国分寺市小金井市によるごみの共同処理計画が頓挫したことを受け、日野市は2019年度から両市のごみを市内の処理施設で受け入れ、3市で共同処理する方針を固めた。現施設の老朽化による建て替えを予定している日野市は、将来的なごみ処理に懸念を抱える2市と組むことで、発電や処理費の面で利点の大きい広域的処理を実現させたい考え。ただ、地元住民の反発も根強く、実現性はまだ不透明だ。
 日野市幹部によると、13日夜、同市の馬場弘融市長が、市クリーンセンター(石田1)の周辺住民でつくる「地元環境対策委員会」や近隣の自治会長に対し、「地元の理解を得ながら進めていきたい」と述べ、3市での共同処理計画を打診した。計画は、現クリーンセンターの敷地で、日量290トンの処理能力(現施設は日量220トン)のある新施設に建て替えるというもの。「稼働開始の19年度までには、各市ともゴミ量の削減が進み、3市分を処理する余裕がある」(日野市幹部)という。
 今年3月、小金井市国分寺市に対し、共同処理計画の事実上撤回を申し入れて以降、この両市に加え、近い将来に新施設の建設を予定している日野市と昭島市の4市は、ごみ処理の広域化について情報交換をしてきた。昭島以外の3市が、今年度中の方針決定を表明しているのに対し、昭島市は建て替えまでに時間的余裕があることから、「意思決定する段階になく、スケジュールが合わなかった」(昭島市幹部)として参加を見送った。情報交換会と並行して、日野市は10月頃から市幹部が地元を回り、「複数市との共同処理を検討している」と説明してきた。この計画について馬場市長が地元に赴いたのは初めてで、共同処理の相手として小金井、国分寺の両市の名前を明らかにしたのも今回が初めて。
 しかし、処理施設を持たない小金井市のごみを「人道的支援」との名目で、長年にわたって日野市の施設で受け入れてきただけに、他市のごみ受け入れに対する地元住民の反発は大きい。13日の会合でも、「これまで約束を守らなかった小金井市と組むのはいかがなものか」といった意見が出たという。日野市は今後も地元への説明を続け、理解を求めていき、今年度中には最終判断し、正式な合意に至れば各市の分担金などについて話し合っていくという。

 小金井市国分寺市が進める可燃ごみの処理施設計画が難航している問題で、日野市が両市との共同処理の方針を固めたことを受けて、周辺自治体の幹部には多摩地域の長年の懸案に解決の糸口が見えたことへの安堵(あんど)感が広がった。一方、地元住民の合意の重要性を強調する声も出た。
 もともと小金井市調布市とともに二枚橋焼却場で可燃ごみを共同処理していた府中市。市幹部は「これで多摩地域のごみ処理行政が安定する」とほっとした表情を浮かべた。二枚橋焼却場の停止後、3市は別々の道を歩んだが、小金井市国分寺市との共同処理計画が難航。可燃ごみすべてを周辺自治体に処理してもらう状態が続いてきた。府中市が加入する多摩川衛生組合(稲城、狛江、府中、国立の4市で構成)も受け入れ先の一つで、小金井市が加入を模索した経緯もある。「将来の見込みが立たないなかで、人道的な観点で支援を続けてきたが、いつまでで必要なくなるのかのメドが立ったことで、受け入れやすくなる」という
 一方で、小金井市国分寺市との共同処理施設の建設候補地としていた二枚橋焼却場跡地については、懸念も残る。小金井市は、3市で分割した土地の府中市分を買い取る方針を示しているが、「跡地利用が白紙になり、どうなるのかが心配だ」と市幹部は話す。
 最近まで日野、小金井、国分寺の3市と共同処理への参加を模索していた昭島市。「新施設の詳細が分からないまま参加するのは早計」として、11月に入って離脱を伝えたが、市幹部は「多摩のごみ問題が一歩前進した」と歓迎する。関係者によると、昭島市が日野市と共同処理の勉強会を始めたのは今春で、国分寺、小金井の両市が加わるより早かった。だが、両市が早急に道筋を付けたがったのに対し、既存の処分場の寿命に余裕がある昭島市は、「必要な情報がそろってから判断したい」との立場。温度差は埋まらず、加入を見送った。今後どうするかは未定だが、市幹部は「今後、ごみ処理の広域化は、ますます進んでいくだろう」と示唆する。共同処理の歴史が長い西多摩衛生組合(青梅、福生羽村、瑞穂の4市町で構成)の幹部も、「3市が共同処理することになれば、地域のごみ処理の集約が、また進む。環境やエネルギーの有効利用のことを考えると、多摩地域全体で処理場数を減らしていくほうがいい」。組合の焼却場は羽村市内にあり、他の3市町の可燃ごみを運び込んでいる。
 今回の共同処理実現の課題となる地元住民の合意について、この幹部は「焼却場周辺の住民と衝突することもあったが、丁寧な話し合いを心がけてきた。公害のことや、何が還元できるかなど、腹を割って住民と向き合っていくことが重要ではないか」と話した。(津田六平、前田大輔、市川美亜子)

