東日本大震災で被災した東北3県を除く全国44都道府県で、地方公共団体などが所有する建築物の昨年末現在の耐震化率を会計検査院が調査したところ、教育や医療、警察や消防施設で7〜8割だったのに対し、役所などの庁舎施設では6割にとどまっていることが分かった。耐震化が遅れている理由では「予算の制約」や「教育施設を優先している」を挙げた自治体が多かった。
 検査院は9日、「災害発生時に重要な施設なので、内閣府国土交通省が助言をするなどして、耐震化を促進する必要がある」との所見を付けて、結果を国会に報告した。

本記事では,会計検査院による「地方公共団体の庁舎施設等」に関する検査結果を紹介.同検査結果は,同院HPを参照*1
「44都道府県及び管内の1,615市町村が24年12月31日現在」で「所有していた庁舎施設等の建築物」「合計9,493棟」が「分析の対象」*2となる同調査.「構造体の耐震化率を施設の別」では「庁舎施設で61.2%,警察施設で80.4%,消防施設で75.3%」とあり,さらにこれらの施設のうち「多数の者が利用する建築物」では「庁舎施設で62.1%,警察施設で81.9%,消防施設で87.9%」*3の現状にある.このため,同調査では「庁舎施設の耐震化対策の遅れが顕著」*4との認識が示されており,「災害時に被害情報収集や災害対策の指示を行うための重要な施設であるにもかかわらず,耐震化率が他の施設に比べて低くなっていることから,耐震改修促進計画に定めた目標の達成に留意して耐震化対策を着実に実施する」*5と,いわば,「防災面を強く意識した庁舎」*6として対策の必要性への見解が示されている.
 では,なぜ,庁舎が他の施設に比べると耐震化に「遅れ」が生じているのか.同調査からは「「予算の制約があるため」が最も多く,次に「教育施設の耐震化対策を優先しているため」となっている」*7との理由も提示.予算制約のなかでの耐震化はもちろん,改修,そして新築では,しんがりとなりやすい庁舎.今後の,耐震化対策の実施状況は,要経過観察.

*1:会計検査院HP(公表資料検査関係検査結果検査結果(平成25年分) 国会からの検査要請事項に関する報告(25年10月9日(2) ))「会計検査院法第30条の3の規定に基づく報告書「公共建築物における耐震化対策等に関する会計検査の結果について」」(会計検査院,平成25年10月)

*2:前掲注1・会計検査院会計検査院法第30条の3の規定に基づく報告書「公共建築物における耐震化対策等に関する会計検査の結果について」)88頁

*3:前掲注1・会計検査院会計検査院法第30条の3の規定に基づく報告書「公共建築物における耐震化対策等に関する会計検査の結果について」)94頁

*4:前掲注1・会計検査院会計検査院法第30条の3の規定に基づく報告書「公共建築物における耐震化対策等に関する会計検査の結果について」)96頁

*5:前掲注1・会計検査院会計検査院法第30条の3の規定に基づく報告書「公共建築物における耐震化対策等に関する会計検査の結果について」)133頁

*6:小島卓弥編著『公共施設が劇的に変わるファシリティマネジメント』(学庸書房,2012年)97頁

*7:前掲注1・会計検査院会計検査院法第30条の3の規定に基づく報告書「公共建築物における耐震化対策等に関する会計検査の結果について」)98頁