岩国市は、名誉市民の称号を贈るための条例案を30日開会予定の市議会定例会に提案する。合併前の旧8市町村のうち、5市町が定めていた名誉市民・町民の条例は合併で失効している。市は旧市町の名誉市民・町民計17人を引き継がない方針で、条例案の可決後、最初の選定が名誉市民の第1号となる。
 条例案によると、名誉市民は市の発展や学術、文化などに功績があり、市民の尊敬を集める人が対象。市長が議会の同意を得て称号を贈る。故人へも追贈できるが、条例制定前に亡くなった人は対象としない。市総務課は「市民に郷土愛や古里への誇りを呼び起こす効果もある」と説明する。岩国市は2006年3月の8市町村合併で誕生。合併前の旧岩国市は作家宇野千代さん(故人)ら12人に名誉市民、旧由宇、玖珂、周東の3町は計5人に名誉町民の称号を贈っていた。旧錦町にも条例はあった。法定合併協議会は名誉市民について「新市で検討」としていた。岩国市総務課は、旧市町の称号を引き継がない方針について「贈られた事実や価値は失われず、顕彰活動に影響はない」と説明している。

本記事では,岩国市において名誉市民条例の制定方針を紹介.
「岩国地域8市町村合併協議会」の「協定項目」を拝見させて頂くと,各自治体の「慣行の取扱」に関しては,「各種イベント」は「原則として現行のとおり引き継ぐ」ことが確認されたものの,「市章」「市民憲章,市の木,花,歌等」とともに,確かに「表彰制度」に関しては「新市において新たに定める」*1と確認されている.同確認を受けて,本記事にて紹介されているように名誉市民という表彰に関する条例を制定される模様.
「今日の慣行は過去に根があり,ある組織の今日の慣行の背後には以前の時期から残った価値及び理解が層になっている」「堆積化」*2するものとすれば,表彰「制度」の継続及び非継承と「名誉市民・町民」の継承及び非継承とは,必ずしも一致しないようにも思わなくはなく,新条例制定後に「旧市町の名誉市民・町民計17人」を「名誉市民」として改めて表彰することをも考えられそう.ただ,本記事を拝読させて頂くと,同条例では「故人へも追贈できる」一方で,「条例制定前に亡くなった人は対象としない」という二つの要件が規定されるようでありで,後者の要件に抵触することで,「名誉市民・町民」から「名誉市民」への移行はなされない模様.表彰という慣行の取り扱いは,悩ましい. 

*1:岩国市HP(合併までの過程 岩国地域8市町村合併協議会合併協定項目)「岩国地域8市町村合併協議会 協定項目 提案確認状」2頁

*2:B.ガイ ピータース『新制度論』(芦書房,2007年)168〜169頁

新制度論

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