県は、十一月二十一日を「県内一斉ノー残業デー」とする。企業と協力して、全県的に働く人たちに定時退社を促す全国初の試み。愛知は残業が多い土地柄だが、県は、家庭のだんらんや地域での活動を大切にする価値観を広げたい考えだ。三千事業所の参加を目標に、企業に賛同を呼びかけている。
 「県内一斉ノー残業デー」は、県や連合愛知、経営者団体などでつくる協議会が一月、労働時間低減などを目指してまとめた行動計画に、実施を盛り込んでいた。定時退社は、子育てや介護の時間の確保、うつ病など心の病気の防止にもつながると期待されている。
 勤労感謝の日(十一月二十三日)に近く、既に一部企業が「ノー残業デー」としている水曜日であることから、十一月二十一日を実施日とした。賛同企業は、ホームページや郵送などで参加を申し込む。県はあわせて、九月から十一月までの間に、前年同時期より一日多い有給休暇取得を社員に促す企業も募る。愛知で働く正社員の二〇一一年の平均残業時間は年二百時間。全国平均の百七十四時間を上回っている。一〇年度の県内の有給休暇取得日数は平均一〇・一日で、全国平均の八・五日よりも多い。愛知は、大企業を中心に計画的に有給休暇を取得させる企業が多いものの、全国的にも産業活動が活発な地域であるため、年間の残業時間は多くなる傾向にある。県労働福祉課は「多くの企業に賛同してもらい、当日は県内のオフィスビルの照明が早々に消えるようにしたい」と話している。問い合わせは同課=電052(954)6360=へ。(内田康)

本記事では,愛知県における「県内一斉ノー残業デー」の取組を紹介.同取組の詳細は,同県HPを参照*1
同県では,「11月21日(水)を「愛知県内一斉ノー残業デー」」として,「企業等にノー残業デーを広め,働く人の定時退社を促す」こととしている.加えて,「9月から11月を前年同期間より1日多く有給休暇を取得する期間」として「企業等に休暇取得促進を働きかけ,働く人の有給休暇取得を促す」「運動有給休暇取得プラス1運動」も実施.同運動に「賛同」した事業所は,同県「サイトでの企業PR」等が行われる.2012年8月18日現在では,「全37件」*2からの企業から協賛されている.
個々の企業・事業所の職場環境では,「自分の作業が終わったからさっさと仕事を終えて帰る,という行動様式を取ることが難しく,結果的に職場集団の全員が仕事を終えるまでみんなで残業」*3し,「いつでも残業できる状態にある働き方が可能なワーク・ワーク」*4型であるものの,全県一斉での定時退社を促すことで,企業・事業所の間で,いわば「群知能」が創発されることにより,個々の企業では困難である定時一斉退社という「問題に対して,解決」*5されていることが企図されているのだろう.同取組の効果は,協賛企業・事業所の増加という成果は,まずは,個々の企業・事業所にいかに協賛に加わって貰えるか次第.協賛企業・事業所の動向は,要経過観察.

*1:愛知県HP(愛知県政記者発表資料記者発表「愛知県内一斉ノー残業デー運動」及び「有給休暇取得プラス1運動」の賛同企業募集について)「「愛知県内一斉ノー残業デー運動」「有給休暇取得プラス1運動」

*2:愛知県HP(愛知県政記者発表資料記者発表「愛知県内一斉ノー残業デー運動」及び「有給休暇取得プラス1運動」の賛同企業募集について)「「愛知県内一斉ノー残業デー運動」「有給休暇取得プラス1運動」賛同企業・事業所紹介

*3:濱口桂一郎『日本の雇用と労働法』(日本経済新聞社,2011年)133頁

日本の雇用と労働法 (日経文庫)

日本の雇用と労働法 (日経文庫)

*4:武石恵美子・佐藤博樹「時間意識の向上のためのモデル事業と働き」佐藤博樹, 武石恵美子編著『ワーク・ライフ・バランスと働き方改革』(勁草書房,2011年)111頁

ワーク・ライフ・バランスと働き方改革

ワーク・ライフ・バランスと働き方改革

*5:レン・フィッシャー『群れはなぜ同じ方向を目指すのか』(白揚社,2012年)13頁

群れはなぜ同じ方向を目指すのか?

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