横浜市は、外郭団体などの天下り先で職員退職者が受け取る年収や、在職期間を制限する取り組みの状況を発表した。7月が基準達成の期限だったが、12人が年収基準を超え、期間オーバーは3人いた。
市は2010年、職員の再就職の処遇の見直しを発表。年収は副市長で900万円、区局長級700万円、部長級600万円までなどと制限し、在職期間も退職後5年(特別職は4年)を限度と決め、今年7月までの達成を目標にしていた。09年度末現在で、年収オーバーは、市が25%以上出資している外郭団体で66人、地区センターなどの区民利用施設協会で7人いたが、それぞれゼロに。しかし、関係団体は44人から減ったものの12人が超過した。市人事組織課は「人材難の医師・看護師などが多く、限度内の年収では人材が確保できない」と説明する。
期間は、外郭団体で1人、関係団体で2人がオーバーしていた。「外郭団体の1人は事業推進上、やむを得ない超過。来年度には解消できる」と同課。もう一つの目標だった複数団体から給与をもらう兼務は、09年度末で5人いたがゼロになり、解消した。市職員退職者は、36の外郭団体に131人、31の関係団体に78人、18の区民利用施設協会に98人が再就職している。(伊丹和弘)
本記事では,横浜市における退職者の外郭団体等への在職状況と年収限度額を紹介.
2009年7月5日付,2010年1月28日付,そして,2011年7月17日付の各本備忘録で記録した同市の退職管理の取組.2012年7月現在の状況は,2012年7月4日付で同市では公表.詳細は,同市HPを参照*1.
同市の退職管理では,「再就職先の団体における在職期間」は「退職後5年間または65歳に達する年度の末日までを限度」と規定.2012年7月段階では「全307ポストのうち,304ポスト」は,同規則に基づき「適正化」され,「適正化率」は「99%」にある,という.これは,2009年度末では23名が超過,2010年7月は18名,2011年7月は9名*2であったことからすれば,漸減的に同規則に沿った適正化が図られつつもあるようでもある.
また,「年収限度額」に関しては,「再就職先で役員に就任している者」については,「副市長等特別職」が「900万円」,「区局長・区局長相当職」は「700万円」,「部長・部長相当職」は「600万円」,また,「再就職先で職員として勤務している者」に関しては,「区局長級以上」は「500万円」,「部長級」は「430万円」,「課長級」は「370万円」と規定されている.こちらも,2012年7月段階では「全307ポストのうち,295ポスト」が「適正化」が図られ,「適正化率96%」と,在職期間に比べるややや低値となる.ただし,これは,2009年度末では117名が超過,2010年7月は95名,2011年7月は61名*3であったことからすれば,在職期間に比べれば,加速度的に同規則に沿った適正化が図られつつもあることが分かる.
「有形」で「非公式」な「報酬」*4とも区分することが可能な,退職後の外郭団体等への再就職という報酬.遅れて支払われる「報酬」*5ともされることで,元来「非公式」でもあった運用が,同市では「報酬ゲーム」の在職期間と年収限度額の設定というルール化を通じて,「透明性」*6は高まっている.同規則の運用に対して,同市民から「敬意」が示されるか,「不敬」を抱かれるのか,同市民側の意識と「姿勢」*7が把握できると興味深そう.
*1:横浜市HP(記者発表資料:2012年7月:市退職者の再就職適正化に関する取組結果)「市退職者の再就職適正化に関する取組結果」(平成24年7月4日,総務局人事組織課)
*2:前掲注1・横浜市(市退職者の再就職適正化に関する取組結果)1頁
*3:前掲注1・横浜市(市退職者の再就職適正化に関する取組結果)1頁
*4:Marleen Brans and B. Guy Peters.(2012)"Rewards for High Public Office: Continuing Developments",Marleen Brans, B.Guy Peters(eds.),Rewards for High Public Office in Europe and North America:Routledge ,p.4.
*5:Ibid.,p.5.
*6:Ibid.,p.6.
*7:Ibid.,p.6.