• 金井利之「都区制度と総合計画制度」『都市社会研究』No.5,2013年,1〜36頁.

本日は,世田谷区に置かれている,せたがや自治政策研究所が発刊された『都市社会研究』2013年に掲載された同論攷.毎号,同研究所よりご恵与頂いております.誠にありがとうございます.なお,同誌及び同論攷は,同区HP*1からも読むことができます.
本論攷では,1969年の地方自治法改正により整備された「法定基本構想制度」(1頁)に基づく総合計画制度の整備を,特別区を対象に分析されています.特別区がいつから「「一般市町村並み」に扱われるようになったのか,なったとすればそれはいつか」(2頁)という問いに対して,時代毎に整理が難しい特別区という法人を,本論攷では「基本構想保有自治体」(2頁)という補助線を引くことで,「「市町村並み」化」(3頁)する分岐点を描き出されています.
そして,本論攷では,東京徳職員労働組合が,1982年,1988年,1990年に発刊された報告書内で職員回想と,実際に各区の基本構想や調査報報告書への丹念な分析が重ねられており,いずれも読み応えがあります.そして,「発展史観」(27頁)との留保をされつつも「「整備競争」における「位置取り」」として,「先行グループ」(更に,「先行区(1974年以前策定)」と「先行区(1975〜79年以前策定)」),「中間区グループ(1978〜79年度)」,「後続区グループ」(更に,「脱落区(1977年以前の策定を企図した先発区グループでありながら,現実には80年以降策定)」と「後発区」(1980年以降))への分類された結果,「1975年の公選区長制の復活を準備し,また,その帰結として,特別区は全体として「基本構想保有自治体」としての自主性を確保していった」(5頁)ことを述べられています.
上記の「位置取り」のなかでの「後続区グループ」のなかでの「脱落区」にはその語の響きにまずは驚きましたが,次のような含意を読むと,なるほどと思いました.

この「脱落」は必ずしも否定的な意味とは限らない.ゆっくりと時間をかけて特別区の関係者間で合意形成ができたのであれば,むしろ,「拙速」を避けたと理解することができる.「先発遅行」「後発先行」という表現が自治体関係者にはある.先に進んでいた自治体が結果的に遅れてしまい,遅れていた自治体がかえって先に行ってしまう,ということがある.こうした抜きつ抜かれつの関係を経ながら,自治体あるいは特別区全体として基礎的自治体に「成長」していったと見た方がよいであろう」(16〜17頁)