県は、6カ所の合同庁舎に入っていた県環境・総合事務所を来年度から廃止する。県は本年度中に、環境・総合事務所を廃止する条例改正案を県議会に提出する方針。4日の県議会地方分権・行財政対策特別委員会で示した。
 組織を簡素にし、財源不足に対応する行財政改革方針の一環。廃止するのは▽南部(草津市)▽甲賀▽東近江▽湖東(彦根市)▽湖北(長浜市)▽高島の県環境・総合事務所。所長は災害時に、災害対策地方本部の本部長も担う地域防災監も兼務してきたが、廃止後はほかの県出先機関などでする。
 県環境・総合事務所にあった総務課はほかの県出先機関や本庁に集約する。環境保全を担当してきた環境課は、河川や琵琶湖に影響を与える油漏れなどに即応する必要があり、引き続き合同庁舎で業務する。ただ南部と甲賀、湖北と湖東の環境課は、統合して広域化業務を担う方向で今後、市町と協議を進める。大規模な県出先機関の廃止は2009年度以来。当時は、県出先機関を統括する立場の地域振興局を廃止するなどして、85人を削減した。県は14年度までに120人以上の削減を掲げている。 (木原育子)

本記事では,滋賀県における出先機関の再編方針を紹介.
2008年10月5日付の本備忘録にて記録した同県に設置されていた「地域振興局制度」の廃止の取組.同県では,同方針に至るまでに,2008年8月に「総合地方機関のあり方について (論点整理)(案) 」*1を取りまとめられている.同論点整理を改めて拝読させて頂くと,下名が来年度に向けて取り組んでいる観察課題の一つである,都道府県レベルでの地域出先機関の機構と機能再編の現状と論理,を考えさせて頂くことにもなり,興味深い.
前提としては,同県では,2001年4月に「6つの地域振興局を設置」.同地域振興局では「各地域振興局の圏域の一体的,総合的発展を図るため,圏域内の総合的な地域経営を行う」「地域経営機能」,「部局横断的,機動的な対応を行うため,組織を地域振興局として一体化し,強化された」「総合調整機能」,「圏域内の市町の行財政システムの構築の支援,政策立案の補完および助言の機能ならびに市町合併の推進の支援」のための「市町への支援機能」 ,そして,「サービス提供機能」「危機管理機能」*2を担うことが予期されていた.
同論点整理を拝読させて頂くと,これらの諸機能への評価が示されている.まず「総合調整機能」に関しては,「本庁各部の意向に従い執行される事業が関係する場合は振興局等での調整には限界があった」との認識とともに,加えて「地域で対応できる課題については管内の調整機能は向上し成果も出せた」との整理,「圏域振興機能」に関しては,「圏域の総合的な地域振興プランを作成」し「展開したということ自体は評価」を示しつつも,「プランの実施については予算,権限が限定され総合的な地域経営には至らなかった*3との整理,「地域課題の解決」や「まちづくり機能」に関しては「地域予算による圏域振興事業」を行いつつも「予算,内容が限定的で,スポット的事業とならざるを得なかった面はある」としつつも「所期の成果が上げら,市町・住民の主体的取組へとつながった」*4との整理をされている.
これらの現状認識を踏まえて「現在の形態は,総合調整機能および危機管理機能については有効に機能を発揮する場面もあるが,必ずしも総合地方機関の形態でなければならないものではない」とし,「行政サービス提供機能では,行政分野ごとに課題や行政客体が異なることから,専門性の確保やサービス提供の最適な方法も異なり,現在のような総合地方機関の形態は,見直しを図らざるを得ない」との認識に至り,最終的には「総合地方機関の形態にとらわれず,行政分野ごとのサービス提供の形態を構築しつつ,総合調整機能,危機管理機能を発揮できる体制や仕組みを検討することが必要」*5と整理に至っている.
同内容をもとに,同県では,2009年度の機構整備の際に「総合地方機関の見直し」を実施.その内容は,「総務、防災・危機管理部門」に関しては,」「所管区域内の県行政にかかる総合的な実施」「円滑な処理を促進」「事務所間調整など横断的な総合調整」を図るために県内の「6地域に環境・総合事務所」*6を設置.そして,2008年1月24日付の本備忘録にて区分した,都道府県における出先機関の見直し路線の類型である,区域再編路線と機能再編路線の2つのうち,後者の路線として個別機能分野毎での機構再編とも整理ができそうな機能毎に,「県税事務所」を「4事務所」,「森林整備事務所」を「4事務所」,「健康福祉事務所」を「6事務所」,「農業農村振興事務所」を「6事務所」,「土木事務所」を「8事務所」に「再編・集約」*7されている.
本記事では,これらの出先機関のうち「県環境・総合事務所」を「組織を簡素」「財源不足に対応」する目的から廃止される方針であることを紹介.ただし,「環境課」は残置され,いわゆる「環境事務所」として設置される,個別機能の再編路線が採用される模様.地域レベルでの方や,同事務所に企図されていた機能である総合調整機能への「論点整理」に関しては,本記事のみでは窺うことができない.仮に,上記の論点整理に倣うとすれば,地域レベルでの「それぞれの観点から「調整」を進めた作業の総和」*8とされる「総合調整」の「調整には限界」との問題認識も,機構改正を経た後でも継樹されたのだろうか.要確認.同県の取組方針や2011年9月18日付の本備忘録にて記録した岐阜県における振興局廃止の方針からは,地域レベルでの,総合調整機能への機構的な集約化よりも,むしろ,個別機能毎への機構的な分散化傾向も窺えそう(かな).他の都道府県レベルでの出先機関の現状と制度選択の論理も含めて,要観察.

*1:滋賀県HP(県政における重要・基本情報の提供平成20年8月5日定例県政経営会議の概要)「総合地方機関のあり方について (論点整理)(案)」(滋賀県,平成20年8月)

*2:前掲注1・滋賀県(総合地方機関のあり方について (論点整理)(案))1頁

*3:前掲注1・滋賀県(総合地方機関のあり方について (論点整理)(案))1頁

*4:前掲注1・滋賀県(総合地方機関のあり方について (論点整理)(案))2頁

*5:前掲注1・滋賀県(総合地方機関のあり方について (論点整理)(案))3頁

*6:滋賀県HP(組織から探す人事課)「平成21年度組織・機構の整備概要

*7:前掲注6・滋賀県(平成21年度組織・機構の整備概要)

*8:牧原出『行政改革と調整のシステム』(東京大学出版会,2009年)239頁

行政改革と調整のシステム (行政学叢書)

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