知事の4選自粛を努力義務とする「多選自粛条例」について、埼玉県の上田清司知事は15日、12月県議会に廃止案を提出する方針を明らかにした。また、「清新な県政運営を確保する」との信念を成文化するため、同議会で自粛条例に代わる政治倫理に関する条例を提案する考えも示した。
 同日に最終日を迎えた9月県議会で、上田知事は自らの4選で事実上存在意義がなくなっている自粛条例の廃止案提出を見送った。上田知事は議会終了後、報道陣に対し「条例は自粛そのものが目的ではなく、(清新な政治を確保する)一つの手段だった。それを担保できる新たな枠組みを作りたい。そういう条例を出せば、自粛条例は(さらに)存在意義がなくなる」と述べ、12月県議会で新条例を制定したうえで、自粛条例の廃止案を提出したい考えを示した。
 多選自粛条例は上田知事が初当選した翌年の2004年、自らの提案で成立。第1条で「清新で活力ある県政の確保を目的とする」と掲げ、第2条に「3期を超えて在任しないよう努める」としていた。
 しかし、8月の知事選では上田知事が条例に反する形で立候補。県民に謝罪したうえで、「選挙で(4選立候補に対する県民の意見を)直接問う」としていた。4選後は「条例があること自体に意味がなくなった」と改廃を示唆。しかし、県議会最大会派の自民党が否決の姿勢を示し、9月県議会での廃止案提出は白紙に戻された。【鈴木梢】

本記事では,埼玉県における「埼玉県知事の在任期間に関する条例」の廃止の方針を紹介.
「連続して三期」*1と在任期間の努力規定を置く同条例.2015年8月12日付の本備忘録にて記録したように,同年8月10日の知事選挙により同職に連続して四期在職されたことに伴い,同条例存続の検討を「議会の皆さん達と相談」のうえで開始.2015年9月17日に開催された定例記者会見では,「9月定例会付議予定議案」を会見後,記者から「改廃なりを,提出する予定」を尋ねられた際,同職からは「まだ,全部確認したところではないのですが,いろいろな意見がございますので,自分なりに交通整理をしてみたいと思っています.時間を無理に区切って,いつまでに云々ということではなくて,いいアイディアをきちっと押さえてみたい」*2と述べられている.本記事では,9月定例会には「廃止案提出を見送」り,「12月県議会で新条例を制定したうえで,自粛条例の廃止案を提出したい」との方針が示された模様.
同条例の廃止により,住民が「選挙によって」「執政の責任を問い,辞めさせることができる」ことが,「民主主義体制の重要な要素」*3である通り,条例により任期を事前に規定せず,法定任期内での「実際の動きを見て」*4,同職への「同一の者」が「在任する」の可否を有権者が判断することになる.「新条例」の内容は,公表後,要確認.

*1:埼玉県HP(埼玉県法規集)「埼玉県知事の在任期間に関する条例」(平成十六年八月三日,条例第五十二号)

*2:埼玉県HP(県政情報・統計広報知事の部屋定例記者会見平成27年)「知事記者会見テキスト版 平成27年9月17日

*3:砂原庸介・稗田健志・多湖淳『政治学の第一歩』(有斐閣,2015年)98頁

政治学の第一歩 (有斐閣ストゥディア)

政治学の第一歩 (有斐閣ストゥディア)

*4:山下祐介・金井利之『地方創生の正体』(筑摩書房,2015年)237頁

地方創生の正体: なぜ地域政策は失敗するのか (ちくま新書)

地方創生の正体: なぜ地域政策は失敗するのか (ちくま新書)