住民の困りごとなどの相談窓口として親しまれた東京都世田谷区の「すぐやる課」が、三月末で廃止されることになった。区政策企画課の担当者は「職員全体に『すぐやる』という意識が定着してきた」としている。
 同課は二〇〇三年六月に発足。放置自転車や野良猫の死骸の片付け、ハチの巣の駆除などの相談に対応した。区役所本庁舎入り口に部署があり、課長以下七人。一〇年度は計三千七百九十四件の相談があり、千八百九十三件に出動した。同課の職員は今後、自然エネルギー普及対策や福祉分野などに重点的に配置される。区本庁舎の広報広聴課と五カ所の総合支所にすぐやる相談コーナー(仮称)を設け、内容によっては担当課の職員を派遣する。
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 「すぐやる課」は1969年、千葉県松戸市で誕生。同市によると、ピーク時には全国約300自治体に同様の課があったが「近年は行革の影響や使命を終えたと判断され、20自治体程度では」(担当者)という。東京都区部で過去に設置したのは世田谷区と葛飾区だけ。葛飾区の「すぐやる担当課」は2010年4月、青木克徳区長が公約の「行政のスピードアップ」の象徴として設けた。設置していない杉並区では、対応翌日から「3営業日」以内に何らかの回答をする努力目標を掲げる。「どの課もすぐにやれば、『すぐやる課』は必要ない」(荒川区)との声もある。

本記事では,世田谷区における組織改正の取組を紹介.同区に2003年に配置された「すぐやる課」を廃止される模様.「所管事項がな」*1く,「自治体らしい仕事の形を創造し」,「これまでのお役所仕事とはひと味違った行政をしたいという願いから」*2配置された,ご本家・松戸市でも,2009年10月6日付の本備忘録でも記録したように,2009年にはいわゆる「仕分け」の対象ともなる同課.同区の同課の取組に関しては,同区HPを参照*3
同区は,組織図上は,「各総合支所」*4に配置される課となり,総合支所のなかでは「地域振興課計画・相談担当が兼務」する「すぐやる課分室」*5も配置.同課の業務としては,「開庁日」に「区民の方から道路の破損や清掃に関すること,毛虫の発生など,地域の悩み事に関する相談」の「連絡を受け」た場合に「お困りごとの状況を確認するため」「すぐやる課の巡回車で現場に急行」し,「区の担当所管はもちろんのこと必要に応じて東京都や警察に報告」を行い,「対応する所管に責任を持って引き継ぎ,問題解決に努め」*6ることであるとも紹介.同課の配置時点である「平成15年6月11日から平成23年12月31日まで」の「すぐやる課」と「すぐやる課分室」を合わせた「相談件数」の総数は「66,061」件,そして,出動件数は「28,935」*7件となっている.
上記の業務の紹介からすると,相談の解決に向けた,庁内外への連絡調整業務もその中心的な役割ともなりそう.では,その連絡調整の実効性確保のためには,同課へはどのように事務分掌されているのだろうかと思い,確認のため「世田谷区総合支所処務規程」を拝見.すると,同規則第9条では「区政についての要望等の緊急処理及び連絡調整に関すること」*8と概括的に規定されており,特段実効性を確保されるような規定は置かれていない.上記の「相談件数」の総数「66,061」件から,出動件数の総数「28,935」件と至る庁内での処理方法,そして,相談者の視点に立った場合での,相談の解決件数も分かると興味深そう.

*1:扇谷正造『対話ルポタージュ すぐやる課太平記』(産業能率短期大学出版部,1971年)102頁

すぐやる課太平記 (1971年)

すぐやる課太平記 (1971年)

*2:大森彌『現代日本地方自治』(放送大学出版会,1995年)189頁

現代日本の地方自治 (放送大学教材)

現代日本の地方自治 (放送大学教材)

*3:世田谷区HP(暮らし・生活のトップページ)「すぐやる課

*4:世田谷区HP(区のトップページ行政情報のトップページ)「世田谷区組織一覧(目次)

*5:世田谷区HP(暮らし・生活のトップページすぐやる課)「すぐやる課の紹介

*6:前傾注5・世田谷区(すぐやる課の紹介)

*7:世田谷区HP(暮らし・生活のトップページすぐやる課)「業務スタート時からの累計

*8:世田谷区HP(行政情報のトップページ世田谷区例規類集)「世田谷区総合支所処務規程」(平成11年3月25日,訓令甲第3号