京都府は今秋、介護保険サービスを10年以上利用していない90歳以上の高齢者に対し、「報奨金」として地元商店街で使える3万3千円分の商品券を贈呈する。健康維持に努める元気なお年寄りに特典を与えることで、介護保険給付費の抑制を図る狙いもある。府によると、全国初の取り組みという。
 府内市町村では、介護保険事業者へ支払う給付費が増加している。65歳以上が支払う府内平均保険料は月額4332円で、10年前の1・5倍に跳ね上がり、全国平均より4%高い。サービスを利用してない高齢者から不満の声も出ている。このため、健康な高齢者に保険料を「返還する」との趣旨で商品券の配布を決めた。商店街や商工会などが1人3万3千円分の商品券を発行し、府が同3万円で買い取り、対象者に配布する。高齢者は居住する市町村の商店で買い物ができ、地域の商店街活性化にもつなげていく。すでに、福知山市京丹後市では、福祉施設でボランティアを行った高齢者に介護保険料の一部を返還する制度を設け、元気なお年寄りを支援している。府によると、対象者は約9500人で新年度当初予算案に3億3千万円を計上した。13年度以降も継続する方針で、府高齢者支援課は「お年寄りの健康維持と地元経済発展の一石二鳥の事業」としている。

本記事では,京都府における介護保険サービスの未利用者への報奨金給付の取組方針を紹介.
同取組は,「介護保険サービスを利用していない高齢者やその家族の長年にわたる健康維持の努力や家族介護の負担等に報いることを目的」に,「健やか介護保険返戻金(仮称)事業費」*1を実施するものであり,4億5,200万円を要求されている(本記事で紹介されている「3億3千万円」は査定後の予算案なのでしょうか,要確認).
介護保険制度の導入に伴い.「サービス利用への権利意識」*2が高まったとしばしば指摘される.その権利意識の具体的な内容の把握は必要ではあるものの(既に把握されている調査もあるのかなあ),本記事を拝読させて頂くと「サービスを利用してない高齢者から不満の声」を反映され(でしょうか),「介護保険サービスを10年以上利用していない90歳以上の高齢者」「地元商店街で使える3万3千円分の商品券を贈呈」される模様.同取組は,都道府県レベルでの業務なのかなあ,とは思わなくはないものの,仮に利用しない場合には,例えば保険者単位での現行の第1号保険料に関して「所得段階保険料」*3から,いわば,健康段階保険料に改めることが最も報償に直結するようにも思わなくもない.同取組が,本記事冒頭でも紹介されている「介護保険給付費の抑制」にも結び付くか,今後の同府の取組は要経過観察.

*1:京都府HP(財政・税京都府予算の概要平成24年度当初予算案概要)「平成24年度当初予算 主な要求事業」6頁

*2:結城康博『日本の介護システム』(岩波書店,2011年)15頁

日本の介護システム――政策決定過程と現場ニーズの分析

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*3:堤修三『介護保険の意味論』(中央法規,2010年)95頁

介護保険の意味論―制度の本質から介護保険のこれからを考える

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