東京電力福島第一原発事故を受け、役場機能ごと県外に避難を続けている双葉町は14日、埼玉県加須市の旧騎西高にある町埼玉支所の主要業務を終えた。平成23年4月1日から業務を続けてきた旧騎西高を離れ、17日からいわき市東田町の仮庁舎で業務を開始する。
 町職員は14日、旧騎西高内にある書類や事務用品などを段ボールに詰め込む作業に取り組んだ。夕方からはパソコンを梱包(こんぽう)した。伊沢史朗町長は同日朝から加須市などへのあいさつ回りに追われた。役場移転について報道陣に対し「県や双葉郡町村などと緊密に連携できるようになる。問題を共有し、解決に向かって一丸となる環境が整う」と述べた。伊沢町長は14日午後5時、旧騎西高前に掲げられた「双葉町災害対策本部」の看板を外し、代わりに「双葉町災害対策本部埼玉事務所」の看板を設置した。

 東京電力福島第一原発事故に伴い、埼玉県加須(かぞ)市に役場機能を構えた双葉町は17日、いわき市に新設した仮庁舎で業務を開始する。県外移転から2年3カ月を経て、復興に向けた大きな一歩を踏み出す。町民の利便性向上や町外コミュニティー(仮の町)形成の推進など期待は高まる。一方、小中学校の再開、避難を続ける町民の絆の維持など課題も抱える。
■安心感
 県内に避難している双葉町民のうち、いわき市には約4割に当たる最多の1522人が暮らす。同市の南台仮設住宅自治会長を務める農業斉藤宗一さん(63)は仮庁舎での業務開始を待ち望む。
 現在、県内の役場支所は郡山市のみ。今後は印鑑証明書の取得などの各種手続きで加須市の役場や支所に出向く負担が軽減される上、避難生活の相談も容易にできる。「職員が身近にいれば安心感にもつながる。心強い」町は復興計画で、いわき市を仮の町のメーン拠点に位置付ける。仮の町整備に向け、町と市、県、政府による協議が本格化する。町職員は「災害公営住宅整備に向けた、市や県との調整なども円滑にできる」とし、県内への「役場帰還」の意義を強調した。
■時間の重み
 町は県外移転などの影響で、双葉郡8町村で唯一、小中学校を再開できていなかった。町は役場の県内帰還を契機にコミュニティーの象徴である学校を再開させたい考えだ。
 ただ、課題もある。長期避難の中で、児童生徒が他の学校になじんだり、保護者が就職したりしたため、どれだけ子どもが戻るか見通せないという。「学校がいつ再開するか分からない。高校受験を見据えて県内に戻るか、このまま残るべきか…」。栃木県那須塩原市に避難する主婦(39)は、来春に中学生になる長男を思い複雑な心境を吐露する。町によると、避難がなければ双葉町立の学校に通っていた小学生は4月末時点で348人、中学生は166人。しかし、それぞれの約半数が県外の学校に在学している。「将来を担う子どもを町の学校で育てたい。どうすれば子どもを戻せるのだろうか」。町関係者は苦悩する。
■異例の対応
 埼玉県は加須市の旧県立騎西高に残る双葉町の避難住民が、一定の地域内で一緒に暮らせるよう支援策の検討を始めた。住環境を他県が提供するという「異例の対応」(県関係者)だ。
 「埼玉県民と仲良くなった。ここにずっと住みたい」。加須市の民間借り上げ住宅で暮らす農業林一栄さん(76)が打ち明ける。町民の一部で埼玉県内への災害公営住宅建設を求めて町に署名を提出した。町は「県の判断」とし、県は明確な態度は示していない。ただ、県外避難の長期化と住環境の充実に不安を抱く町関係者もいる。「県外の定住化が進み、県内への帰還が鈍るのではないか」とみるからだ。
■温度差
 町は役場の県内帰還で双葉郡町村との連携が緊密になり復興が加速するのを期待する。
 ただ、同じ双葉郡でも、避難区域の再編で既に住民帰還や事業再開の動きが活発な町村もあれば、長期間にわたり帰還できない区域が広がる町村もある。国や県への要望でも町村の足並みがそろわない懸念があるという。さらに、除染を進める上で欠かせない中間貯蔵施設整備をめぐっても立地候補地とそれ以外の町村の住民には意識の隔たりがある。双葉郡内の復興担当者の1人は「町村が抱える課題はまちまち。町村の温度差によって復興の歩みが止まらないようにしないといけない」と指摘した。

両記事では,双葉町における役場移転の取組を紹介.
2011年3月20日付の本備忘録では避難先の川俣町からさいたま市への移転を記録し,その後,加須市内に役場を移転され,同年11月17日付の本備忘録では訪問させて頂いた同町.本日,2013年6月17日から「双葉町役場本体機能を埼玉県加須市から福島県いわき市*1に「役場ごと」*2「移転」し,近づきつつ「故郷に向かい合う」*3同町.
移転先となる「いわき事務所」の「案内図」を確認すると,1階には「住民生活課」「健康福祉課」「税務課」「出納室」の3課1室,2階には「教育委員会事務局」と「教育総務課」「産業建設課」「農業委員会事務局」「復興推進課」「総務課」「秘書広報課」「議会事務局」と5課3事務局,そして「町長室」「議員控室」「正・副議長室」と大小の「会議室」*4となる.議場は大会議室を利用されるのだろうか,要確認.
2011年7月25日の開設以来「平日8:30〜17:15」の間で,「各種証明書の申請に関する問い合わせ」「住宅支援に関する問い合わせ「一時立入り申込に関する問い合わせ」「警戒区域内住宅の屋根の応急処置に関する問い合わせ」「義援金に関する問い合わせ」「安否報告受付及び安否確認」「各種相談窓口等の情報提供(医療・福祉等)」等の問い合わせに応じてきた,同町の「総合受付コールセンター」*5は,同事務所への移転により「6月28日(金)」で「終了」.今後は「いわき事務所」の「代表番号」か「各課直通番号等へ直接」「問い合せ」*6を受け,「専門分化」*7が図られる模様.移転後の取組も要確認.

*1:双葉町HP(役場からのお知らせ) 「役場機能移転のお知らせ■双葉町いわき事務所開設のお知らせ

*2:朝日新聞特別報道部『プロメテウスの罠4』(学研パブリッシング,2013年)87頁

*3:舩橋淳『フタバから遠く離れて』(岩波書店,2012年)109頁

フタバから遠く離れて――避難所からみた原発と日本社会

フタバから遠く離れて――避難所からみた原発と日本社会

*4:前掲注1・双葉町(役場機能移転のお知らせ■双葉町いわき事務所開設のお知らせ)

*5:双葉町HP(役場からのお知らせ) 「「双葉町総合受付コールセンター」開設のお知らせ

*6:前掲注1・双葉町(役場機能移転のお知らせ■双葉町いわき事務所開設のお知らせ)

*7:松井望「機構改革と三つの論理」『職員研修増刊102  行革エンジンを回せ 自治体行革の処方箋』2013年3月号増刊(公職研,2013年)142頁