災害に備えて家庭の食料備蓄率100%を達成、父親の家事・育児時間を一日三時間に−。都が十二日発表した「長期ビジョン」中間報告は、暮らしや防災などに数値目標を明示したのが特徴だ。舛添要一知事は「夢物語ではなく、達成できる」と語るが、工程表の具体化はまだこれから。十二月にまとめる最終報告で、実現可能性をどう示せるかが焦点になる。(石川修巳)
◆暮らし
 多岐にわたる長期ビジョンで、舛添知事は「日々の生活に最も直結する福祉を重点にした」と説明。選挙公約に掲げた保育の待機児童について「二〇一七年度末までに解消」と明示し、利用希望者が増えている学童クラブの待機児童解消も盛り込んだ。二五年には都民の四人に一人が高齢者になるのに対応し、特別養護老人ホームの定員を一三年度末の四万一千人余から、二五年度末には一・五倍の六万人分確保を目指す。女性の就業促進とともに、就学前の子どものいる父親が家事・育児をする時間も増やす。一三年の一日七十七分に対し、二四年度には一日三時間にする目標を設定した。
◆防災
 自助、共助の防災力をはぐくむため、防災訓練に参加する都民を二四年度までに累計二千万人にする。都民がそれぞれ十年間に一・五回以上参加すれば達成できるという。日常の食料を多めに常備し、食べたら補充する「備蓄消費モデル」を推奨し、一三年の内閣府調査で47%だった家庭の食料備蓄率を六年後までに100%にする。行き場のない帰宅困難者に関しても一三年度末までに十四万人分の受け入れ先があるが、二〇年度までに九十二万人全員分を確保する。
◆五輪
 二〇年東京五輪パラリンピックに対応するため、空港や主要駅、街中で観光、道案内などをする「都市ボランティア」を二〇年までに一万人育成。外国人から要望の多い無料の無線通信Wi−Fiを都営地下鉄主要駅に完備するなど、五輪をてこに東京を訪れる外国人旅行者を二〇年に千五百万人、二四年に千八百万人にする。
    ◇
 都は長期ビジョンについて、都民から意見や要望を二十六日まで募集している。都の公式サイトで中間報告を閲覧できる。
◇「東京都長期ビジョン」数値目標の事例
 保育サービス利用児童数 27万5000人(2017年度末)
 14年4月は23万5000人。保育サービスを4万人分増やし、待機児童を解消
 25〜44歳女性の有業率 75%(2022年)
 12年は71%。女性の再就職や管理職登用の促進など、多様な働き方を支援
 父親の家事・育児1日3時間(2024年度)
 13年は1日77分。就学前の子どものいる父親の家事・育児を推進
 家庭・事業所の備蓄率 100%(2020年度)
 食料を多めに常備し、食べたら補充する備蓄モデルを推進。13年の家庭備蓄率47%(全国)
 「都市ボランティア」 1万人(2020年)
 空港や駅で五輪観客らを案内する人材を公募、育成。ほかに大会運営ボランティアも8万人育成外国人旅行者年間1800万人(2024年)
 東京ブランド発信、無料Wi−Fi提供などで13年の681万人から3倍増
 再生可能エネルギー利用 20%(検討中)
 都内電力使用量に占める割合は13年度末に6%。都内外で発電設備の導入拡大   (かっこ内は目標年次、都資料により作成)

本記事では,東京都における長期ビジョンの中間報告策定の取組を紹介.同中間報告の内容は,同都HPを参照*1
「おおむね10年間」の「2024年まで」を「計画期間」となる同ビジョンの構成は,次の通り.まずは「目指すべき将来像」を「『世界一の都市・東京』の実現」とおき,同「将来像の実現に向け」「2つの基本目標」として「史上最高のオリンピック・パラリンピックの実現」と「課題を解決し,将来にわたる東京の持続的発展の実現」*2を目指す.そして,「政策全体に共通する5つの視点」として,「経済の活性化と生活の質の向上」「ハードとソフトの融合」「官民の政策連携と規制緩和」「先端技術の積極的な活用「女性の活躍,高齢者の社会参加」として,「政策の方向性を示す8つの都市戦略」を,「成熟都市・東京の強みを生かした大会の成功」「高度に発達した利用者本位の都市インフラを備えた都市の実現」「日本人のこころと東京の魅力の発信」「安全・安心な都市の実現」「福祉先進都市の実現」「世界をリードするグローバル都市の実現」「豊かな環境や充実したインフラを次世代に引き継ぐ都市の実現」「多摩・島しょの振興」*3と置く.
同ビジョンのなかで個人的に関心があるのは,2014年7月14日付の本備忘録にて記録した,都庁舎内での保育所設置案.同ビジョンでは,上記の「都市戦略」のうち5つめとなる「福祉先進都市の実現」のなかに,「多様な保育サービスを拡充」し「2017 年度末までに待機児童を解消」を目指し,「都庁内に地域に開放した保育施設を設置」と記載.同施設は「2016 年度開設」*4が目標年次とされている.また,「一定規模以上の住宅開発における保育施設等の設置を促進するため」「都市開
発諸制度」の「見直しを実施」し「地域のニーズに応じて子育て支援施設の設置を誘導」*5するともある.「現在の延長線上にある将来」*6として,保育施設の設置の整備状況は,要観察.

*1:東京都HP(これまでの報道発表2014年9月)「「東京都長期ビジョン(仮称)」中間報告へのご意見を募集します

*2:前掲注1・東京都(「東京都長期ビジョン(仮称)」中間報告へのご意見を募集します)

*3:前掲注1・東京都(「東京都長期ビジョン(仮称)」中間報告へのご意見を募集します)

*4:東京都HP(各局のページ政策企画局「東京都長期ビジョン(仮称)」中間報告 へのご意見を募集します)「「東京都長期ビジョン(仮称)」中間報告」(平成26(2014)年9月)68頁

*5:前掲注3・東京都(「東京都長期ビジョン(仮称)」中間報告)69頁

*6:日埜直彦「計画よりシュミレーションに徹するべきではないですか?」『白熱講義 これからの日本に都市計画は必要ですか』(学芸出版社,2014年)215頁

白熱講義 これからの日本に都市計画は必要ですか

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