東京都杉並区と静岡県、同県南伊豆町は12日、南伊豆町内にある杉並区の敷地に同区民向けの特別養護老人ホームを整備する計画に関連し、厚生労働省に法改正などの制度変更を要請した。入所者の医療費を前に住んでいた自治体が引き続き負担できるよう、特養の運営ルール見直しを求めたことが柱。
 現行制度では、別の自治体の特養に入所した高齢者について、国民健康保険の医療費は住所地特例に基づき74歳までは前に住んでいた自治体が負担できる。しかし、75歳になって後期高齢者医療保険制度に移行すると特例の適用が切れて、特養のある県や市町村に医療費負担が移るため、他の自治体に特養を整備する際の障害となっている。

 東京都杉並区が南伊豆町内の区有地に特別養護老人ホーム(特養)を設置する計画が、事業化に向け具体的に動き出す見通しとなった。開所目標は2016年度。梅本和熙町長と田中良杉並区長、県幹部らが近く厚生労働省を訪れ、現行制度で医療費など地元負担が増大する弊害を緩和するよう、制度変更などを要請する。
 特養の入居待機者解消に悩む区が雇用拡大などの経済効果を期待する町と連携し、自治体の区域外に特養開設を目指す全国初のケース。厚労省は「都市部の高齢化対策に関する検討会」を発足させ、支援に動き出している。
 12年度末で廃止した区立の教育施設南伊豆健康学園(南伊豆町湊)の跡地約1万6千平方メートルを活用する。区によると、自然環境を生かした「保養地型」とする。南伊豆町の黒田三千弥健康福祉課長は「介護福祉士や調理職員などの雇用が新たに生まれる。地元の食材も使ってくれるだろう」と新たな町おこしの“起爆剤”となることを期待していて、町はおおむね歓迎ムード。
 課題は、現行制度では入所した区民が75歳を迎えて後期高齢者医療制度に移行した場合、県と町に医療費負担が生じること。入所者が生活保護費を申請した場合も負担するのは県になる。74歳以下の国民健康保険は現行制度でも、医療費を区が支払う「住所地特例」が認められているため、関係者は「制度のつなぎ目の問題。国には既に理解してもらっていて、制度変更を求めたい」と話す。
 区によると、区内の特養は12カ所(定員1174人)あるが、待機者は4月時点で約2千人。地価が高いなど特養の区内整備が困難で、南伊豆町の区有地に白羽の矢を立てた。特養を建設・運営できる社会福祉法人を公募し、区、町、県が建設費などを補助する。入所者は60〜80人の規模を想定している。

両記事では,杉並区における特別養護老人ホーム整備の取組を紹介.
2013年5月9日付の本備忘録で記録した「南伊豆町にある区有地」での特養整備の取組.両記事ともに,75歳以上の方が後期高齢者医療制度へ移行した場合での,住所地特例の「制度のつなぎ目」の課題を紹介.同課題に関しては,両記事ともに紹介されている,厚生労働省に設置された「都市部の高齢化対策に関する検討会」の第4回配布資料を参照*1介護保険制度では,同町の施設に入所した場合でも「住所地特例」により同区が保険者を継続することが可能.
一方で,国民保険制度では74歳までは「住所地特例」が継続されるものの,「入所者が75歳に達した場合」後期高齢者医療制度に移行するため「施設所在地の広域連が保険者となる」*2.同区では「現行制度の中で地元負担が発生しない仕組みなど実現可能な方法を導き出」すために「静岡県南伊豆町」と同区の「協議のなかで対応についてルールを定め協定等による協力し合える仕組みを検討」をされてはいるものの,「現行制度のなかで地元負担が発生しない方法が導き出せない」*3とあり,「法改正」を要請している.
自治体間での.いわば水平的な「機能分担論」による「共同(cooperation)」*4的な運営を可能とする制度へと改正されることになるのだろうか.同審議会での審議結果の公表後,要確認.

*1:厚生労働省HP(政策について審議会・研究会等老健局都市部の高齢化対策に関する検討会第4回都市部の高齢化対策に関する検討会資料)「資料3 地方での都市部高齢者の受け入れ時の課題と対応策の検討 〜 杉並区-南伊豆町の検討状況を通じた課題と対応 〜

*2:前掲注1・厚生労働省(資料3 地方での都市部高齢者の受け入れ時の課題と対応策の検討 〜 杉並区-南伊豆町の検討状況を通じた課題と対応 〜)

*3:前掲注1・厚生労働省(資料3 地方での都市部高齢者の受け入れ時の課題と対応策の検討 〜 杉並区-南伊豆町の検討状況を通じた課題と対応 〜)

*4:Nelles, Jen.(2012).Comparative Metropolitan Policy: Governing Beyond Local Boundaries in the Imagined Metropolis,Routledge:p.6.