 日野市が新設する焼却施設を小金井、国分寺両市と共同運営する方針を固めたことで、小金井のごみ問題は解決に向けて大きく動きだした。ただ、稼働見込みの二〇一九年度までは、小金井市外での焼却が必要なことは変わらない。日野市側にも、市外のごみ受け入れに反発する周辺住民がいるほか、市がこれまでに定めた計画を見直す必要もあり、不透明な部分もある。 (大平樹、梅村武史、北爪三記)
 ●日野市
 今回の共同運営がまとまった背景には、小金井の問題とは別に、日野市が焼却施設の建て替えを計画していたことがある。市が二〇〇八年に定めた焼却施設の建て替え計画は、市内で出たごみだけを燃やすことを念頭に、一日当たり百四十六トンを燃やせる焼却炉をつくる計画だった。市クリーンセンターによると、今の焼却施設は一日二百二十トンを燃やすことができるが、ごみの減量が進んだことで、実際に燃やしているのは約百トン。新施設は実態に合わせて規模を小さくする方針だった。だが、共同運営する三市分のごみを燃やすには、二百九十トン程度の焼却炉が必要になるといい、市は来年度に計画の見直しや環境影響評価を行う方針だ。市幹部は、共同運営する方針を固めた理由の一つに、都市長会長を務める馬場弘融市長が「地域の懸案を解決したい」と考えたことを挙げた。しかし、馬場市長が十三日夜にセンター周辺の住民代表に説明した際に反対意見も出たという。市長は十四日、「市議会への説明が済んでいない」と本紙の取材に応じなかった。
 ●小金井市
 昨年四月の統一地方選小金井市長に当選した佐藤和雄氏が、周辺自治体へのごみ処理委託費を「無駄遣い」と発言。周辺の反発を買って市長を辞める事態となったのが問題の出発点だった。昨年十二月の市長選で、返り咲いた稲葉孝彦市長は「二〇一二年度内に実現可能な方策を示す」との立場で一貫しており、十四日は取材に応じなかった。市議会ごみ処理施設建設等調査特別委員会の渡辺大三委員長は「共同処理の話は寝耳に水。今の段階では是非を言えない。十九日の特別委で市から報告を聞いて判断したい」とコメントを避けた。元市新焼却施設建設場所選定等市民検討委員会委員で会社員の百瀬和浩さん(51)は「ごみ問題解決へ道筋の一つが見えた感じだが相手住民の思いもあることなので簡単には喜べない。今後を注視していきたい」と話した。
 ●国分寺市
 国分寺市の星野信夫市長は六月の市議会ごみ対策特別委員会で、小金井市との共同処理問題の解決策を年内に出したいとの考えを示していた。日野市の新施設を共同運営することについて、池田昇・市清掃施設担当課長は「担当レベルではそういう話は聞いていない」とする一方、「年内に方向性を出す方針は変わっていない。正式に決まったら発表したい」と述べた。

三記事では,小金井市におけるごみ処理施設建設に関する計画について紹介.
同市が調布市府中市と構成されていた可燃ごみを共同で処理のための衛生処理組合が,「焼却施設の経年による劣化」により2007年3月末の「全焼却炉」で停止.同組合も2010年3月に解散.その後は,「多摩地域の各市及び一部事務組合」へ同「市の可燃ごみの処理を依頼」されている.具体的には,下記の通り.

第1記事では,日野市が「可燃ごみ処理施設」*3に「2019年度から」,小金井市国分寺市の「ごみを市内の処理施設で受け入れ,3市で共同処理する方針」を提示されたことを報道.第2記事では現在までの経緯,第3記事では同方針に対する3市の反応(といいますか,「取材に応じなかった」という記事の内容ですが)が紹介されている.
「行政が避けて通れない「迷惑施設」の設置」*4をめぐる現代の「東京ごみ戦争」の帰結.ただ,第3記事でも紹介されているように,現在「焼却能力」が「1日あたり220トン」である日野市の可燃ごみ処理施設では,「共同運営する三市分のごみを燃やす」となると「290トン程度の焼却炉が必要」にもなる,という.立地という「スキュラ」と,立地先確定後での具体的な施設という「カリブディス」との間で,今後も「不安定な小道」*5が続くことは想定されなくもないものの,今後の検討過程は要経過観察.

*1:小金井市HP( 各課のページ 環境部ごみ対策課お知らせ平成24年度一般廃棄物処理)「平成24年度一般廃棄物処理計画」(小金井市環境部ごみ対策課,平成24年4月1日)1頁

*2:小金井市HP( 各課のページ 環境部ごみ対策課お知らせ])「新ごみ処理施設建設事業の進ちょく状況について

*3:日野市HP(施設案内市役所・支所などくらし・清掃(クリーンセンター) )「可燃ごみ処理施設

*4:菊地正憲「先送り行政と住民エゴの罪」『中央公論』2012年3月号,55頁

中央公論 2012年 03月号 [雑誌]

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*5:ダニエル・P・アルドリッチ『誰が負を引きうけるのか』(世界思想社,2012)246頁

誰が負を引きうけるのか―原発・ダム・空港立地をめぐる紛争と市民社会

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