兵庫県が制定を目指す受動喫煙防止に向けた条例で、県は8日、分煙が必要となる見込みの大規模宿泊施設や飲食店などに対し、喫煙室の設置費用の助成や低利の融資制度を創設する方針を固めた。分煙対策への助成制度は自治体では例がないという。
 県は、今年7月に有識者らの検討委員会がまとめた報告書を基に、条例の骨子案を検討している。宿泊施設のロビーや飲食店を原則禁煙とするなど「全国一厳しい」とされる当初案に業界団体などから強い反発があり、義務付ける内容を一部緩和するとともに、経費面の支援が必要と判断した。対象は、骨子案で禁煙を義務付けるが、暫定措置として分煙を認める大規模な旅館・ホテルのロビー、客席面積の広い飲食店などが中心となる見通し。
 県によると、規模にもよるが、喫煙室の設置には約300万円が必要。厚生労働省は今年10月から、分煙に取り組む事業者に設置費用などの一部助成を始めており、こうした制度も踏まえ今後、県独自の支援内容を詰めるという。井戸敏三知事は「助成や低利融資を併せて使ってもらい、設置当初の費用負担がないようにしたい」としている。
(井関 徹)

本記事では,兵庫県における受動喫煙防止に関する条例案の検討状況に関して紹介.
2011年5月26日付の本備忘録にて記録した同県による同条例案の検討.「模倣プラスアルファ」の「政策移転」*1としても興味深い同県の条例案.同本備忘録以降では,同県で設置されていた「兵庫県受動喫煙防止対策検討委員会」では,2011年7月29日に「兵庫県受動喫煙防止対策検討委員会 報告書」*2を取りまとめられている.
同報告書では,「条例による規制以外の実効性のある対策」,「受動喫煙の防止のための条例を制定し規制することの両面から、どのような対策をとり得るかについて検討を行った」結果,「受動喫煙が健康に悪影響を及ぼすこと」,「その悪影響が社会的に認知されているにもかかわらず十分な対策が進んでいないこと」から,「実効性の高い対策として」「条例による規制が必要との意見が多数を 占め」*3た,として,受動喫煙防止に関する条例化を提案.
同報告書では,規制区分は「すべての施設に禁煙を義務付けることが適当」*4との認識が示されていることが特徴的.ただ,「やむを得ず,禁煙とすることができない場合」には「禁煙に至るまでの暫定的措置」として,「喫煙室」の「設置等による「分煙」を認める」とする.分煙施設の設置に関しては,同報告書では,同委員会のなかでは「分煙設備の設置には多額の設備投資が必要となることから」,「県として,貸付や補助等の制度を設けるべきとの意見もあった」*5と少数意見的に記載.
原則的には自己負担による設置が想定されていたことが窺えそうではあるものの,本記事で紹介されている「喫煙室の設置費用の助成や低利の融資制度を創設する方針」は,「行動変容」*6を促すためか,むしろこれらの意見を反映され,制定される模様.実際の条例案の設計段階での,条例案の内容も要経過観察.

*1:秋吉貴雄,伊藤修一郎,北山俊哉『公共政策学の基礎』(有斐閣,2010年),254頁

公共政策学の基礎 (有斐閣ブックス)

公共政策学の基礎 (有斐閣ブックス)

*2:兵庫県HP(暮らし・環境健康・福祉健康づくり兵庫県受動喫煙防止対策検討委員会報告書(最終版))「兵庫県受動喫煙防止対策検討委員会 報告書

*3:前掲注1・兵庫県兵庫県受動喫煙防止対策検討委員会 報告書)5頁

*4:前掲注1・兵庫県兵庫県受動喫煙防止対策検討委員会 報告書)8頁

*5:前掲注1・兵庫県兵庫県受動喫煙防止対策検討委員会 報告書)8頁

*6:肥沼位昌著・出石稔監修『あのごみ屋敷をどうにかしてと言われたら』(第一法規,2009年)14頁

あのごみ屋敷をどうにかしてと言われたら (自治体職員のための政策法務入門 5 環境課の巻)

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