家の内外にごみをため込む「ごみ屋敷」をなくすため、世田谷区の保坂展人区長は8日の定例記者会見で、新たに定める「良好な生活環境の保全条例(仮称)」案を発表した。「行政代執行」によるごみの強制撤去を盛り込む条例が各地で制定される中、あえてこの条項を入れておらず、保坂区長は「居住者本人の納得を得ながら解決したい」と話している。
 防火や景観上の問題などから、足立区や大阪市京都市など各地の条例では、住民が勧告や命令に従わない場合などにごみの強制撤去を定めている。しかし、実際に撤去するにはどれがごみかを判断するなど手続き上のハードルが高い。また、撤去しても再びごみがたまり、信頼関係が損なわれただけに終わりかねないという。
 世田谷区は、ごみ屋敷の住民には「判断能力や生活意欲の低下などで、支援や措置が必要な方も多い」とし、強制的な撤去ではなく、医療や介護などの福祉支援を講じたうえで、「心身の状況を踏まえ、本人の理解を得ながら(ごみ屋敷状態の解消を)進める」とした。同様の規定は全国でも例がないという。
 区によると、同区内のごみ屋敷は52軒、うち7軒は敷地外にごみがあふれた状態という。区は「時間はかかっても居住者を排除せずに解決する制度にしたい」としている。条例案は来年2月区議会への提出を目指す。【大迫麻記子】

本記事では,世田谷区における,いわゆる「ごみ屋敷」への対策の方針を紹介.
同区では,2015年4月に「管理不全な状態にある建物等に関する対策及び条例制定に係る法的な検証及び検討を行うことを目的」*1に,「世田谷区における管理不全な状態にある建築物等の対策等に関する専門家会議」*2を設置.第1回では「管理不全な状態にある建物等の対策等に対する条例のあり方」*3,第2回では「管理不全な状態にある建物等に対する強制力のあり方」*4,第3回では「特定空家等の判断基準」「いわゆる「ごみ屋敷」の判断基準」*5と,各論点に対して議論が行われ,専門家の意見は「専門家会議での主な意見」*6として整理されている.
本記事では,「自治体はなかなか手を出しにくい」*7行政代執行に関しては,同条例案では「入れ」ず,「居住者本人の納得を得ながら解決」する方針の模様.同条例案に基づく方策案については,同条例案の公表後,要確認.

*1:世田谷区HP(くらしのガイド住まい・街づくり・交通住まい・建築・区施設整備空家等の対策に関すること「世田谷区における管理不全な状態にある建築物等の対策等に関する専門家会議」について)「「世田谷区における管理不全な状態にある建物等の対策等に関する専門家会議」設置要綱」(平成27年4月1日 27世環保第4号)

*2:世田谷区HP(くらしのガイド住まい・街づくり・交通住まい・建築・区施設整備空家等の対策に関すること)「「世田谷区における管理不全な状態にある建築物等の対策等に関する専門家会議」について

*3:世田谷区HP(くらしのガイド住まい・街づくり・交通住まい・建築・区施設整備空家等の対策に関すること「世田谷区における管理不全な状態にある建築物等の対策等に関する専門家会議」について)「第1回「世田谷区における管理不全な状態にある建物等の対策等に関する専門家会議(開催日時 平成27年4月22日(水曜日)

*4:世田谷区HP(くらしのガイド住まい・街づくり・交通住まい・建築・区施設整備空家等の対策に関すること「世田谷区における管理不全な状態にある建築物等の対策等に関する専門家会議」について)「第2回「世田谷区における管理不全な状態にある建物等の対策等に関する専門家会議(開催日時 平成27年5月25日(月曜日)

*5:世田谷区HP(くらしのガイド住まい・街づくり・交通住まい・建築・区施設整備空家等の対策に関すること「世田谷区における管理不全な状態にある建築物等の対策等に関する専門家会議」について)「第3回「世田谷区における管理不全な状態にある建物等の対策等に関する専門家会議(開催日時 平成27年6月23日(火曜日)

*6:世田谷区HP(くらしのガイド住まい・街づくり・交通住まい・建築・区施設整備空家等の対策に関すること「世田谷区における管理不全な状態にある建築物等の対策等に関する専門家会議」について)「専門家会議での主な意見

*7:吉田利宏, 塩浜克也『法実務からみた行政法 エッセイで解説する国法・自治体法』(日本評論社,2014年)111頁