政府は18日の閣議で、政令市改革を柱とする地方自治法改正案を決定した。行政区を新たに設ける「総合区」に格上げできる制度を創設し、副市長らと同じ特別職の区長を置く。人口が多く面積も広い政令市で、住民の要望を反映した行政サービスを拡充する狙い。
 現在の区役所では、住民票発行などの窓口対応が主要業務となっているが、新設する総合区ではまちづくりや福祉などの業務を幅広く行えるようにする。政令市と道府県が同じ事業を進める二重行政を防ぐため、両者が話し合う「調整会議」の設置も義務付ける。また、人口要件30万人以上の中核市と20万人以上の特例市の両制度を統合。特例市を経過措置を設けた上で廃止し、中核市の人口要件を20万人以上に引き下げる。この他、自治体同士が事務を共同処理する際に役割分担を柔軟に取り決めることができる「連携協約」制度の創設も盛り込んだ。(2014/03/18-08:42)

本記事では,地方自治法改正案の閣議決定を紹介.2014年1月20日付の本備忘録でも記録した同法改正案.2013年6月18日付の本備忘録で記録した第30次地方制度調査会答申を踏まえての改正案.改正案は,総務省HPを参照*1
今回は,下名の個人的な関心からも「調整会議」を確認.調整会議は,同法案第252条の21の2から第252条の21の4で規定する.同法案第252条の21の2は,「指定都市及び包括都道府県の事務の処理」に関して「必要な協議を行うため」に「指定都市の市長」と同指定都市が位置する「包括都道府県の知事」(「包括都道府県」という概念なのですね.今後利用しよう)から構成される「指定都市都道府県調整会議」を規定(名称には「都」も含まれるのですね.一般制度ということですね).
また,指定都市都道府県調整会議では,同法案同条第3項に基づき,以下の者を「必要と認めるとき」は「構成員として加えることができる」とあり,政令指定都市と包括都道府県それぞれの長と他執行機関の委員長・委員,補助機関,議会議員,学識経験者(公益委員のような位置づけだろうか)から構成されることもある.

  • 指定都市の市長以外の指定都市の執行機関が当該執行機関の委員長,委員若しくは当該執行機関の事務を補助する職員又は当該執行機関の管理に属する機関の職員のうちから選任した者
  • 指定都市の市長がその補助機関である職員のうちから選任した者
  • 指定都市の議会が当該指定都市の議会の議員のうちから選挙により選出した者
  • 包括都道府県の知事以外の包括都道府県の執行機関が当該執行機関の委員長,委員若しくは当該執行機関の事務を補助する職員又は当該執行機関の管理に属する機関の職員のうちから選任した者
  • 包括都道府県の知事がその補助機関である職員のうちから選任した者
  • 包括都道府県の議会が当該包括都道府県の議会の議員のうちから選挙により選出した者
  • 学識経験を有する者

協議の開始は,同法案同条第5項に基づき,両長から「協議を行うことを求めることができる」とし,求めに対しては,同法案同条第6項により「当該求めに係る協議に応じなければならない」.そして,「協議を調えるため必要があると認めるとき」には,同法案第252条の21の3第1項により「総務大臣に対し,文書で,当該指定都市及び包括都道府県の事務の処理に関し当該協議を調えるため必要な勧告を行うことを求めることができ」る.ただし,まず勧告を求めるうえでは,「あらかじめ,当該指定都市又は包括都道府県の議会の議決を経なければならない」と同法案同条第2項で規定されている.また,各議会での議決とともに,それぞれの長は相手方の長に対しても「その旨をあらかじめ通知」することが同法案同条第3項で義務づけられている.
求めを受けた,総務大臣の手続は,次の通り.まず,求めの内容に関して「国の関係行政機関の長に通知」し「通知を受けた国の関係行政機関の長」は「総務大臣に対し,文書で,当該勧告の求めについて意見を申し出る」手順をとる.あわせて,同法案第252条の21の4に基づき非常勤職員となる「指定都市都道府県勧告調整委員」を3名任命し,委員それぞれが「意見を述べる」ことになる.
協議内容次第では,協議会の構成員のみのらず,政令指定都市及び包括都道府県の各執行機関内及び議会内,そして,勧告の求めに伴う「国の関係行政機関」と,関係者との「一人ずつ説得するのは極めて困難」*2な状況も想定されなくもない.協議内容及び勧告内容に至る「合意内容の集合」としての「ウィンセット」*3の形成過程は,同法案成立後に同協議会がされた場合に,当該実例を要観察.

*1:総務省HP(所管法令等国会提出法案)「地方自治法の一部を改正する法律案新旧対照表○ 地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)

*2:砂原庸介「なぜいま「民意」が問われるのか 橋下「大阪都構想」に立ちはだかる地方自治の壁」『中央公論』2014年4月号,74頁

*3:飯田敬輔『国際政治経済』(東京大学出版会,2007年)71頁

国際政治経済 (シリーズ国際関係論)

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