浜市名古屋市広島市北九州市,福岡市),「一定の落選回数以上で一律の倍率優遇を実施」されているのが3市(仙台市さいたま市川崎市),「一定の落選回数以上の者を対象とする別枠募集を実施」しているのが2市(京都市(過去11回以上),名古屋市(最近6年間の募集回数20回以上で65歳以上)),「一定の落選回数以上の者を対象に募集戸数の一定割合で再抽選を実施」しているが1市(神戸市)と,大阪市型の制度を採用されている自治体は,京都市名古屋市のみとなる.また同資料では,「多数回落選にかかる優先選考を実施していない」自治体も整理されており,広域自治体ではあるものの,大阪府と東京都も紹介されている.
本記事を拝読させて頂くと,「築年数が浅いなど好条件の住宅を狙って,あえて落選回数を増やすケース」もある,という.同要因のみに特定化されるものであるかは判然とはしないものの,以上の状況を踏まえて,今後は,本記事にて紹介されているように,「11回落選者特別措置制度を引き続き優先選考対象」とされつつ「登録制」から,「抽選による募集制度」*7を導入される方針の模様.「「住宅の保障機能」の重要性」の観点から「公営住宅・公的住宅等の役割をむしろ強化していく」*8見解も指摘されるものの,まずは,現行の利用手続の実施状況も要確認.

*1:大阪市HP(審議会情報各種審議会等))「大阪市営住宅入居監理委員会

*2:大阪市HP(審議会情報審議会等開催のお知らせ一覧都市整備局の審議会情報)平成23年度 第1回大阪市営住宅入居監理委員会 会議要旨)「資料4 「参考資料」市営住宅募集方法(優先選考)のうち11回落選者特別措置制度の現状と課題と見直しについて」1頁

*3:大阪市HP(審議会情報審議会等開催のお知らせ一覧都市整備局の審議会情報)平成23年度 第1回大阪市営住宅入居監理委員会 会議要旨)「資料3 11回落選者特別措置制度の見直しについて

*4:前掲注2・大阪市(資料4 「参考資料」市営住宅募集方法(優先選考)のうち11回落選者特別措置制度の現状と課題と見直しについて)2頁

*5:前掲注2・大阪市(資料4 「参考資料」市営住宅募集方法(優先選考)のうち11回落選者特別措置制度の現状と課題と見直しについて)4頁

*6:前掲注2・大阪市(資料4 「参考資料」市営住宅募集方法(優先選考)のうち11回落選者特別措置制度の現状と課題と見直しについて)7頁

*7:大阪市HP(審議会情報審議会等開催のお知らせ一覧都市整備局の審議会情報)平成23年度 第2回大阪市営住宅入居監理委員会 会議要旨)「資料1 市営住宅公平・公正な管理の推進に向けて

*8:広井良典『創造的福祉社会』(筑摩書房,2011年))91頁