歴史都市・高岡市の特徴をアピールしようと、江戸時代末期に使われていた旧町名の復活について協議してきた「市住居表示整備審議会」(会長=蜂谷俊雄・金沢工業大教授)は「旧町名は歴史文化資産の一つで、後世に伝えていくことが重要だが、地域住民の合意が必要」との答申を高橋正樹市長に提出した。市は今後、地域住民の意向を確認する方針。
 旧町名復活の対象になっているのは、平米町▽坂下町▽袋町▽地子木町−−の4町。いずれも高岡開町の祖で加賀藩二代藩主の前田利長が築いた城下町を基に発展し、現在の中心市街地に位置している。町の形が、はし袋のように長いことから命名された袋町のように、それぞれの町に歴史と由来があるが、現在は簡素化のため他の町と統合して別の町名になるなどしている。このため、一部自治会や地元商工会が旧町名の復活を要望。市は有識者や市議、法務局幹部らで作る審議会を8月に設置し議論を続けてきた。
 答申では「旧町名は歴史都市認定を受けた高岡市にとって貴重な文化資産」と復活の意義に理解を示す一方、「住居表示の変更が住民に及ぼす影響も考え、住民の合意の基に行うことが必要」としている。
 市市民協働課も「手続きには地域の合意形成が必要だ」として、該当する地域の住民の意向を確認していく方針で、地域の側から復活への要望があれば境界の調査などを進めていく。同課によると、地域側から要望が出された場合、市議会での議決の他、法務局や郵便局などとの間での調整が必要となるため、旧町名の復活には早くても1年はかかるという。【大森治幸】

本記事では,高岡市における住居表示への旧町名復活に関する検討状況を紹介.
同市に設置された「住居表示整備審議会」*1が2013年10月15日付で市長に提出された「答申」*2の内容の詳細は次の通り.まず,「基本的な考え方」を4点に整理する.一つめは旧町名の意味を「無形の歴史文化資産の継承」にあるとする.これにより「旧町名は,まちの成り立ちや住民の生業など,歴史・文化を伝える重要な歴史文化資産のひとつ」であることを確認している.二つめは旧町名には「地縁社会の充実」の機能があるとする.つまり「旧町名は,住民が一つの共同体として認識しあうことができる原点」として「旧町名復活の活動を通」じて「地域コミュニティの結束が高ま」るとの考えが示されている.三つめは手続上の条件と整理が出来そうな「地域住民の合意」の考え方が示されている.つまり,「旧町名復活は本籍や住所の変更を伴い,生活に大きな影響を及ぼ」すため,「何より地域の皆さんの合意が大切」であるとする.四つめは,「住所のわかりやすさの確保」にあるとして,「現行の住居表示実施基準との整合性を図りながら,複雑に入り組んだ町の境界や飛び地が生じないよう」*3にすることも留意すべきであるとする.
このような基本的な考え方に基づき,住居表示による旧町名復活を行なう際の「運用基準」を3つ提示する.一つめは,「復活の対象となる旧町名」である.これは,「現在の市街地の原形である江戸時代末期の62町名のうち,現在も自治会など地域コミュニティとしての活動実体があるもの」と定義する.二つめは,上記の「住民合意のあり方」である.具体的には,「地域住民の理解が得られ,自治会の総会などの決議」があることで「住民合意が形成されたもの」とする.最後は「現行基準の特例的運用」を置き,「対象範囲は自治会などの地域コミュニティの範囲とし、おおむね5000平方メートルを超えるもの」*4と位置づける.このように江戸期以来の現在までの「従来の「まとまり」と現在の「まとまり」」*5の持続性に基づき,旧町名復活の手続を提案する.本記事によると同手続を経た後に「市議会での議決」「法務局や郵便局などとの間での調整」が必要とされる.実際の旧町名復活に至る過程は,要経過観察.

*1:高岡市HP(市政情報審議会・委員会)「高岡市住居表示整備審議会

*2:高岡市HP(市政情報審議会・委員会高岡市住居表示整備審議会)「住居表示による旧町名復活について 答申書」(高岡市住居表示整備審議会)

*3:前掲注2・高岡市(住居表示による旧町名復活について 答申書)3頁

*4:前掲注2・高岡市(住居表示による旧町名復活について 答申書)3頁

*5:飯島淳子「区画・区域・土地」『地方自治』No.791,2013年10月号,10頁

地方自治 2013年 10月号 [雑誌]

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