自宅に廃棄物をため込む「ごみ屋敷」の解消に向け、足立区は四日、撤去費用の助成や家主への精神面での支援策を盛り込んだ区条例を制定すると発表した。区の立ち入り調査や指導の権限も規定するが、支援に重点を置いた同様の条例は、全国でも珍しいという。 (小野沢健太)
 ごみ屋敷をめぐっては、近隣住民からの苦情に各自治体とも頭を痛めている。足立区でも、「道路にごみが広がっている」「臭いがする」など、関連の苦情は年間約千二百件に上る。しかし、民有地にあるごみについて、区は調査や指導をする権限がなかった。条例をつくることで区は、ごみ屋敷に調査へ入り、家主へ撤去の勧告や命令ができるようになる。従わない場合は行政代執行による強制撤去もできる。
 一方で、家主がごみをためないようにする支援も行う。過度な収集癖がある人には、医療機関へかかるように区職員が説得。生活困窮者の場合は撤去費用を上限付きで助成する。撤去後も、区の保健師が定期的に訪問して相談に乗り、再発しないようケアする。一連の指導や支援は、弁護士や医師、民生委員などで設ける第三者機関で審議し、実施の可否を判断する。区は四月、ごみ屋敷対策を専門とする生活環境調整担当課を新設。課によると、五月時点で区内のごみ屋敷は十九件。ほかに樹木が生い茂るなどして周囲に迷惑をかけている建物を含め、計三十三件で対応が必要な状況という。
 課の担当者は「法的根拠のある条例によってきめ細かく支援や指導をすることで、根本的な解決につなげたい」と話している。九月に条例案を区議会へ提出、来年一月の施行を目指す。

本記事では,足立区における,いわゆる「ゴミ屋敷」への取組方針を紹介.同取組に関しては,2012年6月4日に開催された同区長定例記者会見時の配布資料を参照*1
同配布資料を拝読させて頂くと,同区では,2011年4月より「老朽危険家屋対策」を実施.いわゆる「ゴミ屋敷」問題に対して,同区では「ごみそのものの除去も大切」としつつも,まずは「再発防止 のためには一歩踏み込んだ原因者への対策が重要」*2と位置づけ,「実態調査」を実施.その結果,「支援拒否」や「生活困窮」,そして「地域からの孤立」という「課題」*3が抽出.これらの課題に対して,同区では,三つの対策を実施.一つは,同区の「庁内連携強化」.「地域のちから推進本部,保健部,衛生部,都市建設部,環境部」からなる「生活環境適正化会議」を設置する.二つめは,「個別案件への丁寧な対応」であり,「外部との連携」を図るべく,「ケース診断会議」を開催.そして,三つめは,本記事でも紹介されている「条例制定化」である.同条例では,「立ち入り調査」,「指導・勧告・命令」といった「「命令=管理」型アプローチ」*4に加えて,「苦情原因の解消費用補助」や「原因者や家庭の生活再建の相談および支援」という「支援」*5という「誘導アプローチ」を併設される模様.なるほど,興味深い
方や,同記者会見時には,「防災・減災等対策」の取組も紹介.同配布資料内では「老朽危険解体の促進」も「検討項目に上がっている」*6ことも分かる.前者の「支援」と後者の「促進」との間での速度感では,どのような整理がなされているのだろうか.要確認.

*1:足立区HP(はい、区長です区長記者会見)「足立区長定例記者会見 平成24年6月4日 (木)午後2:00〜」4頁

*2:前掲注穵・足立区(足立区長定例記者会見)4頁

*3:前掲注穵・足立区(足立区長定例記者会見)5頁

*4:北村喜宣『環境法』(弘文堂,2011年)107頁

環境法

環境法

*5:前掲注穵・足立区(足立区長定例記者会見)5頁

*6:前掲注穵・足立区(足立区長定例記者会見)穵頁