仙台市役所の庁舎分散化が場当たり的に進んでいる。本庁舎(青葉区国分町)がもともと手狭だった上に、東日本大震災で事務量が増大し拍車が掛かった。本庁舎周辺に計10カ所の庁舎が点在、仮庁舎の賃料は年3億円を超え、7月にはもう1カ所増える。復興事業優先の財政事情を考えると、本庁舎の建て替えをはじめ、抜本的な打開策を見つけるのは難しい状況だ。
 市が建物を所有する分庁舎、民間ビルに入居する仮庁舎の状況は地図と表の通り。
 4月に約170人規模の復興事業局が新設され、市民局の大半が本庁舎から「アーバンネット勾当台ビル」に移転した。仮庁舎6カ所の賃料は年約3億2000万円にも上る。7月には、税務部門の集約化に伴い、北庁舎の教育局が「東二番丁スクエア」に移る。年間約1億円もの賃料が維持管理費として上積みされることになる。庁舎の「膨張」に対し、市役所内ではコストや効率の面で賛否両論の声がある。本庁舎から約400メートル離れた環境局(小田急仙台ビル)に勤務経験がある幹部は「市長や副市長に判断を仰ぎたくても、すぐに行けるとは限らない。何より、本庁舎の『空気』が分からないのが困る」と明かす。「執務環境がいい民間ビルに入居し、ワンフロアになったおかげで局内のまとまりが出てきた」。こう評価するのは、北庁舎の4、5階から2011年9月に仙台パークビルヂングに移った経済局の若手職員。「本庁舎に行かないと取れない情報は確かにあるが、足で稼げば問題ない」と話す。
 市は、震災で使用不能になった旧上杉分庁舎(7階建て)を14年度までに建て替える方針。新分庁舎(10階建て程度、概算事業費20億円)の事務室はこれまでの2倍以上の広さとなる見込みで、仮庁舎の解消に一定程度貢献しそうだ。抜本的な解決策となる本庁舎建て替えは見通せない。藤井黎元市長は04年に建て替え方針を表明したものの、200億〜300億円に上る費用がネックとなり翌05年、約9億円を投じて耐震補強工事による延命策に転換した経緯がある。耐震補強が奏功し、1965年完成の本庁舎が震災で受けた被害は軽かった。約1億8000万円をかけた復旧工事もほぼ終了。市は少なくとも今後10年程度は使い続ける計画だ。市庁舎管理課は「コンクリート建築は60年が限界とされている。本庁舎や北庁舎の建て替えに対する問題意識はあり、本年度中に課題を整理したい」と話す。

本記事では,仙台市における庁舎配置の現状を紹介.
同市の「庁舎案内図」*1を拝見させていただくと,なるほど確かに本庁舎の周辺には,勾当台通を挟み本庁と接する青葉区役所を含めて,10庁舎が配置されており,いわゆる「たこ足配線」*2状態にある様子も窺える.
一方,本記事を拝読させて頂くと,細分化された経済局へと「一所の執務空間」*3へと集約されたことにより,「配線」を流れる業務が断線,そして,漏電もすることなく,運営されている様子も分かる.ただし,「7月にはもう1カ所増」化されるとも報道.2008年12月7日付の本備忘録にて項目立てを試みた本備忘録の妄想的・断続的観察課題のひとつ,「庁舎管理の行政学」の観点(「第1章:建築と維持のポリティクス」又は「第4章:執務と憩いの空間としての庁舎」でしょうか)からも,個々の庁舎を結びつける配線最適化の状況は,興味深い観察課題.要観察.

*1:仙台市HP(施設案内市役所・区役所など市役所・区役所・東京事務所市役所(各庁舎))「仙台市役所庁舎案内図

*2:鈴木俊一『官を生きる』(都市出版,1999年)392頁

官を生きる―鈴木俊一回顧録

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*3:大森彌『官のシステム』(東京大学出版会,2006年)73頁

官のシステム (行政学叢書)

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